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死の檻  作者: コト
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死の檻5

今の時代、携帯電話がある。

携帯電話で人との繋がりを確認出来ると言う者もいるかもしれないが、私はそうではない。


携帯電話は、成る程、調べ物ができるだけ時間潰しには良いだろう。動画を見て、音を聞けば、寂しさを紛らわせる事はできる。

しかし、人の温もりは与えてくれない。


私が真に望んでいる事は、人との繋がりではなく、側にいてくれる人の温もりなのだ。

心配の声は慰めにはなるが、心の死を、恐怖を、癒してはくれなかった。


ただ背中を撫でてくれる人、手ではなく、背中を。

自分ではない、他人の体温が欲しいのだ。


何故、背中なのか分からないが、私は背中を抱きしめて欲しいと願った。

もしかしたら、足や手でも良かったのかもしれないが、その時、私に触れてくれる人はいなかった。


毎日、携帯に連絡がきても、人の温もりは届けてくれなかった。

孤独じゃない、と分かっていても、心が亡くなっていくのだ。


それに、私は友達とまめに連絡を取る方ではないので、あまり連絡も貰えない。

こんな時ばかりは、思うのだ。多くの友達がいた方がいいと。


実際は、身体が言う事をきかず、あまり人付き合いにさける体力がない。

それでも、思った。


自分本意だが、孤独で死ぬのは嫌だ。

死の檻の中でも、周りに他人ではなく、知った人に見送られたい。

身体に触れてくれる誰かに。


ただ、実際には死ぬ間際に連絡がいくのは家族で、知人の何人が、連絡を貰って直ぐに駆けつけてくれるのだろう?


物理的な距離もある。皆、仕事もある。

やはり、考える。家族が欲しい。家族が恋しい。

でも、私の家族は高齢の父と母。弟もいるが、健康だ。私のように死に怯えることも、死を側に感じることもない。分かってはもらえないだろう。


今を輝いて生きている者にとって、立ち止まらされ、死を意識させられた者の恐怖と孤独、不安など。孤独だから寂しいのだ。一人で戦わねばならないが、私はそれほど強くないのだ。


携帯の中にも死に挑んでいる者の声はある。

でも、その者達にはパートナーがいた。幼い子供がいる者もいた。

死ねない理由、だから、挑んだ。


私にはない。でも、死を受け入れられない。

死の檻の中で、死が溢れ、呼んでいる。語っている。私の最後を。


多くの管に繋がれ、長い時間、呻き声をあげ、心の死に気づいてもらえず、優しい使命を持った天使の白い他人に生かされるのだ。


携帯電話はただの冷たい機械で、人を呼んではくれなかった。

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