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「俺は君が好きだ。君が欲しい」


「俺は真剣に、君と結婚したいと思っているんだ」


「君と、デートがしたい」


セシリアは、思考が停止する。突然屋敷を訪ねて来たヴァルタルから、愛の告白とも取れる言葉を告げられた。余りの事態に、もしかして私、起きたまま寝てる⁉︎と訳の分からない事を考え始める。それだけ信じられない。


「セシリア」


「は、はい!」


彼に呼ばれただけで過剰に反応して、思わず立ち上がってしまった。ヴァルタルは目を丸くしている。恥ずかし過ぎる……絶対に変な女だと思われたに違いない。


「やはり俺なんかとデートなど、嫌だよね。すまない、忘れていいから」


「え、あの……」


普段の毅然とした彼とは思えないくらい、弱々しく項垂れている。


「嫌では、ないです」


嘘ではない。あんな事があったが、本来ならばセシリアにとって彼は高嶺の花で、こうして話す事もましてやデートに誘って貰えるなど夢の様な話だ。


「本当に?無理してるんじゃない?」


不安気にセシリアの事を窺いながら、訊ねるヴァルタルに、何故か「可愛い」と思ってしまった。男性に可愛いなどと失礼よね、と慌てて頭の中で訂正する。ただ、こんな美青年からこんな風に言われたら、誰だってときめいてしまうと思う。ズルい……。


「いえ、ただ私などにヴァルタル様のお相手が務まるかは分かりませんが……それでも、宜しければ」


まだ頭が混乱する中、セシリアはヴァルタルとデートの約束をした。


その夜、セシリアは彼が手土産で持って来てくれた、花を眺めていた。赤い薔薇が一輪花瓶に入れられ、窓辺に飾ってある。ルーカスと婚約していた時も花は何度となく貰った。彼は少し見栄っ張りの様な所があったので、花束は何時も手に抱えきれないくらい大きく、派手なリボンが掛けられていた。なので、何だか凄く新鮮に感じる。それに、嬉しくて仕方がないのは何故だろう……。









◆◆◆



「どうしたらいいんだ」


セシリアとデートの約束を取り付ける事が出来た。ヴァルタルは嬉々としながら帰路についたが、屋敷に戻りふと思った。


デートとは、何をしたらいいんだ?


実はヴァルタルは女性から非常に人気があるが、これまでデートをした経験が無かった。ロルフから借りている本を開いてみるが、流石にデートの仕方までは書いていない。


このままでは、また失態をして彼女から嫌われて、いや幻滅されて、いや見限られてしまう……。仕方がない、またロルフに頼るしかないか……。





「デートの仕方って……君、幾つなの?」


翌日、稽古の合間にロルフにそれとなく聞いてみると、彼に心底呆れた顔をされた。


「あんなに御令嬢達からモテモテな癖に、もしかして本当に一回もデートした事ないの?」


「……」


「え、ちょっと待って。君、まさか……彼女が初めてだったとか言わないよね⁉︎」


「俺はずっと彼女に片想いをしていたんだ。当然だろう」


「いや、それは必ずしもイコールじゃないだろう⁉︎」


「……誘われる事はあるが、やはりそういう気分になれなくて断っている」


社交の場に出る様になってから、女性側から幾度なく夜の誘いを受ける事がある。男として断るのは矜持に関わるし、女性側にも恥をかかせる事になってしまうとは分かっていたが、どうしても好きでもない女性とそういう事をしたいと思えず、断り続けていたのでセシリアと床を共にするまでヴァルタルは経験がなかった。


「確かに君からそういう話を聞いた事はないけど、流石に言わないだけで、それなりの経験はあるものだと思っていたよ。僕も余りその手の話は好き好んで話さないし……でも、まさかね」


呆れるを通り越して、哀れむ様な視線を向けてくるロルフに、ヴァルタルは顔を顰めた。


「もういい、後は自分でどうにかする!」


「あ、ヴァルタル!ごめんって、悪かったよ。ただ思っていたよりも、君が純粋だった事に驚いてしまってね」


恋愛に関してはロルフに教えを乞う立場だが、彼の態度に腹が立ちヴァルタルは背を向けた。するとロルフは苦笑しながらも謝罪をしてくる。


「どうせ莫迦にしているのだろう」


「してないよ、ちょっと面白いとは思ったけど」


こっちは必死なのに、それを愉しんでいるとは……ヴァルタルはロルフを睨み付けた。


「嘘嘘、冗談だよ」


「全く笑えないな」


「そう怒らないでよ。デート、成功させたいんだろう?」


「……」


背に腹は代えられない……ヴァルタルは大人しく彼の言葉に耳を傾けた。







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