4
朝、五時。まだ薄暗い中、僕は目が覚めてしまった。
電気ストーブを付けっぱなしにしていたせいか、空気は温い。
僕は全裸のまま立ち上がった。
乱れた布団を見下ろす。自分の顔が熱くなるのが分かった。それは――昨夜の、破廉恥な一人遊戯の遺構だ。一人旅の寂しさを慰めるため創り出してしまった、妄想劇の、その自慰行為の跡だった。
僕は裸の身に浴衣を巻き付け、その上に褞袍を着込むと、茶色い旅行鞄から、タオルと歯ブラシを手にし、廊下に出る。
共同の水場に来ると、洗面器を一枚借り、水道から水を注いだ。氷のような冷たさだった。
水面に、僕の顔が写った。
素直な、肩までの黒髪、白い肌。澄んだ琥珀色の瞳。柔らかな鼻梁に桜色の唇。細い首筋――
小首を傾げる。髪の毛がすんなり揺れる……。
夢香だ。いかにもウブそうな、美しい少年の姿絵だった。
「……」
この顔の薄皮一枚、その裏側がどんなものか、誰も知る由もないこと。
そう思った瞬間だった。
いきなり其奴が――見透かしたように顔を歪めて――嗤ったのだ!
あっと思って上を見やると、蛇口の先が透明に膨らみつつある。
水滴が、落ちた――――。
<了>