第2話
本日二本目です。疲れた…。短めです。
天文5年 5月 那古屋城 平手正秀
ある日から吉法師様をはじめ、その腹心になってほしい吉之助や吉太郎に変化が見られた。前まではいくら話題を出しても吉法師様と吉之助や吉太郎の意見がかみ合わずどうしても嫌悪感が見られる関係だったのが、ある日を境に2人がその考えについていけるようになったのだ。また、わしや佐渡がいないときでも盛んに三人で意見を交わしあっているようだ。
そんなある日、わしと佐渡が信秀様に呼ばれた。わしの読みは吉法師様の傅役のことだと思うが、そのことを佐渡に伝えてみると
「正秀殿の考え道理ではないのか?」
と返してきたので、「そうだとおもう。」と返した。
そして最近の三人の変わりようのことを佐渡に伝えてみると、
「吉太郎のやつも最近どうやったら織田が終わりを制することができるかを聞いてきたな。何でかと聞いたら、将来孔明のような織田を支える軍師になりたいだとか。ようやく吉太郎にも心構えがわかってきたか…」
などと話していたらもう信秀様の部屋の前である。居住まいを正さなくてはならんな。
天文5年 7月 林吉太郎
あの日からもう2か月たった。あの日以降の話し合いで決まったのは、
・傅役が付くまでは大人の目を盗んで字の勉強等をする
・傅役がついたらさっさと勉強を終わらせ傅役と一緒に領内を見回る
・元服するまでに家中に味方を作っておく
と、なっている。まず字の勉強だが、これは僕の指導である程度は読めるようになっている。しかし、読めるだけで書くほうはいまだに進まない。読むほうは時々女中さんが持ってくる絵本等で学んでおり、わからないところは僕が教えるの体制ができている。だが、書くほうは書くための墨がないので書くことすらできない。早く墨がほしいのはかなり切実な願いだ。
そして、話し合いの方だが、ある程度3人の得意分野がわかってきた。まず吉之助だが、彼はもともと軍人なので、軍の動かし方等に関してはやはりよく知っている。だが、その分歴史については知らないことばかりで、彼は一軍の将として活躍しそうだ。
次に僕だが専ら外交や調略等をすることになりそうだ。一番地味だが仕方ない。だっていわゆる「ちーと」なんてものは持ち合わせていないのだ。そして、持ち合わせていたとしても実現なんてできやしない。千歯扱きならまだしも、正条植えなどは周りから反感を買って一揆をおこされて終いだ。
最後は吉法師さまだが彼は内政に優れている。衝撃的だったのは彼が総理大臣であったことだな。そして暗殺されたと聞き、2度驚いた。理由おきいたら「さもありなん。」と思ったがな。しかし、吉之助は、「われらの遺志を継ぐ者が残っていたのか…。」と感極まっていた。
そしてわれらの目標だが、取りあえずは生き残ること、最終的には日ノ本から戦をなくす、というものになった。生き残らなくては意味がないからな。
天文5年 那古屋城 平手吉之助
セミの鳴く声が聞こえる。内地での最後の夏もこのようなものだったな。しかし今はその時にくらべだいぶ涼しいな。吉太郎がいっていたが今の日本は「しょうひょうがき」らしいな。道理で涼しいわけだ。しかし、記憶を取り戻してからの三か月間、まったく体を動かしていない!このままでは体がなまる!そう思い父に
「ちちうえ、わたしにけんじゅつをおしえてください。」
と、頼んでみることにした。すると、
「ならばまずは素振りからやってみようか。」
と言われ、練習用の刀を渡された。昔は剣道で二段を持っていたのでこれぐらいできるだろうと思い、振ってみるがこれが重い!この年の子供には重すぎる気もするが、
「打ち込みはこれが満足に振れるようになってからだな。」
と言われたので、
(絶対に一カ月で振れるようになってやる!)
そう思いながら素振りに明け暮れた。