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荼毘の秘法

作者: なと 瀬川なつこ

詩、ですね。

荼毘の秘法。懐かしくも、古めかしい、古い言葉の数々…

懐古の昔へ、日本の昔の懐かしさを思い出して下さい。

夢のまにまに、宿場町の秋。荒野の風が、懐かしい匂いを運んでくる。記憶と、追憶。懐かしの水面。そこはかとなく、亡くなった人の面影を思い出す。まどろみの淵に、あなたのことを思い出しました。西日誘う夕陽のなか笑っている横顔。街道沿いは記憶の淵から、古びて寂れた想い出を思い出させてくれます。


夕陽の街道沿い。西日指す宿場町。毬がどこからか転がってきます。夕べの思い出。人の生き死に。深く、深く、想いでの淵に彷徨う夕べ。宵。秋祭りのあとの、小さな小銭の落とし物。なにもかもが、懐かしく、涙。かそけき風が吹いてきて、記憶は青く染まる。サイダーの空き瓶、枯れた向日葵。夏の落とし物。


閻魔が嗤う、街道沿いの片隅。もうすぐ、冬が来ますね。雪が降りますね。それでも、私は夏を忘れません。秋祭りを忘れません。街道沿いの化け物が、古い事ばかり考えてると、鬼が嗤うぞ、と驚かしてきます。黒虫、赤虫。小鬼が顰めき声でマントラを唱えています。そこは秘密の街角。黒電話が鳴って、故郷へ、旅に出よと命令してきます。やがて反魂香で蘇ったあめふらしに魂を喰われることでしょう。


亡くなった人の呼び声。山は人を喰らう。もうすぐ雪深い冬。旅に出よう。どこか遠いところへ。別の街へ。黒電話がジリリリと鳴って、反魂香がくゆりと揺らいでいる。旅の雲水が、りんりんと鈴を鳴らしながら、鎮魂の唄を謡っている。南無妙法蓮華経。遠い夏へ。魂は、いつまでも、夏を彷徨う。冬の凩に吹かれようとも。


小さな閻魔が、宿場町の襖の裏で、ひそかに笑っている。賽の目は、凶を指している。明日は、仏滅だ。友引、先負、仏滅。不吉なときが、幸運なときなんです。時計の針が逆さに廻り始める。泡世の不思議な世界では、闇が舞ってめでたきことが起こる。不吉は幸福。聖と邪が逆に作用する。村の外れの橋の上で、鈴が、また鳴って、鬼の世界へと迷い込む日なのだ。


荼毘に伏す人の懐に六文銭。三途の河原で、奪衣婆に渡すのです。なぜ、死んだのですか、あなた。お線香の香り、まどろみ香、ぬくもり香。鬼に食われる前に、次の亭主を探すのです。ええ、そんなのは無理。この世は、巡り巡っている。貴方の業もえにしも次の生に持っていきましょう。再び、あなたに巡り合うために。


秘法、というか、散文、というか。

宗教を作る人はこんな呪文みたいな言葉を考えるかもしれない。

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