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【番外編】青っこいのとライム(SS)

 Twitterの企画(タグ遊び?)で一番ノリだった方からのリクエストです。

青っこいののお話を読みたい―!とのことでしたので、ちょっとだけ深堀り(*'ω'*)


しゃべらないけど、蜂ってけっこうかわいいよなぁって思ってます。

養蜂の映像を見てから、暫く夢中wwww

リクエスト有難うございましたー!!! 期待に応えられたかどうかはちょっとわかりませんが(汗



 蜂の一生は短い。



 魔物に分類される水蜂であってもそれは変わらず、一個体長くて2年ほどしか生きられないが、中には何十年も生きるものもいる。

それは女王蜂と『契約をした』蜂。



「女王蜂は基本的に契約しません。なにせ、女王蜂がいなくなってしまえば『巣』がどうなるのか分からないですから。ただ、働きバチが契約することも稀です。そもそも、虫ですから意志がどの程度あるのか……これまで契約をするなら、力で従える、もしくは卵から育てるの二通りです。卵からの場合は、羽化する可能性がかなり低いので前者が非常に多い」



 ずっと私の傍を離れない『青っこいの』を珍しそうに眺めているのはカルンさんだ。

農作業を手伝うと出来高に応じて野菜やミルクが貰えるので、早朝作業を出来るだけ手伝うようにしている。最初はリアンやベルもついてきたんだけど、二人ともそれぞれやりたいことができたみたいなので別行動中。



「青っこいのがついて来てくれてるのは助けたから、ですかね?」


「恐らくは。魔力を覚えたからついて来ているって言うのもあるとは思いますが、中々珍しいのではないでしょうか。基本的に弱ったり追い詰められた生き物はその場で死にますからね」



 なるほど、と頷くと頭の上に青っこいのがとまる。

話を聞いていたみたいにブブッと羽を震わせていたけれどすぐに大人しくなった。


 青っこいのは私が作業を手伝うのを見計らったように何処からともなく飛んでくる。

カルンさんをはじめとする集落の人も最初こそ凄く驚いていたけれど、直ぐに慣れたらしい。私の傍に青っこいのがいないと心配そうに周りを見回す様になって、見つけると「あっちにいるよ」と教えてくれるまでに。



