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第八話 預言者ディクソン 上

ケイは、駅の改札で訊ねた。

「この辺りに、本屋はありませんか?」

駅員は、愛想良く答えた。

「駅前通りの右手3件目が書店です。」

「ありがとう。」

ケイは、駅を出ると本屋に向かった。

カウンターで訊ねる。

「ディクソンさんの本はありますか?」

「『予言の書』でしょうか?」

「多分そうです。」

店員は、正面の大きな書棚を指した。

そこには、棚一杯に立派な革装丁の背表紙が並んでいた。

その書名は全て『予言の書』であり、著者名も全て『ジェイコブ・ディクソン』であった。

全て同じ装丁だが、まだ革の匂いが真新しい物も、背表紙が日に焼けて色褪せ擦り切れかけている物もあった。

大いなる再構築以前なら本屋といえば、新本を扱う書店と古本を扱う古書店に別れ、流通も全く別の体系となっていたが、近代的な流通システムが崩壊した現在では、古本も新本と同様に貴重な情報であり、どこの書店でも両方扱っている。

ケイは、その本を端から順番に引っ張り出しては、奥付を確かめて行った。

予想通り、刷数は記されているが、版数の記載はなかった。

出版元としては、改訂の履歴は明らかにしたくないようである。

見比べた末に、ケイは最も日付の新しい2176年(去年なので、恐らく現時点での最新版であろう)版を一冊と別にもう一冊を購入した。

2冊をバックパックにしまうと、ケイは駅にとって返す。

目的の街は2駅先なのだ。

列車に乗り込むと、ケイはバックパックから買ったばかりの本を取り出して開いた。

古い方をパラパラとはじめの方からめくってみると、前の持ち主は、余程熱心な読者だったようで、余白は殆ど書き込みで埋まっていた。

中身は全て4行詩で、それも韻を踏むとかリズムを揃えるとかいった事など全く考えていない上に、やたらと大仰な言い回しの抽象的な文章を羅列しただけで、何が言いたいのかさっぱり判らないといった代物で、作品としてのレベルは呆れるほど低かった。

