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 朝、五時。まだ薄暗い中、僕は目が覚めてしまった。

 電気ストーブを付けっぱなしにしていたせいか、空気は温い。

 僕は全裸のまま立ち上がった。


 乱れた布団を見下ろす。自分の顔が熱くなるのが分かった。それは――昨夜の、破廉恥な一人遊戯の遺構だ。一人旅の寂しさを慰めるため創り出してしまった、妄想劇の、その自慰行為の跡だった。


 僕は裸の身に浴衣を巻き付け、その上に褞袍を着込むと、茶色い旅行鞄から、タオルと歯ブラシを手にし、廊下に出る。

 共同の水場に来ると、洗面器を一枚借り、水道から水を注いだ。氷のような冷たさだった。


 水面に、僕の顔が写った。


 素直な、肩までの黒髪、白い肌。澄んだ琥珀色の瞳。柔らかな鼻梁に桜色の唇。細い首筋――

 小首を傾げる。髪の毛がすんなり揺れる……。

 夢香だ。いかにもウブそうな、美しい少年の姿絵だった。

「……」

 この顔の薄皮一枚、その裏側がどんなものか、誰も知る由もないこと。

 そう思った瞬間だった。

 いきなり其奴が――見透かしたように顔を歪めて――嗤ったのだ!

 あっと思って上を見やると、蛇口の先が透明に膨らみつつある。


 水滴が、落ちた――――。



<了>


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