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ロルフから衝撃的な事を言われたヴァルタルは、かなり落ち込んだ。あの酒宴の次の日、ロルフの屋敷に招かれ行くと、彼の部屋に入った瞬間本を投げ付けられた。咄嗟の事で手を滑らせるが、何とか受け止めた。  


『それでも読んで、勉強したら?』


言葉の意味が分からず眉根を寄せながらも、本の表紙を確認する。


『女性を、悦ばせる為には……?』


喜ばせるの意味が違うだろうと思ったが、背に腹は代えられないので、取り敢えず借りて読む事にした。それから数日後、ヴァルタルはアンブロワーズ家の屋敷を訪れていた。正直、あの本は余り参考にはならなかったが、ロルフから直接説教もされ、今の状況は良くないのだと理解し危機感を覚え、反省した。

本来ならばいきなり会いに行くのではなく、手紙を出し約束を取り付けるのが普通だが、悠長な事はしていられない。何しろあの夜から既に半月近く経つ。きっと彼女はヴァルタルに呆れ、幻滅しているに違いない。今は一刻も早く彼女に会って弁明しなくてはならない。


ヴァルタルがアンブロワーズ家の屋敷に到着し名乗ると、意外にも使用人がすんなり中へと通してくれた。もしかしたら大事な娘に手を出した男など門前払いされるかも知れないと考えていたので、拍子抜けだ。


「ヴァルタル、様?」


ロビーで待つ様に言われてから待つ事数分。セシリアが現れた。これまで社交場での確りと正装をした彼女しか見た事はなかったが、現れたセシリアは部屋着用の簡素なドレスを着ていた。思わず目が釘付けになる。


これは……可愛い過ぎる……。


少し戸惑った様子で首を傾げ、自分の名を呼ぶ彼女に更に喉を鳴らす。未だに信じられない。半月前、この彼女と自分は一夜を共にした……と、今はそんな場合ではない。


「セシリア、君に話があって来たんだ」


「……はい」


「ただ場所を移したい」


以前までの自分なら場所など何処だろうと構わないと思っただろう。だが、あの本には何事も雰囲気が大事とあった。それに……ヴァルタルはセシリアの後ろに視線を向けた。邪魔者が二人立っている。確か一人はセシリアの弟のハンス・アンブロワーズだ。その隣は、見た事がある気もするが、思い出せない。だがその男は先程からこちらを睨み付けてきていた。彼が誰かは知らないが、ヴァルタルには分かる。彼もまた自分と同類なのだと。


「分かりました。では、ヴァルタル様此方へどうぞ」


彼女が先導して歩き出し、それについて行くが数本歩いた所で振り返り邪魔者達に釘を刺す。


「申し訳ないけど、君達はついて来ないで貰えるかな」


「どうしてですか?大切な姉に何かされたら心配なので見張らせて貰うに決まってます」


「酔って手込めにした男と二人きりなんかにさせられないだろうが」


弟の方はまだ話が通じる気もするが、もう一人の口の悪い男は随分と喧嘩腰だ。余程彼女をヴァルタルに取られたくない思いが透けて見える。


「弟君は兎も角、部外者の君は口を挟まないで貰いたい。それに弟君も、彼女はもう立派なレディだよ。過保護過ぎるのもどうかと思うよ。それとも、君が姉離れ出来てないのかな」


その瞬間、ハンスは顔を真っ赤にしながら凄い形相でヴァルタルを見てくる。どうやら図星の様だ。もう一人はまだ何か吼えているが無視して踵を返し、不安そうにこちらを見ている彼女の元へと向かった。そして余程恥ずかしかったのか、邪魔者達はそれ以上ついて来なかった。






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