偶々目についた詩に曰く

『その時深海わだつみよりいにしえの力が立ち上がらん。

くらき望みはその座を与えられん。

みなは、五体に溢るる恐れを懐きてのその日を迎えん。

そのぼうじられにし故に。』

「こいつは酷い。」

ケイは思わずそう呟いた。

辛うじて判るのは、『海で何かが立ち上がる』事と、『何かが大変に恐れられる』事くらいである。

それだって、比喩だと言われれば否定は出来ない。

『古の力』や『冥き望み』とは、具体的に何を指すのかは、全く不明である。

第一何の前ふりもなく、『その』時と言われても、一体『どの』時なのか。

更に、場所も判らない。

『深海』と言われても、海は広いのだ。

それに、特別な装備無しで人が潜れる深度は精々10m程だから、それより深ければ『深海』だと強弁されれば、否定も出来ない。

だから、陸上でないという以上の事は言っていないのである。

また、『忘じ』られたのは、『古の力』なのか『冥き望み』なのか、全く判断が着かない。

勿論、どちらが恐れられるのかも判らないし、そもそも、その『古の力』や『冥き望み』が目に見える所へ出てくるかどうかも判然としない。

それに、『その日』は『その時』と同じ日なのかその後幾らか経過してからなのかも判断出来ない。

結局の所、『何時か』『何処かで』『何かが起こる』としか言っていないのである。

もう少しページをめくってみたが、他の詩も同工異曲であった。

今夜中に、この本に一通り目を通しておかねばならないと思うと、ケイは目眩がした。


駅に着くと、改札で訊ねた。

「ディクソンさんの研究所はどちらにありますか?」

「1ブロック先で北に折れた通りの右側です。この街で2番目に大きな建物ですから、すぐに判りますよ。」


言われた通りに進むと、場所はすぐに判った。

二階建ての商店や事務所の並びの中に、大きな煉瓦造りの四階建てが、辺りを睥睨するように聳えている。

正面玄関の上には、アカンサスのゴテゴテとした縁飾りの大きな看板が掛けられ、凝りに凝った字体で『ジェイコブ・ディクソン予言研究室』と記されている。

玄関を入ると、受付嬢に声を掛ける。

「連邦SI局のケイ・アマギです。ディクソンさんにお会いしたいのですが。」

「少々お待ちを。」

そう言って女は立ち上がると、奥に消えた。

しばらくすると、受付嬢は愛想笑いを浮かべる中年男と連れ立って戻って来た。

男は、今にも揉み手を始めるのではないかと思うほどの愛想笑いを満面に溢れさせつつ、猫なで声で言った。

「これはこれは、遠路お運び頂き、恐悦至極に存じます。私当研究所の副所長を勤めさせて頂いておりますアンドレィ・ベリアと申します。」

「連邦SI局のケイ・アマギと申します。」

そう応えながら差し出された手を握ったが、その手は死んだ魚を思わせる様に冷たく湿ってぐんにゃりとした感触だった。

「所長が奥でお待ちです。ささ、どうぞこちらへ。」

何とも軽薄そうな態度で先導するベリアについて、奥へ進む。

やがて、いかにも金の掛かっていそうな、煩いくらいにごてごてと彫刻が施されたマホガニーのドアの前に立って、ベリアが姿勢を正して声を張り上げた。

「連邦SI局監査官アマギ様がお出でになりました。」

「お入り頂きなさい。」

中から、尊大そうな声が返って来た。

「どうぞ、お入り下さい。」

そう言いながらベリアは、芝居がかった仕種でドアを開けた。

部屋の奥には見るからに重厚そうな机があり、その向こうの椅子に、文字どおりふんぞり返って座っている男がいた。

頭には恐ろしく高い三角帽子を載せ、分厚い天鵞絨のガウンを羽織っている。

帽子にもガウンにも、一面にこれ見よがしに星座記号が刺繍されている。

「所長、こちらは連邦SI局監査官ケイ・アマギ様でございます。」

そう言ってベリアは大仰に振り返ると

「アマギ様、こちらが当研究所の所長にして、過去最高かつ最後の予言者ジェイコブ・ディクソン大導師でございます。」

ケイは、その仕種と物言いが余りにも芝居がかっているので、思わず吹き出しそうになったが、危うく堪えて頭を下げた。

「宜しくお願いします。」

ディクソンは、座ったままで応えた。

「うむ、宜しく頼みますよ。」

その姿勢は、あくまでも尊大であった。

ケイは椅子も勧められず(そもそもこの部屋にはディクソンが座っているもの以外に椅子は無かった)その後の話は殆どベリアの説明だけで進み、翌朝に市庁舎(この街で一番大きな建物らしい)の大ホールで公開討論の形で監査を行う事となった。

