表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれ営業マン異世界戦記 ~俺は最強騎士となり12歳のロリ女帝や脳筋女騎士や酒乱巨乳奴隷や食いしん坊幼女奴隷に懐かれながら乱世を生き抜くようです~  作者: 羽黒楓
第一部 第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/122

21 私にしなさい

「あ、そうでした。洗礼の話でしたね」

「ああ、教えてくれ」


 ずいぶんとキッサと話し込んでしまっている。

 今はヴェルが先頭に立って歩き、そこにミーシアがまとわりついている。

 そのあとを、俺やキッサ、それにシュシュがついて行く。

 石畳の大通りは、帝都を脱出しようとする民衆でごった返していた。

 俺と会話しながらも、キッサはキョロキョロとあたりを見回して警戒を怠っていない。


「神々はそれぞれ得意とする法術の分野があるわけですが、産まれたときに決まる加護の神とは別に、自分の意志で神と契約することもあります。洗礼を受け、あらためて神と契約するのです。そうすることで、二系統の法術を身につけることができるのです。私はレパコの神と契約し、闇夜の中や隠れた場所のものも見える暗視や透視の法術も身につけました」

「つまり、その組み合わせで使える法術の種類が増えるわけか」

「そうですね、理論上はほぼ無限だといわれてます」


 もう反乱軍の攻撃はほとんど()んでいる。

 空を埋め尽くしていた魔物たちの姿もまばらになっていた。

 あのどでかい空飛ぶドラゴン、飛竜も今は見えない。

 振り返って帝城の方角を見ると、暗くてよくわからないけど、宮殿の炎はかなり小さくなっていた。

 おそらく、今頃反乱軍たちが帝城になだれ込み、掃討戦に入っているのだろう。

 この国の皇帝、ミーシアがまだ生きていて、帝都からの脱出を図っていることに反乱軍が気づくのは、いつだろうか。

 まだ時間的な余裕はあると思うが、油断はできない。

 キッサは話を続ける。


「暗視・透視と、遠視を組み合わせると……私の場合、体調によりますが、半径六カルマルトほどの索敵範囲があります。一方向だけなら障害物があっても十五カルマルトはいけます。そこまで索敵範囲を広げるとかなり疲れるので、長時間は無理ですが」


 十五カルマルト、つまり十五キロメートルか。

 地平線までの距離は四キロか五キロだったと思う。

 それを考えれば、レーダーとかがないこの世界では、キッサの能力はかなり有用だといえるだろう。

 でも長時間は無理、か。

 法術を一気に使いすぎると死ぬこともあるとか言ってたな。

 無制限に使えるわけではないらしい。

 この世界における法術ってのがどんなものか、だいたいわかってきた気がする。

 でも、もうちょっといろいろ聞きたいことがあるな。


「さっきいた飛竜ってのは、やばい魔物なのか? そもそも、魔物と魔獣ってどう違うんだよ」

「魔物は異世界の一つ、魔界からゲートを抜けてこの世界にやってきた存在です」

「ゲート?」

「はい、大陸の西側にはゲートと呼ばれる異世界に通じる門がいくつかあるのです。あるというだけで、なぜ、どうしてそんなものが存在するのかはわかっていません」

「そこから魔物が湧いて出てくるってことか」

「そうです。魔獣はもとからこの世界にいた動物が、魔物の影響を受けたり魔物と交配して産まれてきたもの。私達ハイラ族がそうしているように、魔獣の方はやりようによっては使役できますが、魔物はこの世界の理がまったく通用しない生き物です。魔物にもたくさんの種類がいますが、その中でも飛竜はかなり上位の存在といえるでしょう。昔、飛竜が一匹、獣の民の国に現れたことがあるんです。そのときは千人を超える討伐隊が組織され、飛竜を殺すことはできたものの、半数以上は戦死、ほぼ全員がなんらかの傷を負ったそうです」

「それが、三匹かよ……」

「何者なのか、まだほとんどわかっていませんが、数十年前に魔王を名乗る者が現れました。奴はこれまでバラバラに人間を襲っていた魔物たちを組織し、戦略的に人間の領土を侵略しようとしています。今回、反乱者は魔王と手を組んだのでしょうね。反乱軍と歩調をあわせて飛竜が三匹も同時に攻撃してくるなど、そうとしか考えられません」


 そんな話をしているうちに、帝都をぐるりと囲う城壁、その北門が見えてきた。

 多くの市民たちが帝都を脱出しようとしている。

 本来なら、夜になると城門は閉じることになっているそうだ。

 だけど反乱という想定外の出来事な上、民衆たちが暴徒化するのを恐れたのか、それとも衛兵たち自身も逃げ出してしまったのか、城門は開け放たれていた。

 その人混みに隠れて俺たちも帝都を脱出する。

 拍子抜けなほど順調だ。

 そのまま、北西の農地にあるというヴェルのセーフ・ハウスへと向かう。

 ヴェルもほっとしたのか、


「うまく帝都を抜け出せたわね。今頃、ヘンナマリは宮殿の焼け跡からマゼグロンクリスタルを探しだそうと躍起になってるだろうし、リューシアも帝城内の掌握で動けないでしょ」と言った。

