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プロローグ

 十分走り抜けることができるが遠くを見通すことはできない。

 そんな密度で樹が不規則に生えている森。


 その森の、ほんの少し開けて光がある程度差し込む場所で二人の男が向き合っていた。


「チェックメイトだ」


 彼は正面に銃口を向ける。

 銃の金属部品が日光を微かに反射させる。


「あなたこそ詰みって感じじゃないですか?」


 正面にいた相手も彼に武器を向けた。

 雑に武器を構えているが、一切の隙は見せない。


 そして近くの茂みで二人を傍観していた狙撃手が呟く。


「あいつ等はなんで銃を使わないっ……!」


―――


 森を出たところにある広場。端が見通せないほどの草原で

 標高もそこそこ高く、地方都市クラスの街を見下ろすことができる。


 そして街から森に続く簡素な道の傍らで議論を繰り広げる者たちがいた。


「お前らは絶対おかしい」

「何がおかしいんだ。銃剣は浪漫だろうよ」

「いえ、釘バットこそ浪漫ですよ」

「だから銃を使えってことだよ!」


 彼らは森へ新しく買ったガスガンの試射兼撃ち合いに来ていた。

 三人共通の知り合いの私有地だそうで本当に自由だ。法には触れてないようだが。


 彼らはエアーガンを扱う時は、雰囲気を出すためあだ名で呼び合う。

 銃剣を使う男は『アロイス』

 なぜかとても親しみ易い顔で、男性にしては長めの髪をしている。


「まったく、釘バットの良さが分からないとは……、貴方達もまだまだですね」


 この釘バット愛好家は『ジーグルト』

 身長高めで細身、メガネを掛けて知的な雰囲気を醸し出している。釘バット以外は。


「なんでお前らは銃を使わないんだよ!?

 銃を使っているのが卑怯みたいじゃないかっ!」


 狙撃銃を片手に叫ぶのは『イェーガー』

 小柄だからか、狙撃銃がやけに大きく見える。

 ちなみに女だ。


 三人は幼馴染の高校生。

 ジーグルトとイェーガーは親の関係で同居しているしアロイスの家も二軒隣にあるため高校生になってからも時折この様に遊んでいる。


「イェーガーさん、小さい体で怒ってもかわいいだけですよ?」

「えっ、かわいい……って何が小さいだ!」


 この二人はこうなると話が長くなるのをアロイスは経験的に知っている。

 少々呆れながら腰の水筒に手を伸ばそうとして気がつく。


「おっと、さっきの場所で水筒を落としたみたいだ。ちょっと行ってくる」

「えっ、水筒持ってきていたんですか?」

「お前らと違って用意がいいからな」


 森に向かいながらジーグルト達に手を振り、先ほどの場所を目指していった。


―――


「どこらへんに落としたかなあ」


 俺――アロイスは先ほどの場所に来てみたが水筒が見当たらない。

 もしかして持ってきたという記憶が間違っているのかと思えてきた。


 と、思っていると森の中の開けた場所で水筒が見つかる。

 ついでに先ほど見かけなかった湖も。


 きれいで透き通っており、そこそこの深さがあることが分かる。

 軽く水草が生えていて良いアクセントとなっている。


「こんな湖、地図にも無かった気がするが……。つい最近できたのか?」


 湖はそんなすぐ出来るものでは無いと分かっているがなんとなく言う。

 その上、湖の畔に生活感満載の木製の小屋が建っている。


 小屋が少し気になり、近寄ってみた。


 遠目からは少し木材が腐っているように見えたが、松のような色をした木を使っているのが分かった。

 ガラスは完全な透明ではなく、気泡が所々入っていて中が上手くうかがえない。

 三角屋根の中央に通気口……全体的にはログハウスといった感じだ。



 観察を続けていると背後からいきなり草を踏む音が聞こえた。

 その音に驚き視線を背後へ移した。


 怪訝そうな少女が呟く。


「……あなた、生きてる?」


――


「遅いですね、アロイスさん」

「だね、先に帰る? 森から出てきていなかったら向こうが電話してくるでしょ」

「ですね、先に帰りますか」


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