ケイはベリアの一方的な説明の合間を縫って、辛うじて『明日の監査までに、ここ10年間での的中事例をリストアップしておく事』という要求を伝えた。

その間ディクソンは、座ったままで時折尊大な口調で相槌を打つだけであった。


打合わせが終わるとケイは辞去し、研究所から離れてから通行人を捕まえホテルを訊ねた。

教えられたこの街唯一のホテルに着くと、客室は全て2階にあり1階は街で最大の食堂というか居酒屋になっていた。

あまり規模の大きくない街では、宿泊施設と娯楽施設が共用となっている事が多いので特に珍しい話ではない。

部屋に入ると、気が進まないが2冊の本を開く。

溜め息をついて、再び頭痛を起こしそうなもどきとの格闘を始めた。


「べリアよ、本当に大丈夫なのか?」

ディクソンは、不安そうに訊ねた。

「勿論ですとも。これまで通り、このべリアに全てお任せ下さい。」

べリアは自信たっぷりに胸を叩いて見せるが、ディクソンの表情は冴えないままだ。

「監査は厳しいと聞いているぞ。」

部屋には二人以外は居ないので、弱音を吐いても誰にも聞かれる心配はないとはいえ、こう弱気になられては『演技』に差し支えが出ないとも限らない。

「今まで私の言う通りにして、上手く行かなかった事が御座いますか?」

その自信に満ちた問い掛けに、ディクソンはようやく愁眉を開く様に表情を和らげて言った。

「そうだな。宜しく頼むぞ。」

「畏まりました。」

そう言いながらべリアは、腹の中では襤褸が出ない内に次の大導師候補を準備した方が良いかもしれないと考え始めていた。


日も暮れて、空腹を覚えたケイは階下の食堂へ行った。

頭の中は『偉大なる存在』だの『怖気を振るう程の邪悪』だのと言った大仰だが意味の無い言葉ですっかり飽和しており、ともかく気分転換したかった。

ケイが食堂を覗くと、恰幅の良い中年の女将が愛想良く声を掛けた。

「いらっしゃいませ。」

食堂は既に大半の席が埋っており、男達は大声で話しながらジョッキを傾けている。

そのテーブルの間を、ウェイトレスにしては人数が多すぎる、見た目だけは派手だがいかにも安物そうな、ペラペラの服を着た女達が往き来している。

媚びる様な笑みを浮かべて声を掛けて廻っている様子からして、人類最古の職業に従事する女達であろう。

あちこちで商談が成立し、男が女の肩に手を掛けて食堂を後にする。

こういう商売に厳格な街もあればそうでない街もあるが、ここまでオープンにやっている街は珍しい。

ケイはうんざりしてメニューを選ぶ気力もなく、日替り定食を頼んだ。

客を求める女達はケイのテーブルにもやって来たが、顔も上げずに手を振って断った。

その態度に誘っても無駄だと判断したらしく、誰も声を掛けて来なくなった。

ようやく落ち着いて食事できるようになったが、しばらくしてまた声を掛けられた。

「あのぅ、今夜のお相手はおきまりでしょうか?」

ケイは、驚いて顔を上げた。

その声が、あまりにも幼かったからだ。

テーブルの横に立った少女は、どう見てもローティーン以上には見えなかった。

痩せている、というよりはやつれていると表現した方が相応しい体形で、抱きすくめたら折れてしまうのではないかという恐れを感じる程にみすぼらしい様子であった。

その少女が、他の女達と同じくらい色だけは派手で胸ぐりの深い、安物のドレスを羽織っている様子は、痛々しいとしか言いようがなかった。

「君は幾つだ?」

思わず尋問口調で問い掛けると、少女は消え入りそうな声で答えた。

「そのぅ、12で・・・す。」

性的放縦をどう評価するかは相対的な問題であり、その街を管理する教団の価値観で決まる物で、それ自体は良い事でも悪い事でもない。

性的に厳格な規範を守りつつ、金銭的には腐敗を極めている中世ヨーロッパの修道院のような教団もあれば、性的には寛容であったり甚だしきは古代メソポタミアの神殿のような神聖売春といった形で奨励しながら、それ以外の点では戒律を厳しく行う教団もある。

従って、これを監査を行う上での判断基準としてはならない、と教えられて来た。

しかし、児童に対する性的搾取が大手を振って罷り通っているとなると、話は別である。

これは明らかに『道徳的廃退』の徴だ。

「君を一晩買い切ると、幾らになる?」

「えっとぉ、そのぅ、45ドルで・・・す。」

相場よりはかなり安い。

子供は『経験』が少いので手管に長けていないため、その分料金を安く設定される。

つまり、『安い』という自体事が、少女の背後にいる女衒共がこの少女の幼さを認識している証拠なのだ。

ケイは、財布から20ドル札を三枚つかみ出して、少女の手に押し込んだ。

「今日は、もう帰って寝なさい。」

ぶっきらぼうにそう言うと、顔を背けた。

偽善としても何の意味もない、自己満足でしかない事は良く判っていたが、いたたまれなかったのだ。

少女はしばらく逡巡していたようだが、やがて無言のまま食堂を後にした。

食事を済ませたケイは、部屋に戻ると先程の光景を忘れるために、予言詩の解読と比較に没頭した。


目覚めは爽快とは言いがたかった。

結局深夜まで意味不明な4行詩の群と格闘し、ベッドに入ったのは、夜更けというよりは明け方近くであったし、意味の読み取れた詩も殆ど無かった。

ケイは頭を振って、繋がるべき意味を何物も見出だせずに宛途なく頭の中を往き来している『大いなる畏れ』だの『密められたる企み』だのという大仰だが意味の無いフレーズを振り払った。


市庁舎を訪れると、受付に向かった。

あらかじめ話は通っていた様で、ケイが名前を告げただけで受付嬢は人を呼んだ。

若い男がやって来る。

「研究員のチャーリー・フォートです。もう監査の準備は整っております。こちらへどうぞ。」


連れて行かれた先には、巨大な扉が聳えていた。

「こちらの大ホールで、実施致します。」

中に入ると、ざっと200席はありそうな椅子は、ほとんど埋まっていた。

フォートに案内されて客席を通り抜け舞台に上がると、既に舞台の上手にはディクソンとベリアが座っていた。

ケイは下手の椅子に案内され、二人に会釈して座った。

ベリアはやおら立ち上がると、ケイがバックパックから一冊の本を取り出すのを横目に見ながら、思い切り芝居気たっぷりに開会を宣言した。

「先ずは、我等が偉大なる大導師の予言の素晴らしい的中率について、ご説明致しましょう。」

ベリアはケイが持っているのと同じ立派な革装丁の本を片手に、自慢気に語り始めた。

「我等が偉大なる大導師の予言は、全てこの『予言の書』として広く公開されており、その正否は誰でも容易に確認できます。その上で、当研究所の専任検証スタッフによる厳密な科学的検証により確認されている的中率は、実に90パーセントを越えております。また残りの10パーセント弱についても、決して外れている訳ではなく、その事実が余りに密やかに生起しておるか、または未だ起こっておらぬために確認できない物ばかりなのでありまして、その点を考慮すれば、的中率は100パーセントと言っても過言では無いでしょう。」

