俺はぬこですがなにか ― 幕間 ―
少々流血表現があります。少しでも苦手な方は***以降飛ばして次の話に進んで下さい。
俺は馬鹿みたいに馬鹿じゃない
(計算高く、必要とあらば感情さえ残酷に切り捨てる)
俺は馬鹿みたいに無邪気じゃない
(目的のためなら利用してやる。利用される方が悪い)
俺は馬鹿みたいに優しくない
(優しくして何が楽しい?
あぁ、半端にいびり殺すのは愉しいな)
俺は馬鹿みたいに弱くない
(鵺の声をうまく利用できるのは俺だ。
死を呼ぶ黄泉鳥の声は、な)
それを俺は特に不満に思ったことはない。
***
自分の足元に転がるモノとなった血肉。
それを俺は見下ろした。口の周りにはべったりと血がこびりついている。以津魔天という怪鳥のものだ。特に害を及ぼすわけではない。ただ集団で来ると厄介で死臭を好む妖怪。
死を嗅ぎつけると言う意味では、ある意味俺達と同種と言えるかもしれないな。
「悪く思うな、こちらも飢えているんだ」
恐怖に怯えたまま硬直した瞳が宙を見ていた。すでに死んでいるそれを一舐めすると、齧り付いて音を立てながら咀嚼する。
自然と笑みがこぼれる。狩りは愉しい。獲物を追いかけまわし追いつめて喰らうのは。今日はついている、割といい妖力を持つ奴を狩ることができた。こうしたのはなかなかありつけない。
一通り食事を終えると意識をツムリに向けた。ツムリは俺の中で狩りの衝撃のあまり放心していた。しかし笑っていた。血と肉を喰らう快楽が強すぎて、笑っていた。
「ピオオオオオオオオオオオ!」
一際高く俺は鵺の声で鳴いた。すると妖力で俺についていた血を含めた一帯の残骸や血の海が消えた。この惨状がまるで嘘みたいに血の匂いさえもなくなっていた。
「さて……」
俺は満たされた喉の渇きに笑みを浮かべると、再び意識をツムリに向けた。そして仕上げに馬鹿の記憶にそっと、手を入れる。
馬鹿ツムリにとってこのことは綺麗さっぱり、なかったことにするために。