オマケ:ガールズトーク
凄くどうでもいい情報ですが、オルゾの時計のブランドは決めておらず仮置きだったので、今日決めて変更しておきました。
話の筋はいっさい変わっていません。
「……だからあのアキッレーオってのありえないのよ!」
「へー、そうだったんだー」
ソファーに向かい合って話しているのは首領の娘のマーレとオルゾの妻であるステラマリナである。
やってきたマーレがオルゾにアキッレーオの不満をぶちまけている間に、たまたま事務所に顔を出したステラマリナがでくわしたのだ。
そして今はまったく同じ内容をステラマリナにぶちまけている。
アキッレーオが如何に彼氏としてあり得ないかという話であるが、オルゾに言わせれば、そんなことは最初に気付けという話である。
ちなみに今日はマーレの護衛のカラマーロは撒かれなかったらしい。エキーノの隣で肩身が狭そうに突っ立っている。
「最初のデートでは羽振りが良かったのよ。がっつくような姿勢も見せないし……」
「大人の余裕ってやつよね」
「そう、それが今日はハンバーガーでランチよ!」
「マジウケる」
こちらに戻ってきたアキッレーオがまだ仕事をしていないのは、裏社会に情報網を有するオルゾなら当然分かっている。
オルゾの事務所にやってきた日に20000ユーロの札束を3本ほど投げ渡したが、1本はすぐにあの馬鹿でかい縫いぐるみとやらに化けているはずなので残り2本、普通なら数年は生活できる額だが、あればあるだけ使うのが兄である。そろそろなくなっている頃であろう。
「オルゾはどう思う?」
琥珀と榛色の瞳がオルゾの方を向いた。
オルゾはPCの画面から目を離し、そちらを睨む。
「俺がどう思うかって? ガールズトークなら俺の事務所じゃなくてどっかスタバでも行ってやってくれってだけだ」
「あの、オルゾさん、ここにいてくれた方が安全なのでどうか……」
カラマーロは申し訳なさそうにそう言う。オルゾは舌打ちを一つ返した。
「えっと……」
彼が不安そうにしているとステラマリナから声が掛かる。
「大丈夫よ、今の舌打ちは不快だが仕方ねえからいても良いの意味だから」
まあその通りだ。ボスの娘を人の出入りの多いスタバなんぞに長居させる訳にはいかないってのは分かっている。ただ目の前で喋られているとうるせえだけだ。
オルゾは仕事に戻った。
「……マーレ、あなたオルゾのこと好きだったんでしょ」
しばらく仕事に集中していれば、話が意味不明な方向に向かっていた。
「誰がこんなやつ!」
「あなたさ、旦那様が最も愛しているのが自分じゃないって分かっていて結婚できた?」
「はあ? 私と結婚して私が一番じゃないなんてありえないじゃない! アンタそれが分かっていてオルゾと結婚したっていうの?」
「旦那様は、初夜の時にお前を愛していないと言っていたもの」
「……ねえ、ひょっとして愛されてないの?」
「愛されてない訳ではないわ。ねえ、オルゾ?」
再び琥珀と榛色の瞳がオルゾの方を向く。
「…………まあな」
あまりにも視線がうるさくてそう答えた。
「ね」
「うーん」
「でもね、私はオルゾの一番にはなれないの」
「何よそれ!」
「わたしは分かっていてオルゾと結婚したわ」
「あなたがオルゾの一番ではないの?」
「あたりまえじゃない」
「じゃあ誰が一番だってのよ!」
「決まってるじゃない。あなたのパパよ」
「……私の……パパ?」
「組の男ってそういうものよ。オルゾを跪かさせることができるのはあなたのパパだけで私じゃないの」
「そうなのね……」
「でもいつかオルゾを私の腹の上で泣かせて見せるわ!」
ほんとどっか別の場所でやってくれねえかとオルゾは思ったが、これを外で言われてももっと困ると思い直す。
ただ、深い溜め息をついた。




