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死の檻  作者: コト
4/11

死の檻4

日が傾く。空が青から黒へ変わる。

寝る時間だ。


人によっては安らぎの時なのだろう。

私には眠りが訪れない。でも、誰の目も気にせず、泣く事のできる時間だ。


ベッドをどれだけ涙で濡らそうと、吸収してくれる。週に一回は新しいシーツに交換してくれるので、多少濡れても気にしなくて良い。


こうなる前は寝る事が好きだった筈だ。寝つきも悪くなく、むしろ寝起きが悪い程だった。


ただ、眠れない事を意識させられる。変わり映えのない天井を見つめ、時間が過ぎるのを待つ。

日が登っている時とたいして変わらない。暗いだけだ。


周囲から寝息やイビキが聞こえる。イビキは嫌いじゃない。父も良くイビキをかくからだ。少し安心する。誰かが生きてる音だ。


でも、規則的に聞こえる電子音は嫌いだ。生を刻んでいる訳じゃない。これは死の秒読みだ。

此処ではこの音が時々、聞こえる。


私の心が死を意識させられる原因は分かっている。周囲が死に溢れているからだ。

死が迫っている者は、多くの管を身に纏い、身動きも出来ず、呻き声をあげている。

こんな最後は地獄だ!


だから、私は死を受け入れられない。呻いて、苦しんで、寂しさの中で一人戦う。それが死にいくという事なら、私は此処では死にたくない。


明るい顔で介助してくれる者はいるが、それは死を遠ざける手助けはしても、寂しさを埋めてはくれない。身体は治っても、心の悲鳴を聞いてくれない。


仕方ない。人手が足りないのだ。他人は人の心まで触れることは容易ではない。

私も臆病なので、触れられる事に怯えている。でも、助けて欲しいのだ。背中を撫でて欲しいのだ。


死の直前なら言えるだろう。でも、死に向かっている今はまだ。孤独に悲鳴を飲み込むしかない。


願っている。死ぬ時は家族に見守られたいと。間に合ってくれと。

死ぬ方も願うのだ。家族の側で、と。

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