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プロローグ
高校三年生の秋、私は見てしまった。
それは彼女と歩いていた時のこと。
私たち二人は帰り道をいつものように歩いていた。
黒塗りの車、少しの警戒心。
通り過ぎようとしたとき、窓が開いた。そこから顔を出したのは、まぎれもなくあのおじさん。
彼が用事があるのは、私に決まっている。
でも、おかしい。こんな夕方にあの人が会いにくるはずがない。
まぁ、いい。この人が何の用で来ようが、かすみには近づかせない。
そう思っていた。
私の大好きな、彼女の口から、
「お父さん」
と、聞くまでは。