その言葉に、客席から割れんばかりの拍手が沸き起こった。

ケイには、その物言いはどう考えても『過言』だと思われたが、とりあえず様子を見る事にした。

ベリアの長広舌は、更に続く。

「この未確認の予言につきまして、現在当研究所が総力を挙げて、検証を行っておりますが、何分にも先程申しましたような性質上、また、厳密かつ科学的な検証を行っております関係で作業は困難を極め、中々目に見える成果に結び付いておらないというのが実状です。ただし、世界中に余多居られますところの大導師の熱烈なる読者の方々より、その発見された的中事例をご連絡頂く事も多く、いずれは全て検証され予言が100パーセント正しい事が証明される事は、疑いがありません。」

再び耳が痛い程の拍手が起こる。

ここでベリアは一旦言葉を切り、ケイの表情を確かめると挑戦的な口調で訊ねた。

「さて、この偉大なる実績について、何かご意見はございますか?」

ケイは、この挑戦を受けて立つ事にした。

「まず最初に、幾つかの事実確認をさせてください。」

満堂の観衆の無言の支持を背に、べリアは余裕綽々で応じる。

「どうぞ。」

ケイは、まずべリアの言う『科学的な検証』の精度について攻めて見る事にした。

「一つ目ですが、今おっしゃいました『的中率90パーセント以上』について、具体的には何パーセントですか?」

べリアは、俺の話を聞いていなかったのかと言わんばかりの調子で答えた。

「今申しました通り、90パーセント以上です。」

ケイは、再度訊ねる。

「ですから、具体的な数字は幾らですか?」

ベリアは、わずかに鼻白んだが、すぐに答えた。

「小数点以下幾らというような詳細な数字は覚えておりませんので、この場ではお答えできかねます。」

ケイは、さらに追求する。

「小数点以下は結構ですので、1の位までの概数でお願いします。厳密な科学的検証に基づいてきちんと算出されているのであれば、その程度は覚えておられるのでは?」

ベリアは一瞬眉を吊り上げたが、すぐに愛想笑いを浮かべて答えた。

「生憎その辺りは私も把握し切れておりません。どうしてもその数字が必要との仰せであれば、後程記録部門から回答させましょう。」

まともに答える気は無い(あるいは答える事が出来そうにない)様なので、次の設問に移る。

「判りました。では2点目です。その的中率の分母は、幾つですか?」

ベリアは、質問の意味を掴みかねたようで、怪訝そうな顔をした。

ケイは、手にした本を軽く掲げて見せる。

「いや、この本には、全部で400篇の詩が載っていますが、その中に具体的な日時に言及している物は、私の見る限りでは一編もありません。従って、書かれている内容が実現した事が確認されるまでは、未実現または実現したかどうかは不明と見なすべきだと考えますが、90パーセントが的中しており、かつ残り10パーセントはまだ未確認なだけで外れている訳ではない、との事ですから、的中率90パーセントの分母はこの本全体、即ち400であり、この本の予言のうち9割は既に実現したと考えて宜しいですね。」

その問い掛けに、ベリアは軽く狼狽した。

「い、いや、そうではありません。90パーセントというのは現在までに起こった事実についての予言に関しての検証の結果であり、400篇全てに対する数字ではありません。」

なるべく分母は小さくしたい様だ。

まあそうだろう。

申請書によれば、予言の書が最初に出たのは2164年つまり13年前である。

幾ら曖昧な記述にしてあるとは言え、360篇もの詩をこの13年間のそれなりの事象にこじつけるのは難しいし、予言の残りが大きく見積もっても40篇しかないと認めれば、今後の売上にも響くに違い無い。

「しかし、先程貴方は残り10パーセントについて気付かれていないか『まだ起こっていない』事象だとおっしゃいました。今の『現在までに起こった事実』に関する検証という説明とは矛盾しますね。」

ケイの指摘に対して一斉にブーイングが起き、会場のあちこちから「そんな細かい事はどうでも良いだろ!」とベリアの心境を代弁する様なヤジが飛ぶ。

良く訓練された観客だ、とケイは思った。

「あー、その、つまり『実現したかどうかは不明』というのが、予言された時期が到来して検証対象となった詩の内で的中が確認出来なかった10パーセントに関する説明であり、『まだ起こっていない』というのは、残りのまだ時期が来ていない物についての説明です。」

観衆の応援に余裕を取り戻したべリアの抗弁に、再び客席から拍手と歓声が上がる。

「先程の御発言は、とてもそうは取れません。」

ケイは、その答弁の苦しさを指摘した。

「その様な些細な事にこだわりがあるのでしたら、誤解を招く様な言い方になってしまった事については、この場で謝罪致します。」

客席からの応援に自信を取り戻したベリアは、余裕綽々に頭を下げて見せ、観客は口々にケイに非難の罵声を浴びせた。

「それでは、結局のところ、分母は幾つなんです?」

ケイは更に追い討ちを掛ける。

ベリアは一瞬言葉に詰まったが、すぐに答えた。

「ですから、その様な些細な事は一々覚えておりません。どうしても必要とあれば、先程の数字と共に後程回答致します。」

開き直られてしまえば、これ以上追及しても意味がない。

取り合えず釘を刺しておいて、次に移る事にした。

「厳密な科学的検証と公言された事を思えば、とても些細な事とは言えないと思いますが、いずれにせよ検証可能な数字が出るまでは、妥当性のある検証が実施されたという申し立ては受け入れられない、という点だけを指摘しておきましょう。」