「マゼグロンクリスタルってそんなに丈夫なのか」


 俺はミーシアの両耳からぶら下がる二つの聖石をちらりと見る。


「ええ。飛竜の火炎を至近距離から受けようが、巨人が思い切りこん棒で(たた)こうが、決して破壊されないわ。なにしろ、国家の秘宝だからね」

「なあ、今回の反乱はヘンナマリが主導しているのか? それとも、リューシアとかいう将軍なのか?」


 俺は青髪ハイレグ騎士――ヘンナマリの顔を思い浮かべながら()く。

 底意地が悪そうな印象の奴だった。

 リューシアとは会ったことがないのでどんな奴かは知らない。


「そうね。はっきりいって、第二軍の将軍、リューシアは帝国で一番ヤバイ性格をしてる。でも、こういう陰謀とか権力には興味がないタイプだった。戦場があって戦う敵がいればそれで満足、っていう性格よ。帝国は東西に敵を抱えていて戦場には事欠かなかったはずだしね。……いいことじゃないけどさ。だから、リューシアがこんなめんどくさい準備が必要な反乱を起こすなんて考えられないと思う」

「じゃあ、やっぱり……」

「うん、ヘンナマリはあたしと同じで地方に領地を持つ騎士なんだけど、権力志向だったし、先帝――つまりミーシアのご母堂様の系統からはちょっと離れたグループに所属していたわ。正確にいうと、先々帝――ミーシアの祖母上様、その妹様のご子孫の家系とつながりが深いの。このあと、だれか傀儡(かいらい)になる皇族を立てて帝位につかせるつもりじゃないかしら。でも、その正当性は今のところ諸侯から認められることはないでしょう。そこは、あんたの言うとおりだと思う」

「皇帝陛下がご健在で、国家の秘宝までこちらの手にあるから?」

「そのとおりよ。だからこそ、あたしたちは何を犠牲にしてでも、ミーシアとミーシアの持つマゼグロンクリスタルを守らなければならない。でもここまで来たら大丈夫よ。まさかあたしたちが生きて帝都を脱出してるなんて思ってもないでしょうし、はっきり言ってあたし、強いから。多少の追っ手だったら余裕で(ちり)にしてやるわ」


 すげえな、この自信。

 まあ確かに、西の塔で始祖鳥に似た魔獣、ゾルンバードを殺した時には、ものすごいスピードの火球をぶつけていた。


「……お前よりも強い奴っていないのか」

「思い上がりじゃなく、……いないでしょうね。もちろん、油断は禁物だけど。でも、戦闘能力だけで言えば……、そうね……マンツーマンで距離十マルトからよーいどんで戦うなら、ヘンナマリだろうがリューシアだろうが八割方勝てると思う。ヘンナマリなんて近づけなきゃなんてことないし、リューシアはちょっと厄介だけど対個人の戦闘力で言うならあたしの方が上のはずよ。それ以外の雑兵だったら話にならないわね」


 八割、か。

 安心していいのかどうか、微妙な数字だな……。


「エージ、あんたの言うとおりにしてよかった。あの時、ミーシアに自害させてたら……。馬鹿なことをするところだったわ。エージのおかげで頭が冷やせた。感謝してる。あと、あのとき蹴ってごめんなさい。痛かったでしょ?」


 あれ、結構素直なんだな、こいつ。

 蹴られたみぞおちはまだ痛い。

 理不尽暴力だと思う。

 だって俺はヴェルの裸を隅から隅までじっくりと堪能したかっただけなんだぜ?

 少なくともピンク色の下着姿はガン見させてもらったしな!

 たったそれだけのことで蹴り飛ばすなんて……。

 見ても減るもんじゃねえし、着替えを見られたくらいで女の子が男を蹴り飛ばすなんて!

 ……うん、暴力はよくないが、理不尽ではないな。

 どっちかというと、俺が悪いような気がしてきた。


「あれは俺も悪かった。ま、これからはなるべく殴ったり蹴ったりはよしてくれ」

「了解よ、『なるべく』殴ったり蹴ったりしないように努力はするわ」

「……うん、頼むぜ……」

「あ、見えてきた、あそこよ」


 見ると、城壁のつもりだろうか、石を積み上げた粗末な壁で囲まれた集落がある。


「まあ実は資金を迂回(うかい)させてばれないようにはしてるけど、この集落ごとあたしが面倒みてるようなもんだからね。いろいろ便宜を図ってやってるし。あ、それは皇帝陛下には秘密なんだけど。まあでもどっちかというと赤字だし、いいでしょ」


 などと言うヴェルの顔を、じっと見上げるミーシアの黒い瞳。

 秘密も何も、目の前で暴露しちゃってるじゃねえか。

 ロリ女帝陛下はぷうっと(ほお)をふくらませて、


「皇帝直轄地で許可無く活動するのは法で禁じられているはずです。あとで罰を与えますよ、ヴェル・ア・レイラ」

「これはこれは申し訳ございません、陛下。どのような罰を?」

「ムチ打ち一〇回……」

「ムチ打ち……ですか」

「を、私にしなさい」


 はいはい、そのオチは見えてましたよ!

 そんなわけで俺達は、集落の端にある農家にお邪魔することにしたのだった。

  


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


お読みいただきましてありがとうございます。

もしもお気に召したならば 評価ブックマーク感想 をいただけると嬉しいです。





小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