14 悪名
サクラがとんでもねえことをいいだしやがった。
「剥くって……」
「あ、はい、つまり全裸にして縛って辱めながら傭兵ギルドに戻りましょう」
「悪趣味だな……」
俺がそう言うと、キッサもあまり乗り気でないようすで、
「それはターセル帝国でよくやる風習……この獣の民の国でそんなことをすれば、奇異な
行動に見えます」
「あ、はい、だからこそやるんです、今は私たちは目立たなければいけないはずですよ」
サクラが頑強に主張する。
「おいおい……お前だってリューシアのやつに夜伽奴隷として働かせられて嫌だったんだろう? こいつらを奴隷として連行するのはいいとして、なんでそのお前がまた奴隷を辱めるようなこと言い出すんだ?」
「だって、普通に奴隷として連行したら、傍から見たら私もこの人たちも同じ奴隷じゃないですか! 私はもうずっとご主人様のために働いてきたのに……」
うわあ。
同じ奴隷扱いじゃあ、やだってのか。
奴隷根性ここに極まれり、だなあ。
うーん、しかし目立つということを考えれば……。
ちらりと気絶している盗賊たちを見る。
全員ハイラ族で、白い髪に白い肌。
こいつらを裸に剥くってか……。
なんか、かわいそうな気もするが……。
と、そこにイーダが、
「私の村は……こいつらみたいな盗賊に襲われて、作物を全部奪われた……です……。それで私の実家は困窮した……です。だから私は私を奴隷として売った……です……」
憎しみのこもった目で盗賊を見る。
「こいつらは……人を平気で殺してきたような奴らだ……です。私は殺してやりたい……です」
なるほど、イーダが自らを奴隷として売ったのには、そういう事情もあったんだなあ。
ま、キッサもサクラもイーダも俺の奴隷なわけで、奴隷が何を言おうと俺が全部を決めるんだけどさ。
……人を平気で殺してきたような奴ら、か。
ギルドで聞いた話だと、実際こいつらはかなりの殺人を犯しているはずだ。
かと言って、イーダの主張通りに殺して耳を取る、ってのは俺はやりたくないし。
だが普通に連れて帰っても、こいつらは奴隷として傭兵ギルドからどっかの奴隷商に売られることになる、キッサたちと同じ立場になるに過ぎない。
罪もない人のものを奪い、殺すようなやつら、ただそれだけですますのもなあ。
…………やるか。
「キッサ、シュシュをちょっと見えないとこに連れて行ってくれ」
シュシュはまだ九歳だ、こういうシーンを見せるのもあまり気が進まないからな。
俺は倒れている盗賊の一人に近づく。
人殺しにしてはなかなか顔立ちが整ったやつだな。
「う……うう……うぐぅ……」
苦しいのか、うめき声を上げているそいつの服に俺は手をかけた。
「サクラ、ナイフを貸してくれ」
「あ、はい」
ナイフを手に持った俺は、盗賊の襟元に刃をあてると、一気に衣服を引き裂いた。
「うぐぅ……な、なにを……」
おっと、もう意識が戻ったのか。
まだ身体の自由はきかないみたいだから今のうちにやっちまおう。
乱暴に盗賊の服をはぎとる。
ぷるん、と大きな胸が露になる。
たわわなメロンみたいだ、すげえでけえな、ハイラ族って巨乳族なのか?
