case.3 残忍な事件2
今後は午後六時過ぎを目処に投稿していきます。
「お昼のニュースの時間です。昨日未明、千葉県〇〇市の河川から一人の成人男性のものと見られる人体部位が多数発見されました。千葉県警は殺人事件の可能性もあるとして捜査を続けているとのことです」
私たちが大学の食堂で昼食を食べながらテレビを見ているとそんなニュースが流れてきた。この手の事件は食事中に限らず気分の良いものじゃない。同席している二人の友人を見ると、イオリが露骨に眉をひそめて言った。
「こういうのってバラバラ事件って言うやつでしょ? 教授が昔はそういう残酷な事件は殆ど無かったって言ってたよ」
そういえばそんなこともあったなと思う。尤も、あの教授は何かと昔を思い返して賛美する傾向があるので余り話しを間に受けたりはしないが……。
「昔よりもモラルが低下しているのかもね。犯人も相当怨みがあったのかしら」
そう言って二人で会話をしていると、先程からジッとテレビを見ていたトモコが首を傾げながら呟いた。
「……この事件、昔と似てる」
「「えっ?」」
「昔ウチの近くの学校で起きた事件なんだけどね。四人が襲われてその内一人が亡くなって。有ろう事か、遺体を切断して首を学校の正門に置いたんだ。しかも犯人は十五歳の少年だったの」
「「ーーーーッ!?」」
私たち二人は声も出せなかった。余りにも凄惨で、その地獄と隣合わせの場所に居たというトモコの感情が欠落した話し方に圧倒されて……。
「動機は何だったと思う? 怨恨? 衝動? 違う。犯行は計画的だった。その子はね、ただ趣味で、そうするのが堪らなく快感だったの」
「「…………」」
沈黙が私たちのテーブルを支配していた。全員が口を閉ざしたまま微動だにしない。まるでそうしなければ、この世界が壊れてしまうかのように……。
『違う。恐らくだが、今回の事件に関しては全く似てないと思うぞ』
「「「ーーーー!?」」」
私とイオリは一斉に振り返って突然沈黙を破った彼を見る。トモコもゆっくりと顔を向けた。
「お、おう。どうした三人揃ってそんな時化た顔して」
コーヒーを飲んでいる彼は珍しく動揺していた。この際ずっと盗み聞きされてた事はどうでも良い。さっさとこの重苦しい空気から逃れられるなら何でもいい。そう思って私は口を開いた。
「全く違うってどういうこと?」
「ああ、そりゃ死体損壊をして移動させたことは同じだけど、それは表面しか見てないってことだ」
「裏があるってこと?」
「おっ、分かって来たな。じゃあ、俺はこれで。あんまり無理させんなよ」
そう言って彼は空になったコーヒーカップを手に立ち去っていった。私は水の入った自分のコップを見た。
「……助けてくれたのかな」
気付けばニュースは次の話題へと移っていた。
事件概要
昨日未明、千葉県〇〇市の河川から一人の成人男性のものと見られる人体部位が多数発見された。腐敗状況から死後一日以内と見られ、殺害後に遺体を切断して遺棄したと見られる。
第一発見者は、通り掛かった近隣住民。事件に関連すると思われる目撃証言も今のところない。
問題
現時点でここから求められる犯人像として最もあり得そうなものは何か。また、その理由も述べよ。
※注意
この問題はミステリのように必要な材料を全て渡されてトリックを解き、犯人を特定するものではありません。実際の事件で何に重点を置くべきか。そこから犯人逮捕に繋がりそうな情報をどのくらい取り出せるかを問う問題です。
したがって、この問題の絶対解はなく、あくまで妥当性の有無が重要です。
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