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 黒光りする木造りの門。その内側から溢れる黄色く温かな光。

 格式を感じさせる旅館の玄関で、微笑を浮かべた赤い着物の仲居に迎え入れられた。私らは手を繋いだままだった。仲居は少年に一瞥を投げ、納得したように一つ小さく頷く。そのまま、予約した部屋に通してくれたのだった。

 淡黄色のペンダントランプ。畳に炬燵。座布団、座椅子。それと橙色の電気ストーブ。二人とも外套を衣桁に掛けて身軽になると、向かい合わせに炬燵に潜り込んだ。

 制服姿となった彼は正座。私は胡坐だ。

 仲居が差し出す宿帳に記入した後、希望を聞かれたので、食事を先にしてもらったのだった。

 お品書きを頂く――


     ☆ ☆ ☆


 ゆり根の和風ムース


 前菜

  胡麻豆腐

  春菊ともって菊の太白胡麻油

  たたきごぼうの明太りんごおろし

  あさつき岩のり


 お造り

  ホウボウ

  スズキ

  生蛸


 本日の一口

  本鮪の握り寿司

  カステラ玉子


 やりいかの磯辺香り揚げ


 鰤大根


 サーロインステーキ


 麦とろろめし


 鱈のどんがら汁


 香物

  赤カブ

  しなべきゅうり

  青菜漬け


 デザート

  クーベルチュールチョコとバナナのババロア

  抹茶生チョコ

  バニラとフランボワーズのアイス

  麩のフィユタージュ


     ☆ ☆ ☆


 ――私は仲居に追加の注文を告げる。

「先にビイル。そのあと料理だ。一緒に地酒も頼むよ。熱燗でな……」

 畏まりました、と答えた後、女は退室する。さぁ――

 私は正面に目を向ける。それはまるで、裸をくまなく嘗め回すような目付きだったんじゃなかろうか。

 夢香は恥ずかしそうに顔を伏せるのだった。


 フフ……。


 まずは酔わせる。それからは――

「フフフ……」

 夢香が耳まで真っ赤になった。

 私は正直、劣情の笑みが浮かぶのを、どうすることも出来なかったのである。


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