そう言ってケイは、一旦言葉を切った。

「次に、検証対象となった詩は全て『予言された時期が到来した』という点についてですが、その『時期』とは、何によって判断されるのですか?」

気を取り直したベリアは、すらりと答えた。

「その予言が成就した時、即ちその詩に記されている事象が生起した時に判明します。」

ケイは、すかさず次の一撃を放つ。

「生起した事が確認できた時に時期が到来したと判断するなら、先程おっしゃられた、検証対象として抽出した物の中に未確認の物がある、という発言と矛盾しますね。」

ベリアの顔が紅潮した。

「そんな細かい事に何の意味があるんですか!」

ケイは、わざと頸を捻って訊ねた。

「細かい事には意味がない様な『科学的検証』を行った、という事ですか?」

べリアは、怒りを露にして怒鳴る様に言う。

「貴方は、さっきから揚げ足を取っているだけじゃ無いですか!」

ベリアは有効な反論材料が見当たらないため、 ケイの悪意を言い立てる事で優位に立とう、という戦術に出た。

いわゆる『逆ギレ』である。

「そちらの主張に矛盾がないか検証しているだけですが、それがそんなに都合が悪いんですか?」

ケイは相手のペースに乗せられない様に、穏やかに訊ねる。

「そんな事を言っている訳じゃ無い!貴方が揚げ足取りを繰返していると言っているんです!」

客席から一斉に同意の声が挙がるのを気にも止めず、ケイは穏やかに指摘する。

「科学的検証を標榜される以上、監査においてその主張内容の妥当性を検証されるのは当然の事です。そして、監査の進め方は、監査官に一任されています。」

観衆が全て味方である事を良く認識しているべリアは、強気で圧して来た。

「だから、これは検証なんて物じゃない!ただの揚げ足取りだ!」

ケイはベリアの戦術に付き合う必要は無いと判断し、伝家の宝刀を抜いた。

「監査の進め方がお気に召さないのであれば、監査申請は取り下げという事で宜しいですね。」

ベリアの顔色が変わる。

監査申請には、大賢者の推薦が必要である。

その過程で、相当額の公にできない金が推薦人である大賢者に向けて動く事は、半ば常識である。

推薦した団体が監査に不合格となった場合、推薦人の見識に疑問符が付けられるので、これは当然の危険手当と見なされている。

しかし監査取り下げとなると、それだけは済まなくなる。

被推薦団体が、自らの意思で推薦人の面子を潰す事になるのだから、推薦人及びその主宰する団体に対して敵対的行動に出たと見なされるのだ。

そうなれば、その団体との関係は断絶とまでは行かなくても悪化する事が想像される上に、再度監査申請を行おうにも、推薦人の引き受け手を探すのは不可能に近い。

ベリアは、渋々監査の継続に同意した。

「それでは先程の質問に戻りますが、『予言された時期の到来』は、何によって判断されるのでしょうか?」

ベリアは再び眉を吊り上げたが、ここで怒気を現す事は事態を不利にするだけだと思い直した様で、無理に笑顔を作って答えた。

「時期は、それぞれの詩自体に記されております。」

「私が見る限りでは、具体的な日時に言及している物は無いようです。」

ケイは穏やかに指摘を繰り返す。

「我等が偉大なる大導師は、その様な無作法な事はなさいません。もっと洗練されたやり方でお示しになります。」

ケイは軽く頸を振り、不同意の旨を示しつつ訊ねた。

「具体的な日時を示す事が可能なのにそうする事が無作法であるというお話は理解できませんが、とりあえずその前提を受け入れるとして、どの様な方法で提示されているのですか?」