いや、でもハイラ族のハーフであるイーダはちっぱいだしなあ。
盗賊のズボンも同じようにナイフで切り裂く。
「や、やめ……やめてくれ……謝るから……」
「殺されて耳を取られないだけラッキーだったと思ってくれ」
俺はそういって作業を続ける。
全裸にされた盗賊は、
「うう……くそ……や、やめ……」
とうめいているが、まだ身体が動かないらしく、生まれたままの姿を俺たちの前に晒している。
そこにサクラが切り裂いた衣服をよじって紐状にして、盗賊の手を後ろ手に縛り始めた。
「あのお、十人もいますので、急いでやりたいです」
縛られ、無理やり立たされた盗賊は涙をポロポロ流しながら顔を真赤にしてうつむく。
「悪かったよお……勘弁してくれよお……許してくれよお……」
考えれば、きっとこいつらも食い詰めて盗賊になったんだろう。
そう考えればかわいそうに思わないこともないが、しかしやはり、盗賊なんて稼業に手をだすのは許されるべきことじゃあ、ない。
すまんな、残りの一生をお前らきっと強制労働の奴隷として過ごすことになる。
「サクラ、イーダ、手伝ってくれ。こいつらを全員全裸にして縛り上げるぞ」
それには結構時間がかかった。
何しろ十人もの女の服を剥ぎ取り、縛り上げるのだ。
「あのお、どこかの町で奴隷用の首輪も買っていきましょう、こいつら全員を鎖でガチガチにつないでやれば逃げることもできないと思います」
なぜかサクラが生き生きとしてるぞ。
うわーこえー。
こいつ、奴隷根性だけじゃなくて相当なSっ気もあるみたいだぞ。
「……サクラ」
「あ、はい?」
「その場でおすわりしろ」
「? あ、はい……」
言われた通りに犬みたいにおすわりするサクラ。
「その場で三回まわってワンと鳴け」
「?? あ、はい……ええと、こうですか? …………わん」
うむ、全然意味のない行動だったけど、とりあえずサクラは俺のいうことならなんでも聞くな。
サクラが見せた嗜虐性にちょっと俺はびびったのだ。
「……サクラ、俺の支配下にあるならいいけど、でも俺の武力や権力を背景にして勝手なことはしないようにしろよ」
「……あ、はい、もちろんです」
リューシアみたいなサイコパスに夜伽奴隷として育てられたからこうなんかな、こいつ。
……いつでも自由民にしてやるとはいったけど、サクラはしばらく俺の手元にいた方がいい気がしてきたなあ。
おとなしくて従順なだけのやつかと思ったけど、やっぱり女ってやつは何が本心かわかりづらくて怖いわ。
ところで、十人の女が裸で縛られてる、っていう光景はなかなか……なんというか、悪趣味の極みというか……。
リアル乳比べだ、しかしながらみんな俯いて、
「うう……ぐす……ひっく……」
と泣いているっつーのはあれだな、いくら俺が裸の女が好きと言ってもうん、アレだ、ストライクゾーンを外れちゃってますよみなさん。
盗賊たちはみな十代から二十代のハイラ族。
胸はAカップからHカップまでよりどりみどり。
全員がすっぱだかでおっぱいをぷるんぷるんさせながら鎖でつながれ、あるものは暗い顔で歩き、あるものは咽び泣きながら歩く。
前から見れば乳比べ、後ろから見ると尻比べ。
女の子のお尻が十個もならんでいるのを見るのはなかなか壮観ではある。
首都グラブ市への道のりは歩きでおおよそ三日かかった。
そのあいだ、十人もの若い女性を強制羞恥プレイ。
これじゃあ、どっちが悪人だかわかりゃしねえな。
ま、この国じゃあ、明らかな重犯罪者を捕らえれば自分の奴隷にできるらしいし、今回は傭兵ギルドからの正式な依頼でやってることだから合法ではあるらしい、けどな。
ただ、依頼からほんの数日で十人の盗賊を全員捕らえ、裸で街中を練り歩きさせながら傭兵ギルドに凱旋したおかげで、俺たちの悪名はあがったみたいだ。
……って、悪名かよ!
おかげで傭兵ギルド内でもかなりの有名人になれたけどな。
ほんとは名声を稼ぎたかったんだけどなあ……。
「あの悪いお姉ちゃんたち、裸で泣いてたね……。かわいそうだね……」
シュシュがぽつりと漏らした一言に胸が痛むなあ。
ま、今回ばかりは殺さなかっただけましだと思ってもらうしかないけどな。
しっかし、こんなこと繰り返してほんとに傭兵ギルドマスター、タニヤ・アラタロと会える日がくるんだろうか。




