第3話:楽器はともに育つもの
前書き:楽器はともに育つもの
いずみの完璧な音と、ちえのぎゅっと集める音——二つの音が出会うと、世界は少しだけ広がる。第3話は、ちえが見つけた「詩的絶対音感」が楽器と息を合わせて育っていく物語です。いずみのピアノは完成をめざして研ぎ澄まされ、ちえのエレクトーンは失敗と発見を繰り返しながら新たな機能をひらいていく。対照する歩みのなかで、ライバルはやがて最高の相棒へと変わる。静かな午後、二人が互いの楽器を見つめ合い、違いを認め合う瞬間――そこに育つのは競争でも勝敗でもなく、音がつむぐ友情と約束です。さあ、楽器たちのささやきに耳を澄ませてください。
(穏やかで少し神秘的な、楽器の音色が際立つBGM)
ナレーション(神様A):
「ちえちゃん、自分だけの『詩的絶対音感』に気づいたね!」
ナレーション(神様B):
「諦めない心って、本当にすごいパワーだ!でも、その力を発揮するには、相棒の協力も必要だぞ!」
ちえは、自分の新しい音感にワクワクしていた。毎日、ELB-02の前で、音に込められた感情を読み解き、自分なりの物語を音にしていく練習に夢中だった。
ある日の午後、いずみがちえの部屋を訪ねてきた。いずみは、いつも完璧でクールだが、ちえの新しい音楽に興味を持ったようだ。
いずみ:
「ちえ。あなたの音、前と違うわね。少し…賑やかだけど、楽しそう」
ちえ:
「いずみちゃん!ありがとう!音には、いろんな気持ちが詰まってるんだって気づいたの!」
いずみ:
「気持ち…。私のピアノは、常に完璧な音を奏でるわ。気持ちで音がぶれてはいけないの」
いずみの言葉に、ちえは少し考え込んだ。完璧な音と、感情の音。どちらも、それぞれの正解なのかもしれない。
ちえ:
「いずみちゃんは、どうしてそんなにピアノが上手なの?」
いずみ:
「私は『始まりの神』。物事の完璧な始まりを司る。だから、音も始まりから完璧なの。そして、私の楽器も私に合わせて成長するわ」
いずみは、自分のピアノについて語り始めた。
いずみのピアノ(CFX)(荘厳な声、ナレーションで代弁):
「私は、いずみ様とともに『YAMAHA CFX』という究極のコンサートピアノへと進化する存在。私の成長とは、無駄を削ぎ落とし、より硬質で、絶対的な音像を確立すること。いずみ様の完璧な絶対音感に応えるため、常に最高の響きを追求するのです。」
いずみのピアノは、最初から完成を目指す、いわば「絶対的な存在」だった。
ナレーション(神様A):
「なるほど!いずみちゃんの楽器は、最初からゴールが決まってるんだ!」
ナレーション(神様B):
「それに対して、ちえちゃんのゼロツーは…?」
ちえは、自分のエレクトーンを見つめた。ELB-02は、いずみのCFXのような威厳はない。カラフルで、親しみやすいデザインだ。
ちえ:
「ゼロツーは、最初から完璧じゃなかった。私と一緒に、失敗したり、新しい音を見つけたりしながら、育ってきたんだよ」
ELB-02(少しコミカルだが、優しい声):
『そうだよ、ちえ!僕の成長は、ちえの成長と一緒なんだ!ボタンの数も、出せる音色の数も、これからどんどん増えていくんだから!』
ちえの楽器は、彼女の「収束」の力と同期して、段階的に機能を開放し、進化していく「成長する存在」だった。
いずみ:
「興味深いわ。私のピアノが『完成』を目指すなら、あなたのエレクトーンは『進化』を目指すのね」
いずみは、少しだけ微笑んだ。二人の間には、ライバルでありながら、互いの違いを認め合う友情が芽生えていた。
ナレーション(神様A):
「始まりの神と、収束の神!二人の楽器は、それぞれの道を歩み始めたぞ!」
ナレーション(神様B):
「楽器は単なる道具じゃない。持ち主と一緒に育つ、最高のパートナーなんだね!」
ちえは、ELB-02をぎゅっと抱きしめた。
「いっしょにがんばろうね、ゼロツー!もっともっと、いろんな音を見つけようね!」
ちえの心は、希望でいっぱいだった。彼女と楽器の長い旅は、まだ始まったばかりだ。
(穏やかなテーマ曲が流れ、フェードアウト)