べリアは、言質を取られない様に警戒しつつ答えた。

「それは、然るべき知識を持つ者達が、注意深く読む事で見出だせるのです。」

お前じゃ無理だ、と言いたいわけだ。

「そこまで難しいのであれば、出版して広く公開する意味があるとは思えませんが。」

ケイの指摘に、ベリアは胸を張って答えた。

「現実に、一般の読者の方々からも、予言の成就に関するご連絡を多数頂いております。」

数字が出ない話なら自信たっぷりに語れるんだな、とケイは苦笑した。

成就に関する連絡の具体的な件数を訊ねたらまたはぐらかされるのは明らかなので、その点は脇に置いて本題に入る事にした。

「それでは、具体的な的中事例に関する検討に入りましょう。過去10年分の的中事例をお願いしていたはずですが、ご用意頂けましたか?」

べリアは、ようやく自分のターンだと言わんばかりに声を張り上げて言う。

「勿論ですとも。こちらを御覧下さい。」

そう言うと、若い女が大きな紙を巻いた物を脇に抱えて、舞台袖から出て来た。

女は舞台中央で立ち止まると、もう一人の女が出てきて、二人で手早く横長の紙を広げて、壁にピンで止めた。

それは、横2列の表形式で上列に予言詩が記入されている。

下列には該当する事象が記入されているのだろうが、その上から紙が貼られているため、記載内容は判らない。

その紙は全て右上隅がつまめる様に折り返してあるので、すぐに剥がせる様にしてあるのだろう。

随分と手の込んだ事だ、とケイは苦笑した。

ベリアは、その表に歩み寄ると、いつの間に取り出したのか、指し棒を手に自信たっぷりの笑みを浮かべ、最初の詩を指して言った。

「まず、この詩を御覧下さい。第一章137篇です。」

ケイは、手元の本を開き、指定されたページを探す。

あらかじめ栞が挟んであったページ(栞は少なく見ても20枚以上挟まれている)の一つだったので、すぐにそのページは見つかった。

ベリアは、芝居がかった口調で、朗々と読み上げる。

「彼女は災厄を持ちて来たれり。そのうちなる密やかな悪魔は目に見えずして、人々の間に広まれり。彼女が笑みを持ちて、そのうまき糧を手づから配ればなり。ああ、然してその糧のうまきは偽りなり。」

一呼吸おいて、ベリアは悠然と続ける。

「この詩が何を指しているかは、誰でも判る事でしょう。」

客席から声が響いた。

「カラミティ(災厄)・メアリだ!」

続けてどよめきが起こり、さらに賛同の声が次々と挙がった。

「ご明察です。」

ベリアは、自慢気に胸を反らして一枚目の紙を剥がした。

そこには、『カラミティ・メアリ事件 2167年』と書かれていた。

「これはメアリ・オルソン、一般にはカラミティ・メアリもしくは腸チフス・メアリとして記憶されている女が起こした疫病の大流行です。彼女は、悪性の腸チフスに感染しながら本人は全く発病しないという、いわゆる『健康保菌者』でした。彼女は大変な料理上手で、特にアップルパイやキドニーパイといったパイ類が得意でした。それらをしばしば近所でふるまったために、腸チフスの大流行が惹き起こされたのです。3度目の大流行で彼女が感染源と確認され、その家屋もろとも焼却されるまでに、100人近い犠牲者が出ました。」

べリアは、観衆に事件を思い起こさせる様に、間を置いてから続ける。

「『裡なる密やかな悪魔』とは、メアリーの体内に巣食うチフス菌の事です。また、『美き糧』は 勿論彼女が作ったパイを指しています。実際彼女のパイは大変美味しかったそうですから。さらにご注目頂きたい点として、彼女のあだ名である『カラミティ(災厄)』が、詩の冒頭ではっきりと唱われている事を指摘しておきましょう。」

どうだ、と言わんばかりのベリアの表情に、会場はやんやの喝采に包まれた。

ケイは、歓声が鎮まるのを辛抱強く待っていたが、ようやく声が通る様になった所で訊ねた。

「ところで、そのメアリーは、どちらの出身ですか?」

ケイの質問の意図を掴みかねたベリアは、訝しげに答えた。

「当地で生まれ育ちましたが、それが何か?」

べリアの疑念を無視して、重ねて訊ねる。

「では、その事件までにどこかに移住された事は?」

意図の掴めぬまま、多少の苛立ちを示しつつべリアは答えた。

「私の知る限りではありませんが、それがどうかしたんですか?」

必要な情報は全て引き出したので、ケイは種明かしをする。

「いや、その詩によれば、メアリーは災厄を持って『来た』訳ですが、一体何処から来たんだろうと思いまして。」

ベリアの顔が、再び紅潮した。

「だから、それはあ・・・」

怒りに任せて『揚げ足取り』と言いかけたが、先程のやり取りを思い出して、すんでのところで思い止まった。

やがて、大きく息を吸うと、怒りを抑えた声で言った。

「 『来た』が、そんなに重要な言葉なんですか?その程度の事はどうでも良いでしょう。」

ケイは、ここぞとばかりに追い討ちを掛ける。

「それでは、詩の中のどうでも良い言葉と重要な言葉は、どうやって区別するんでしょうか?」

ベリアは、半ばやけ気味な調子で答えた。

「いや、これは失言でした。大導師の詩にどうでも良い言葉なぞあり得ません。あの『来たれり』にも、勿論重要な意味があります。」

こういう反応は予測して居なかった。

「というと?」

べリアは、嘯く様に言った。

「『来た』という言葉は、『行った』の対義語ですから、『何処へも行っていない』事を示している事は明らかではありませんか。そうでないと仰るのであれば、監査上の用語では、『来た』に『行った』という意味があるとでも?」

