死の檻3
食事がきた。
生きたいと思う心はある。食欲はない。
ベッドから起き上がれない。
体調が悪いわけではない・・はずだ。
何もしていなくても、お腹は減るらしい。実際には空腹など感じていないが、生きるためにはエネルギーが必要だ。食べなければ。これは義務で命令だ。
よく小説などで、精神を病んだ者は味がしないと言うが、私にそれは当て嵌まらないらしい。
味はする。ただ、噛み込めない。
恐ろしく体力を消耗する。食べるという行為に!
休まなければ。でも、1/3も食べていない。1時間以上、かけていると言うのに。
何か食べたい物はないか?考えてみた。何も浮かばない。
好きな物があった筈なのに。何故だろう。
あぁ、また体重が減っている。
心だけじゃない、身体も死にかけている。
怖い。私はまだ、死を受け入れられない。
抗いたいのに、希望がない。
食べるだけで疲れるのだ。エネルギーが足りないのだ。
心も身体も!生きるためには、何もかもが不足している。
何より愛情に飢えていた。大丈夫の一言が欲しい。信頼できる人から。嘘でもいい。私の身体だ。死にかけている事は分かる。
でも、心まで亡くしたまま、死にたくない。
「お母さん!そばにいて。」心からの叫びだった。
でも、此処に母はいない。会えない。
死の檻から出られれば会う事はできるが、それでも、母に今は会えない。
こんな状態では負担になる事を知っている。
私は泣いている。置物のように放置されても構わないが、きっと母は心を痛める。泣き続ける子供を放っておかない人なのだ。
父もそうだ。
そして私は負担になると知っていて、我が儘を言えるほど子供ではなかった。
臆病な私だが、家族の愛だけは常に感じていた。
我が儘を唯一、許してくれたのだ。
だからこそ、思った。「1人で死にたくない」 家族の側で。死ぬ時は手を握って欲しいのだ。
でも、死の檻の中に家族はいない。
皆、他人なのだ。