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時間が来て、石油ストーブの良く効いた駅舎の外に出ると、そこは雪国だった。空から雪片がちらちらと、止むことなく舞い下りている。夕刻を迎えようという時分、地面は白く、ほの暗く、覆い尽くされていたのだった。
私は茶色い旅行鞄を持ち直し、ブーツで雪を踏みしめながらバス停に歩く。
標柱の前には既に、ベージュの冬コートをすらりと着た、乗車予定の人が一人、こちらに背を向けて立っている。私はその後ろに並んだ。
前の人に視線が行く。綺麗な黒髪だ。私の目の高さが、ちょうど頭の天辺だな、と思った瞬間だった。その人が振り返った。
美少年だった。
素直な、肩までの黒髪、白い肌。澄んだ琥珀色の瞳。柔らかな鼻梁に桜色の唇。細い首筋――
私を見て、小首を傾げる。髪の毛がすんなり揺れる……。
学校帰りだろうか。何とは無しに見入ってしまった。美少年は顔を上気させ、ばつが悪そうに前に向き直ったのだった。
バスが来た。二人とも乗り込んで、バスは出発した。