「青っこいの。今日のご飯ね」



 はい、と小さな魔石に魔力を注いで渡すと青っこいのは私が脱いで畳んだ服の上に着地して魔石から魔力を吸い始めた。

食事する所じゃないんだけどな、と思いつつ作業を終えて沢山のミルクと野菜を受け取った帰りにたまたま薬草を見つけたので影響がない程度に片っ端から採取。


 採取を終えてその場で簡単に薬草の仕分けをしようと座り込むと何処かへ行っていた青っこいのが戻ってきた。


 なんだか少しフラフラしてたし、てっきり帰ったと思っていたから嬉しくて水色魔石を渡す。

ブンブンっと八の字飛行を繰り返すのでいいからまずはソレを食べろと言えば大人しく頭の上で食べ始めた。いや、いいんだけどさ……場所……もっと考えようよ。



「今回も端数がでた……あとちょっとで10束になるしもう少し探してみようかな。集落の薬草ってみんな品質いいんだよね」



 チラッと森を見ると目の前に浮かぶ青っこいの。

魔石の魔力を吸い終わったからお知らせに来たのかと思っていると直径1センチほどの透き通った黄色い飴のような物を抱えている。



「青っこいの、それなに?」



 首を傾げると青っこいのも器用に傾くので、とりあえず掌を出すとその上にとまり、飴のようなものを持ったままじっと私を見ている。



「……んーと、くれるの?」



 良くは分からないけど、そんな気がして聞けば青っこいのはブンッッと高く舞い上がって大きな大きな八の字飛行をし始める。しかも、すんごい速さで。



「………いや、速くて見えん」



 ブンブン飛びまくる青っこいのは、かろうじて真っ青な空に残像と音を残して元気よく飛び回っていた。時間にしておよそ三分。結構長い。



 私の手元に戻って来た時はフラフラになって頭の上に不時着。

何だか残念な生き物だよなぁと苦笑しつつ、貰った飴のような物を小瓶に入れてカルンさんの元へ持って行ってみる。

何か知ってるかな、って思ったから引き返したんだよね。



「あの、すいません! ちょっと聞きたいことが……」


「ん? あれ。ライムちゃんが聞きたいことって珍しいね。なんだい?」



 ニコニコと巨大なミルクタンク(金属製の大きい筒みたいなの。絞ったミルクを入れる専用容器)を運んでいた所だったので、申し訳なく思いつつ小瓶を取り出す。

興味深そうに瓶の中を覗き込むカルンさんに手に入れた経緯を話した。



「これ、さっき青っこいのがくれたんです。食べられますか?」


「これは…っ!」



 ギョッとしたような声と同時に持っていたミルクタンクがカルンさんの足の上に落ちて、小さく「痛っ」とこぼす。

 慌てて大丈夫か聞くと薄っすら涙目になりつつも笑顔で頷く。



「勿論食べれるよ。いやぁ、よかったね! 青っこいの、だったかな? いい決断だ」



 ココで食べてしまいなさい、と言われたので小瓶の中身を口に含む。

これが不思議な食感で、歯で噛むとくにゅっとして、直ぐにとろりと溶け出した。

最初は飴玉みたいに硬かったのに……と思いつつ舌で舐めると、口いっぱいに濃厚なのに爽やかな甘さが広がる。


 苦みもえぐみもない、液体とも個体ともつかない不思議なソレは全てのみ込むと体の中がポカポカと温かくなった。じわじわと疲れが溶けて消えていく感覚に驚く。



「食べてから聞くのもなんですけど、これ、何ですか?」


「そこにいる『青っこいの』から『君への気持ち』の贈り物だよ。美味しかったかい?」


「もちろん! ありがと、青っこいの」



 お礼をいうとブンッと軽い音を立てて私の肩に止まり、そのまま髪の中へもぐる様にじゃれ始めた。この行動は初めて見た。



「さっきの飴のようなものは、蜂の気持ちが反映されていると一説では広まっているんだ。殆どが無理やり作らせるから苦かったりえぐみがあることが多いんだけど、美味しかったのならよかった」



 いい子いい子、と頭を撫でられよくわからないまま頭を撫でる優しい手に目を閉じる。

気持ちいいなぁとか嬉しいなぁとか思っていたこの時の私はこの一連のやり取りをすっかり忘れていた。


 思い出したのは集落を出る時。

この時に食べた『青っこいのの飴玉もどき』が蜜玉と呼ばれる特別なものであることと、差し出された方が蜜玉を体内に入れることで主従契約が結ばれるということを初めて知ったんだよね。


 主従契約っていうのがイマイチ良く分からなかったのだけれど、青っこいのは私の魔力を感知できるらしい。それこそ、他国にいたとしても。

基本的に働き蜂として巣にとどまることが多いけれど、気紛れに主人の元へ会いに行くこともあるのだとか。生き物としての構造みたいなものが変わるらしく、水蜂から何か別の生き物へ進化することもあるらしい。


 強さも素早さも能力も、そして思考も強化されると知ったのは共存士ギルドだった。

いや、たまたま聞いてみたんだよね。ルヴ達の餌を買いに行った時に。


 ふぅっと息を吐いてハチミツ入りのホットミルクを飲んでいるとベルが何とも言えない表情で私を見ていることに気付く。

今、調合が終わって小休憩を取っている所だ。

連続調合は良いんだけど、時々フッと集中力が切れるんだよね。



「ライムって目を離すと妙な物を仲間にしてるわよね。普通、その辺にいる野良ネズミリスとかじゃないの? 初めて見たわよ、蜂とヴォルフ二頭を共存獣にしてる錬金術師なんて」


「そんなこといわれても……気付いたら仲間になってくれてたって言うか。リアンだってギフトートバードの鶏肉、じゃない真っ白いのと契約結んでるし私だけじゃないよ」


「……いま、アンタ、鶏肉って言わなかった?」


「て、訂正したじゃん。毒はなさそうだから食べようとは思ったけど、よく見るとフカフカだし、一羽分の肉も羽毛も大した量にはならないから生かしておいた方が断然いいっていうか」


「いや、あんた本当に情緒どうなってんのよ」



 凄く嫌そうな顔で私から少し距離を取ったベルに、そんな大げさな~って笑うとため息をつかれた。

この後、買い物から戻ってきたリアンにベルが私とした会話の内容を話して、似たような表情でため息をつかれたのはちょっと納得がいかない。


 だって、リアンも一羽から得られる最大限の利益とか考えてる筈だし。

いや、可愛かったけどね。ギフトートバード。うん。



 集落での一幕。

実は結構小ネタが沢山あります。ハイ。

集落へ行った面々もですが現地に住んでいる人も「許可がおりた外部のお客さん」に興味津々。

お互い距離を測りつつ(一人距離感ぶっ壊れてるけど)楽しく交流できていたらいいなぁと思います。


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― 新着の感想 ―
青っこいのは青っこいの、が正式名になってしまったんでしょうか。
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