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恋に恋してなにが悪い!  作者: 八雲 なお
7/7

なになに?なんの話?

「はああぁぁ。LINEってこんなに体力消耗するものなのか?」


蒼葉は先ほどの怒涛のような(蒼葉のなかでは)やりとりを終え、ベッドにへたり込んでいた。


でもまあ現実でする会話よりはマシだろう。何せ現実ではあんなにすらすら言葉が出てこない。でもまさか、


「あすかなが今後そんな展開になるなんてなぁ。」


蒼葉は澄香にネタバレを食らったことの怒りよりも、今後あの友情が崩壊するという悲しみに悶えていた。


「一話だけで判断しちゃダメだったかぁ。」


蒼葉は、落ち込むと同時にがっこう○らしのあの悲劇を思い出していた。




翌日の昼休み。


「へぇ、軟式野球部に入ったんだ。」


ここは二年一組の教室。


「おう。他のスポーツにすることも考えたんやけどやっぱりずっとやってきてるし高二になって変えるのはちょっとな。」


蒼葉と史也は一緒に昼食を食べるため、机をくっつけながら、


「小学校の頃からずっとやってるもんね。」


「まあな。」


部活について話していた。


お互い向かい合うように机をくっつけると、カバンからお弁当を出して昼食タイム。


「でもなんで軟式にしたの?硬式の方がガチっぽいのに。」


蒼葉はお弁当の蓋を開けながら聞いた。お、唐揚げが入ってる。ラッキー。


蒼葉らが通う芦野高校には、軟式野球部と硬式野球部があった。この学校ではどちらかというと硬式野球部のほうが顧問が怖かったり、全員坊主にしなければならなかったりと本腰を入れて野球に取り組んでいる感じだった。


軟式野球部は『チャラチャラしているというわけではないが比較的ゆるい』というのが芦野高校生徒の見解だった。


「まぁ、ガチっぽいからやめたというか。俺はみんなでワイワイやる野球が好きなだけでそこに向上心みたいなのはないからなぁ。」


「んー、わかるようなわからないような。」


「まぁ、蒼葉にわかりやすく伝えるなら『世界を救うために頑張る勇者タイプ』と、『ゆるゆるとした田舎ライフを過ごしたい村人タイプ』みたいな感じ。」


「あー、なるほど。それならわかる。それでいうなら、史也は村人タイプなわけか。」


「そういうこと。うん。うまい。」


史也が弁当を食べてひとこと。うわぁ。その卵焼き美味しそう。


と、


「なになに?なんの話?」


ふと、左から声がした。目線を史也の弁当からそちらへ移す。そこには、


「郡山が村人ってなんのこと?」


茶色がかった髪色でショードボブの女子生徒がいた。その声に史也が反応する。


「なんでもないって、ほら蒼葉がきょどってるやんけ。」


「ああごめん。うちは、平野咲良(さくら)。」


「え、あ、ああ。俺は忍原蒼葉。」


自分なりの精一杯の自己紹介。


「ああ!君が忍原君か!いやー昨日郡山が話してたからどんな人かなっておもっててんけど。」


ん?関西弁?平野さん関西出身なのか?


「こいつ軟式野球部のマネージャーで、昨日ちょっと蒼葉のこと話してん。」


「へ、へぇ。」


史也すげえ。転校初日で女子と会話するとかさすがイケメン。


と、そこで蒼葉は気づいた。咲良の後ろに隠れている人影に。


「ほら、澄香。郡山やで。」


咲良は後ろの人影に話しかけた。

ん?澄香って。


咲良の後ろから出てきたその影はおずおずとした様子で言った。


「え、えと。桐丘澄香です。あ、えと。咲良の友達です。」


き、桐丘澄香ぁ?!これが?


「友達ってそんなんうちらのこと見たらわかるやん。あはは。」


「へ?あ、そうだね。あ、あはは。」


昨日のLINEの饒舌ぶりは何処へやら。自分と同じネット弁慶っぷりに蒼葉は少し共感を覚えた。


「じゃ、うちらも昼ごはん食べてくるわ。」


咲良はそういうと澄香を連れ、自分の席へと向かって行った。


二人が席へ向かった後、史也が話し出した。


「平野は、聞いてたらわかると思うけど関西出身らしい。それも大阪。で、高校からこっちに引っ越してきたらしい。」


「へぇ、で、史也も四年間大阪におったから話が合うと。」


「んー、まあ住んでた地域が違うみたいやし大阪の話題はそこまで盛り上がらんかったけどな。」


蒼葉は思う。

平野さんはおそらく嬉しいんじゃないだろうか。転校してまだ一年、慣れない場所で心細いなか地元の方言を話す人を見つけることができて。


「ふぅーん。」


蒼葉は意味ありげに納得するとまた唐揚げを頬張った。

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