オチ
あ、これはどうもグラーノさん。こんな安い酒場へどうも。
おめでとうございます。何とか無事にお嬢様を奪還できましたね。え、お見舞いですか?
これはこれは。幹部のグラーノさんから頂けるとは。ありがとうございます。
飲んでいいのか?ですか。まあ派手に血はでていますが大きな怪我じゃないんですよ。割とすぐ血が止まりますしね。
ああ、そうです。“殴られ屋”エキーノ。昔やってましたよ。慣れてるんで。
オルゾさんが些細な事でキレて俺を殴ったのにみんなひいていた。ですか。
うーん……実はわざとキレさせたんですよね。秘密にしてもらえますか?
えーっとですね。オルゾさんの怒りはあれです。お笑いでよくある、大きな風船をパスするゲームみたいな怒り方なんです。
大きな怒りでも許容量なら冷静なんですけど、いっぱいの時にちょっとでも不快なことあるとブチキレるんですよね。
え、既に怒っていたのかって?そりゃあそうですよ。首領に秘密で行動するのは、そもそも忠誠誓ってるオルゾさんには不快ですし。申し訳ないんですがグラーノさんの部下の方々がぞろぞろと正面から事務所に来たのもそうですよね。
それにそもそもオルゾさん首領のお嬢様のこと嫌いですし。いやホント秘密ですよ?
え、何でってそりゃあお嬢様美人ですけど我儘じゃないですか。
あ、そうです。多分みなさんがオルゾさんとお嬢様くっつけようとしてたのも嫌いな理由ですよね。
何でしたっけ、そうそう、会議の時に誰かが紅茶淹れてくれたんですけど、ぬるかったんみたいなんですよ。
あれでもうキレる寸前で。
いえ、オルゾさん紅茶拘りますからねー。
で、ほら合同作戦だったじゃないですか。普段なら自分に怒りの鉾先向かないよう立ち回りますが、グラーノさんの部下殴らせるわけにはいきませんし。
それに作戦中にキレさせるわけにはもっといきませんし、最悪は助け出したお嬢様にキレますからね。
ええ、そりゃあお嬢様ぶん殴らせる訳にはいかんですよね。だからまあ、わざとオルゾさんの嫌いなピスタチオ味のマカロン出したんです。俺を殴らせるためにね。
いや、オルゾさん。殴ってる途中でもう冷静になってますよ。だから言うほど危険ではないんです。
詫びですか?俺にはいらないですよ。オルゾさん、俺がわざとやったのも気づいてますから。いつも後でなんか奢ってくれますし。
だから詫びならオルゾさんの方に。キレたのちょっとへこんでると思いますんでね。