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マリーゴールド  作者: はち
1/50

0.談笑

 前回「探偵とヒーロー」に感想をいただけたことが嬉しくて、またまた小説を書かせていただきます。 

 今日から一日一回は必ず投稿していきます。

 年末までには完結いたしますので、読んでいただければ幸いです。

 そして今回も、酷評や批評お待ちしています。変に思ったことなどあれば遠慮なく言っていただけると助かります。

 ですが、読んでいただけるだけで大変嬉しいです。

「あなたがもし、人に生きる喜びを与える才能を持っていたなら、どんな人間になっていたと思いますか?」


 東城箒ちゃんは、涼しく透き通るような美しい声で私にそう聞いた。


 その問いは、私が人生で一度も考えたこともない質問だった。なので私は悩み、ゆえに言葉を失った。

 私が私であるという証明。それを奪われ、神々しく輝く才能を与えられたとき、私はどうなるのだろう。


 きっと原型を留めないだろう。きっと跡形もなく消え去るだろう。きっと私は私でなくなって、幸せに、さぞ幸せになるんだろう。

 友達をつくり、家族と暮らし、好きな人と恋をして、平凡に生きると思った。


 そこまで思考して、空想を抱いて、これがただの「もしもの話」でしかないのだと気づいた。

 もしもドラえもんがいたらどの秘密道具を使う?その程度の会話なのだと気づいた。

 それなのに、私は幸せな人生まで妄想してしまった。こんな年端もいかない女の子の質問に、ここまで心を揺らされたことが恥ずかしかった。

 良い大人になって何をしているんだろう、私は。


「世界平和を目指すんじゃないかな」


 私は大人として箒ちゃんに、こんな会話に意味はないんだよって伝えようとした。


「あら、私の質問、ちゃんと届いていなかったのですかね。そんな答えが返ってくるとは思えませんもの。そうですよね、そうでないとおかしいですわ」


 冷たく攻め入るような言葉、冷たく私を見つめる三白眼、それら全てから感じてしまう、期待――。

 目の前の大人に対する、無邪気な期待だ。自分に素晴らしいことを教えてくれるということへの喜びで、胸がいっぱいになっているみたいだ。


 ああ、だめだ。こういうのが一番苦手だ。誰かに期待されるのも、誰かに何かを求められるのも、誰かと接すること自体私は嫌いなんだ。

 嫌いで、嫌で、嫌悪しているんだ。


 だから私は、これ以上何も聞かれないように、これ以上何も期待されないように、本当のことを言った。


「意味ないよ。だって私は多分、そんな才能でさえも――死なせてしまうから」


 そう言うと、箒ちゃんは満足したようににっこりと笑った。


「そうでしょうそうでしょう。あなたはそうでなくては困るのです」


 そんな言葉に、私も引きつった笑みを浮かべた。


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