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死の檻  作者: コト
3/11

死の檻3

食事がきた。

生きたいと思う心はある。食欲はない。


ベッドから起き上がれない。

体調が悪いわけではない・・はずだ。


何もしていなくても、お腹は減るらしい。実際には空腹など感じていないが、生きるためにはエネルギーが必要だ。食べなければ。これは義務で命令だ。


よく小説などで、精神を病んだ者は味がしないと言うが、私にそれは当て嵌まらないらしい。


味はする。ただ、噛み込めない。

恐ろしく体力を消耗する。食べるという行為に!


休まなければ。でも、1/3も食べていない。1時間以上、かけていると言うのに。

何か食べたい物はないか?考えてみた。何も浮かばない。

好きな物があった筈なのに。何故だろう。


あぁ、また体重が減っている。


心だけじゃない、身体も死にかけている。

怖い。私はまだ、死を受け入れられない。


抗いたいのに、希望がない。

食べるだけで疲れるのだ。エネルギーが足りないのだ。

心も身体も!生きるためには、何もかもが不足している。


何より愛情に飢えていた。大丈夫の一言が欲しい。信頼できる人から。嘘でもいい。私の身体だ。死にかけている事は分かる。

でも、心まで亡くしたまま、死にたくない。


「お母さん!そばにいて。」心からの叫びだった。

でも、此処に母はいない。会えない。


死の檻から出られれば会う事はできるが、それでも、母に今は会えない。


こんな状態では負担になる事を知っている。

私は泣いている。置物のように放置されても構わないが、きっと母は心を痛める。泣き続ける子供を放っておかない人なのだ。

父もそうだ。


そして私は負担になると知っていて、我が儘を言えるほど子供ではなかった。

臆病な私だが、家族の愛だけは常に感じていた。

我が儘を唯一、許してくれたのだ。


だからこそ、思った。「1人で死にたくない」 家族の側で。死ぬ時は手を握って欲しいのだ。


でも、死の檻の中に家族はいない。

皆、他人なのだ。

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