いやはや、ここまで酷い詭弁は滅多に見られない。

この態度では、この点をこれ以上突っ込んでも得るものはないと判断したケイは、次に進む事にした。

いずれにせよ、壁に貼られた予言詩は、まだ10以上もある。

一つ目でこれなら、残りも大差はあるまい。

ケイ自身も、この不毛なやりとりに嫌気が差して来ている事でもあるので、ここで切り札を出す事にした。

ケイがバックパックから、二冊目の本を取り出すのを見たベリアは、怪訝そうな表情になった。

ケイは本を開き、これまた沢山挟んである付箋から、素早く現在テーマとなっている詩を見つけ出した。

「ここにあるのは、『予言の書』の2166年版です。」

その言葉に、ベリアは青ざめた。

「この詩に出てくる人物ですが、2166年版では二箇所共に『彼』となっていますね。」

先程の空元気はどこかへ吹き飛び、しどろもどろに答えた。

「い、いやそれは・・・その、誤植でして、その後訂正されました。」

ケイは、すかさず次の一太刀を浴びせる。

「そうですか。次に『密やかなる悪魔』は、同じく2166年版では『密やかなる悪意』ですが、これも誤植ですか?」

最早、方向転換の効かなくなったべリアは、同じ答を繰り返すしかない。

「も、勿論その通りです。」

ケイは、更に一歩踏み込む。

「その次の『美き糧』が『善きたから』なのも?」

どう考えても無理のある弁解だとわかっていながら、べリアは、同じ型で受けるしかなかった。

「その通り。誤植ですので全て訂正されています。その版は特に誤植が多かったのです。」

ベリアは、完全に開き直った。

「『悪魔』と『悪意』、『糧』と『財』を取り違えるものでしょうか?」

最早、何も言い様が無いが、それでも沈黙は自供と同じである事を理解しているべリアは、必死に喋り続ける。

「そういう間違いは勿論あるべきではありませんが、中々難しいものです。」

頃は良しと見極めたケイは、一気に間合いを詰めた。

「しかし、現在の詩は『女が意図せずに疫病を広めた』様に見えますが、2166年版の詩は『男が意図的に詐欺を働いた』と解釈する方が自然でしょう。果たしてこの詩だけで四箇所もの誤植が起き、しかも、その誤植の結果が、きちんと意味の通る別の文章となる確率とは、どの程度の物なのでしょうか?むしろ事件が発生してから、冒頭の『災厄』という言葉に着目して、事件に適合させるために詩を改竄した、と考える方が説得力があるのではありませんか?」

その言葉に、ベリアは目をむいた。

「我が大導師を疑うのですか!」

ベリアが大声をあげると、観客が一斉に罵声を浴びせたが、ケイは全く怯む事なく答えた。

「それが、監査です。」

ベリアは、突然不敵な笑みを浮かべた。

「改竄だと言うのであれば、その証拠を見せて頂きましょうか。まさか証拠も無しに告発できるとお思いではありますまい?」

窮余の策ではあったが、ケイが誘いに乗ったと判断して、反撃に出てきたのだ。

「私は、改竄の可能性を指摘しただけです。」

ケイは取り合えずその太刀を受けてみた。

「証拠が無いのなら、大導師に対するこの重大な侮辱に関して謝罪願います。」

ベリアは、ここを切所とばかりに、かさにかかって斬り込んで来た。

ケイは、ベリアの振りかぶった太刀を軽く受け流した。

「貴方は、『誰が』監査を実施しているのか、お忘れの様ですね。証拠を出す必要があるのは、貴殿方の方です。これが改竄でないという証拠を示すのは、簡単でしょう。 」

この指摘にベリアは、天を仰ぎ右手で目を覆うと、大袈裟に嘆息した。

「おやおや、なんとこの監査官殿は『悪魔の証明』もご存知無いらしい。」

『悪魔の証明』とは、『ある事象が存在しない』という命題は論理的に証明不能である事を示す言葉である。

鮮やかな逆転勝利を手にしたと信じているべリアの声は、すっかり自信を取り戻している。

「いえ、貴方が証明すべきなのは、これが『改竄でない』事ではなく、『誤植である』事です。それは可能だし、極めて簡単です。貴方は先程2166年版は誤植が多いと仰いましたので、それ以前の版で、該当箇所がご説明の通りになっている物を示して頂ければ、それで良い訳です。」

