女子かな?それとも女子かな?
「聞いたか?今日転校生が来るらしいぜ?」
とある陽キャラ男子が言う。
「マジかよ?女子かな?それとも女子かな?」
その友達が返す。
「男子の選択肢なしかよ。まぁ、確かに女子、可愛い子だったらいいなぁ。」
また陽キャラがまた返す。
「やめときなって。普通な子がきてあんたらがあからさまに沈んだらその子かわいそうでしょ?」
その二人の友達と思しき陽キャラ女子が言う。
「あーはいはい、お前も感情顔に出すのなしな。」
「私はそんなことしないし。」
約1ヶ月ぶりに聞く教室の喧騒。教室内には見知った者もいるが知らない者もいる。そんな、なんとも不思議な感じ。
今日は始業式。下足室に張り出されたクラス表を確認し、その教室へとやってきた忍原蒼葉は、そんな陽キャラの会話に耳を傾けつつ一人でスマホをいじっていた。
ここでひとつ言っておきたいことがある。それは、蒼葉は決して『友達はいらない。人間強度が下がるから』的キャラではないということだ。
ただ人見知りが激しいというだけで、決して友達を必要としていないわけではない。むしろ欲しいくらいだ。現に今蒼葉は流行りのスマホゲームを少し周りに見える感じでやっている。スマホゲームから始める友達作りである。
(相手から話しかけてくれれば会話できるんだけどなぁ。)
蒼葉は受動的で消極的な性格をしている。そしてその根本にあるのが────
(俺から話しかけると『何こいつ俺、私に話しかけてくれちゃってんの』とか思われそうだし。)──── このとてつもない卑屈さに由来する。