一話―夢―
――の部分は夢の中で一人称となっていますが、それ以降は基本三人称構成となります。
(はぁ......またか......)
少年は深い溜息を吐き、流されるままにその景色を眺めていく。
◇◇◇
――辺りを見渡すと夕日は半分ほど沈み、街灯がぽつぽつと灯り始めていた。
――そんな時間に俺は急ぎ足で歩いていた。
――早く帰って、母さんの唐揚げを食べたかったからだ。
――「じゅるっ……やっべ」
唐揚げを思い浮かべているうちに、口の端から涎がこぼれそうになり、慌てて手の甲で拭った。気持ちを切り替え、家路を急ぐ。
――大通りを歩いていると、右手に脇道が見えた。そこを抜ければ家まで近道のはずだ。
――少し暗いが、まぁ大丈夫だろう。
鼓動の速さを無理やり気にしないようにして、俺は小道へと足を踏み入れた。
◇◇◇
――歩き進めると、前の方から声が聞こえた。
――女の子の声……?
気になってさらに歩を進めると、二つの人影が見えてきた。
――一人はむさ苦しい中年の男。
――もう一人は、その手を引かれるようにしている少女だった。
白く細い腕。今にも折れてしまいそうなその腕を、男が掴んでいる。
――……胸がざわついた。
目を凝らすと、少女は自分と同じくらいの年頃に見える。顔を歪めて苦しそうにしていた。
――気付けば、俺は立ち尽くしていた。
足が動かない。頭では「止めなきゃ」と叫んでいるのに、身体が言うことを聞かなかった。
そんな時、少女と目が合った。
――きれいな瞳だった。
涙で滲んでいるのに、どうしてか目を逸らせない。
胸の奥が熱くなる。恥ずかしいのに、離せなかった。
「……たすけて……」
かすかな声が届いた瞬間――俺は。
◇◇◇
「ん……あぁ……朝か」
少年は目を覚ました。
ここ最近、毎晩同じ夢を見る。
自分の意思では何もできないのに、夢の中の感情だけは鮮明に胸へ流れ込んでくる。
正直うんざりだが、ただ一つの救いは――
あの少女が、見たこともないほど可愛いということだった。
もっとも、年下すぎて恋愛対象ではないのだけれど……。
ベッドの上でそんなことを考えていると、視界に目覚まし時計が映る。
「……うわっ! やばいやばい!」
時間を確認するなり飛び起き、慌てて着替えを済ませると、少年は学校へと走り出した。
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稚拙な文章でわかりづらい部分が多々あるかもしれません。
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