ケイの攻撃に、ベリアは言葉に詰まり、しばし沈黙した後に絞り出す様に言った。

「あー、何と言いますか・・・その詩の誤植は、その版以降に初めて発見された物で、それ以前の版も全てその様になっております。」

ケイは、ここで事実を明確にしておく事にした。

「つまり、誤植であるという貴方の主張に、根拠は無い訳ですね。」

べリアは、苦しそうに答えた。

「それはそうかもしれませんが、改竄についても根拠は無いという点は同じでしょう!」

状況を不利とみて、泥仕合に持ち込む作戦に出たのだ。

全く、いつもの事ながら、この手合いの切換の速さには呆れる他はない。

「そうですな。ただし、改竄ならば現状に対して簡単に説明がつき、特に矛盾も発生しないのに対して、誤植であれば、この詩だけで、予言の中核をなす言葉に4つもの誤植が発生して、その結果詩の内容が全く別物になってしまった上に、それが2年以上も見過ごされていた事になりますが。」

ケイは、更に斬り込む。

「だったらどうだと言うんですか?そんな事はあり得ないとでも?」

自縄自縛の結果陥ってしまった不利を挽回する手立てが見付からないべリアは、卓袱台返しに出た。

「逆にこちらがお訊ねしたいのですが、それは十分にあり得る事だというご見解と見なして宜しいですか?」

ケイは、勝利への最後の地均しに掛かった。

「勿論ですとも。我が大導師は、不正な事はなさいません。従って、それ以外の答はあり得ません。」

一度そう言ってしまった以上、もうその線で押し通す他は無い。

その答に、ケイは満足げに頷いた。

「大変結構です。これで、この本が検証に耐えうる信頼性を備えていない事に関しては、双方の意見の一致が得られました。」

ケイの発言に、ベリアは激しく狼狽した。

「ちょっと待て!何の戯言だ!」

後は、引導を渡すだけである。

「こんな短い詩一編で四箇所もの誤植があり、意味が全く変わってしまっているのに、それが2年以上も発見されない訳ですから、編集作業もその後の校正作業も共に信頼するに足る精度を備えていない事は明らかです。従って、他の詩についても、その信頼性は同様であると考えるのが常識的判断でしょう。」

べリアは、懸命に反論の糸口を探る。

「そ、それはたまたまその詩に問題が集中しただけで、他の詩に問題はない!」

ケイは、穏やかに退路を絶った。

「それでは、他の詩も同様に検証してみましょう。」

べリアは、大して暑い訳でも無いのに、汗だくになっている。

「い、いやその版は特に問題が多かったので、その版で検証するのは適切ではありません。」

そろそろお仕舞いにしようと、ケイは防戦に大童となっているべリアの背後に回り込んだ。

「そうですか。では、これより古い版の本を出して下さい。それで検証しましょう。」

ベリアは黙りこんでしまい、会場からも声は挙がらなかった。

「さて、ところで次の的中事例の検証は、どうしますか?」

ベリアは、うつ向いたまま石像のように無反応である。

ケイが2166年版の本を持っている事を示したので、もう後はどの詩を挙げても、論破されるのは目に見えている。

「どうしました?」

ケイが再度声を掛けると、それまで沈黙を続けていたディクソンが、悲しげに言った。

「もう良い、ベリア。これまでとせよ。」

その声に、ベリアははっとして顔を上げた。

ケイが問い掛ける。

「それは、申請の取り下げと見なして宜しいですね。」

ディクソンは、重々しく頷いた。

「それで結構。」

愕然としたベリアが、何か言いかける仕種をしたが、言葉にはならなかった。


大ホールを後にしたケイは、市庁舎のロビーで、報告書を作成するためのメモをまとめていた。

普段ならホテルに戻ってからやるのだが、今回は少しでも早くこの街を出たかったのだ。

まとめ終われば、その足で駅に向かう積もりであった。

そこへ、愛想笑いを浮かべたベリアがやって来た。

「アマギさん、少し宜しいですか?」

ケイが顔を上げると、ベリアは言った。

「この後の事について、ご相談致したいのですが。」

「本日の監査結果については、いかなる『ご相談』にも応じかねます。」

ケイはキッパリと言ったが、ベリアは揉み手をしながら言った。

「いえ、その事ではなく、次回の監査についてのご相談です。」

「次回?」

この男は、まだ諦めていない様だ。

「ええ、今回のご指摘を糧として今後の検証作業に活かし、検証の精度を上げて行く事で、次回こそは必ずやご満足頂ける監査としたいと存じますので、そのための確認作業にご協力お願いできませんか。」

そう言われると、職務上断る訳にもいかず、研究所に同行して、話し合いを行う事になった。

話し合いでは、特にこれといって実のある意見は出ず、ベリアからの質問は、 そのほとんどが言わずもがなといったレベルの物ばかりであったが、数だけはやたらと多く、結局研究所を出る頃にはとっぷりと日が暮れていた。

もう汽車も無くなっているため、ケイはやむを得ず昨日のホテルに向かった。

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