表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死の檻  作者: コト
1/11

死の檻1

ただ怖かった。

少しづつ、私が私で無くなっていく。いや、心が亡くなっていく。

何がおこっているのか、全く分からない。

でも、一つだけ。<死にたくない> そう、思った。


だけど、このままじゃ、生きていけない。身体も普段通りじゃない。心も死にかけている。

どうしよう・・・。焦った。焦っている。でも、ここから動けない。やっぱり同じ事を考える。どうしよう。


こんな経験は初めてで、解決策が浮かばない。

ネットに助けを求めてみるか?今時の考えだが、悪化する可能性もある。多くの情報は混乱をまねく。特に今の状態で、私は正確に判断できないと思う。

でも、このままではいけない。

仕方なく、携帯を見る。


鬱、統合失調症、脅迫性不安症、自律神経失調症・・・。多くの精神疾患があるが、あまり今の自分の状況に当てはまらない。

それもそうだ。人はそれぞれ違う。心の在り方が。

似たような症状から解決策を模索するしかない。

片っ端から調べ始めた。



どうやら、生きたいと思っているなら、身体の方が心よりは健全らしい。

とにかく動いてみよう。身体と心、両方疲れてバランスが取れれば、落ち着くようだ。


動き始めて少し、身体が痛い。体力は確実に落ちている。

気にせず動いた。心の死を感じないために。


成る程、動いてる間は、心は死を意識してない。

涙は止まらないが、少しはマシなようだ。


人の居ない場所は此処にはない。あまり人前では泣きたくないが、赤く腫れた目と鼻を啜る音で、分かってしまうだろうか?


いや、ここでは泣いている人など珍しくないだろう。

それに、ここに居るのは・・・。 今は考えるのは止めよう。心にブレーキがかかった。

動いたことで、少し考える力が戻ってきたのか?

分からないが、<死にたくない> は心からの声らしい。


身体の痛みを無視して、その日は動いた。涙は止まらない。心が悲鳴をあげる度に動いた。



次の日に変化は訪れた。身体からの悲鳴。血が出た。

今日は動けない。あぁ、でも・・。

また、心の死を感じる。


身体も心も死に向かっているのか?

それでも、死を迎え入れる準備はできない。

何故だろう?何が私を<死にたくない> と思わせる?

私の心は死を感じている。なのに・・・。


やりたい事を探してみる。きっと心残りがあるのだろう。それが<死にたくない> 叫びだ!


纏まらない考え。<死にたくない> と叫ぶほど、私にやりたい事が見つからない。

困った。いや、違う!


「1人で死にたくない」のだ。

誤解がないように記すが、誰かを巻き込んで死にたい訳じゃない。

此処では、人の死は軽い。私の為に涙し、手を握ってくれる人は1人も居ないのだ。

私が<死にたくない> のは、この死の檻の中でだ!


あぁ、どうしよう。

分かってしまった。


これは絶望だ。心は今も確実に亡くなっている。

私はここから出られない。


違う。仮に私が強い意志を持っていれば、脱走もできるだろう。

小説のヒーローならそうだ。ヒロインなら助けてくれる誰かが現れるだろう。

でも、残念ながら、私はそこら辺にいる、その他大勢なのだ。

ヒーローの近くにも居られなければ、ヒロインの友達にもなれない。

遠くから危険を回避してきた、その他大勢。


仮に悪を働く事に躊躇いがない場合はどうだろう?

それも無理そうだ。


私は臆病な自分を知っている。他人の目が気になるのだ。他人の目は心の鏡と言うが、私は迷惑だと分かっていて、他人に迷惑をかけられない。


これまでトラブルを避けて生きてきた。

この生き方を変えるチャンスだとしても、私はそれを選べない。

臆病で、どこまでも他人の目が気になる。

生き辛い。


結論は変わらない。

私はここから出られない。


ここで、心の死を感じているしかないのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