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落ちこぼれ営業マン異世界戦記 ~俺は最強騎士となり12歳のロリ女帝や脳筋女騎士や酒乱巨乳奴隷や食いしん坊幼女奴隷に懐かれながら乱世を生き抜くようです~  作者: 羽黒楓
第一部 第六章

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86 貴族院

 帝城に、皇帝ミーシアが帰ってきた。

 俺たちはそれを帝城の門の外で待っていた。

 帝城の門には大きな十字架が取り付けられ、ヘンナマリが裸で縛り付けられている。

 もう意識は戻ったようだが、諦めたのかぐったりしていた。

 輿(こし)に乗ったミーシアは俺の顔を見るとほっとしたような笑顔になってくれたけど、そのあとヘンナマリの惨めな姿を見て目をそらした。


「エージ、ご苦労様でした」


 ミーシアがわざわざ輿から降りて俺に声をかける。

 そのミーシアに一人の少女が近づき、ひざまずく。

 そしてその左足に靴の上からキスをした。

 皇帝を(せん)(しょう)させられていたセラフィだった。

 衆人環視のもとセラフィがミーシアに服従の姿勢を取ることで、改めてこの国がミーシアのものであることを知らしめたのだ。


「ごめんね、セラフィ」

「……いいえ、私の方こそ……言葉もございません」


 そういってまた靴にキスするセラフィ。


「なるべく惨めにキスをするさ」


 事前にそうセラフィは言っていた。


「そのあとミーシアが……陛下が私を死刑にするとなおいい。そうでなければ国が成り立たない」


 セラフィの言葉は重かったが、俺はそうはさせないつもりだ。

 ミーシアにとって、数少ない友人を、自らの命令で死なせることはどれだけのダメージがあることか。


「エージ、あんたあのヘンナマリをやっつけたんだってね……って、こいつ、こんなことになってんのね」


 (はりつけ)にされているヘンナマリを見てヴェルは微妙な顔をする。

 ヴェルも敵との最前線で戦っている騎士だ。

 いつ自分も同じ目に会うかとでも思ったのだろうか。

 いまだ俺にまとわりついているキッサとサクラを見て、非常に不愉快そうな顔をして、でも、


「ま、しょうがないわね。エージ、ありがとうね、今このタイミングで……みんなが見ている前でセラフィ殿下にミーシアへの服従のキスをさせられたのは大きいわ。もしかしたら死刑にしなくてもすむかもしれない……今日の夜からでも、戦後処理の話し合いが始まるわよ」




 第五等以上の貴族のみが参加できる貴族会議。

 そのさらに上位に貴族院があり、それには第三等以上もしくは皇帝が直々に認めた貴族しか参加できない。

 その貴族院がその日の夜、開催された。

 もちろん、俺は本来ならば参加資格はない。

 だけど、ミーシアの特別なはからいで臨席できることになった。

 貴族院は専制政治をとるこの国で唯一の皇帝のストッパーだ。

 基本的にはもちろんすべてを皇帝が極めるのだが、貴族院で三分の二以上の賛成を得た意見と相違ある政策をとるときは、皇帝は貴族院に対して弁明をしなければならない。

 逆にいえば弁明さえすればなにをしてもいいのだが。

 ただし、皇帝の威信にかかわるし、宮廷内の権力争いもあるので、代々の皇帝はなるべく弁明するような事態を避ける結論を出すのが通例だそうだ。

 参加者はごく少ない。

 第三等以上の貴族は非常に少ないし、今回の反乱で命を落としたものもいたからだ。

 以下が今回の貴族院の参加者だ。


 第一等宰相エリン・ルミシリール・ミカ・カーリアインは死亡が確認された。


 第二等内相 ヨキ・イシリラル・ミキア・ターセルは出席。


 第二等宮廷法術士長 ドリル・ルミシリール・カルラ・リルクは出席。


 第二等蔵相ヒウッカ・ルミシリール・アイネン・アンネレは出席。


 第二等将士 第一軍将軍 ルフィナ・テシラルガン・カーリン・ボールグは東方共和国との戦争中のため欠席。


 第二等将士 第三軍将軍 ラータ・テシラルガン・マディリエネ・レンクヴィストは出席。


 第三等将士 第二軍将軍  リューシア・テシラルガン・ ユーソラ・カンナスは反乱に加わり、戦闘中に死亡。


 第三等騎士 ヴェル・アルゼリオン・レイラ・イアリーは出席。


 第三等騎士 ヘンナマリ・アルゼリオン・オリヴィア・アウッティは反乱の首謀者で捕縛。


 第三等外相エイラ・ルミシリール・サーラスティ・セイヤは遠方のため欠席。


 その他十数人の騎士、貴族は遠方の領地・(しょう)(えん)在住のため今回は欠席。特に第三等には騎士が多いが、通常は自分の領地で独自に政治を行っているので、今回みたいに急な開催には間に合わないのだ。

 ま、今回の反乱鎮圧の功労者はほぼ全員揃(そろ)っているので問題はない。


 そして第五等準騎士 エージ・アルゼリオン・タナカ。つまり俺だ。


 以上。

 本来ならば二十人ほどいるはずのメンバーだが、今回に限っては俺を含めてもたった六人。

 少ないように感じるかもしれないが、本能寺の変のあとの清州会議の参加者が四人だけだったことを考えると多いくらいだ。

 貴族院の会議は、本来ならば帝宮にその場所があったが、飛竜やステンベルギの攻撃によって焼失してしまっていたので、臨時にマゼグロンタワーのセラフィがいた部屋で行うことになった。

 中央に決定者としてのミーシアが座り、ミーシアからそこから官位順に並ぶ。

 最初の一言を発したのは宮廷法術士長ドリルだった。

 彼女は年齢でいえば四十歳くらい、平均寿命の低いこの大陸では結構な年長者だ。

 白髪の混じった黒髪、いかにも魔法使いっぽいローブをみにまとい、いかにも魔法使いっぽい(つえ)をもち、つまりはいかにも魔法使いっぽい()()ちだった。

 おぼろげだけど、たしか俺がこの世界に()(せい)したときも、あの帝座の間にいたように思う。

 そりゃそうか、俺はマゼグロンクリスタルを用いた宮廷法術士たちの力で蘇生したのだから。


「さて、このたびの騒乱、まことに遺憾なことでございました。その総括と後始末をここでせねばなりません。(せん)(えつ)ながら、貴族院の参加歴が最も長いこの私、ドリル・ルミシリール・カルラ・リルクが議長を務めさせていただきます」


 そして、貴族院会議が始まった。

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