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五行の雷火

蝶姫がゆっくりと瞼を上げると、そこには知らない天井。


どこだろうか。


それとも長い夢を見ていたのだかろうか。

いや、今も見ているのだろうか。



「ズキッ」



背中に感じる痛み。

その痛みで理解する。

やっぱり夢じゃない。


だけど自分は生きている。


不思議に思いながらもゆっくりと辺りを見渡す。


割としっかりした部屋であり、ベッドもフカフカ。

だが、王都にいた頃もこんな空間は知らない。


そう思いながらも戸惑っていると急に扉が開かれた。




そして、一人の男が入ってくる。


セミロングの赤い髪に鋭い目。

整った顔をしており、控えめに言ってもイケメンだ。


身長も高くだが細身。

腕の筋肉から察するに筋肉質なのは間違いない。


つまり非の打ち所がない。

そんな完璧な男が入ってきたのだ。


普段他人に興味はなかったが、見れば見るほど相手の容姿が気になってくる。


そんな男と無言のまま見つめ合う蝶姫。




「起きたか蝶姫。 背中の傷はどうだ? まだ痛むか?」


優しく落ち着いた声。

そして、なんだか懐かしい声。



返事をするのも忘れ聞き惚れていると、再び


「おい。 何を呆けている。 相変わらず変なやつだなお前は」



その言葉でハッとする。


そして、思い出した。



「ラ、雷火ライカ?、、、」



そう。この男は昔孤児だった頃、父である国王が拾い育て上げ、今では五行将軍とまで呼ばれるようになった男の一人だ。


そして、2歳しか離れていなかった為に、小さい頃はよく一緒に遊んでいた。


今、蝶姫が16歳という事は雷火は18である。


最後に会ったのは8年前。

つまり8年振りに出会いだったのだ。


成長期ということあり、全く気付かなかった。



「あぁ、ようやく思い出したか。 それで傷の方はどうだ? 治療はしたし、傷跡も残らないと言っていた」



確かに、最初よりは痛くないし包帯が巻かれていた。



「あ、ありがとう、、、」



素直にお礼を継げる蝶姫。


普段からありがとうやごめんを言えない人間であったが、事件以降何度も口にする事が増えてきた。


いや、以前から言う機会はあったはずだが自分が言わないでいただけだ。


そして、思い出した。


「あっ!!! 李凛はッ?!!! 私と一緒に居た女の人は無事ッ?!!!」



あの時、自分を庇うために一人で敵の中に残った李凛。

絶望的な状況ではあったが自分には知る権利がある。

例えどの様な答えが返ってこようが受け止めなければならない。




嫌な間が空く。




「・・・・・・ん? あぁ、あの女も『無事』だ。なんならとっくに起きて調理場にいる」




生きていた。

その言葉に思わず涙を流す。

しかし、今度の涙は嬉し涙


心の底から安堵する。

何人もの大切な仲間を失い、李凛まで失っていたら

もう生きていける自信がなかったから。


早く李凛の顔が見たい。

そう思っていると、突如衝撃が走る。


顔を伏せて泣いていた為に、驚く蝶姫。


そして、顔を上げ目を開くとそこには、、、



「蝶姫様ァああああ!!! 蝶姫様が無事で本当によかった、、、あのまま起きなかったらどうしようって、、、本当に、、、本当によかった、、、」



李凛も蝶姫の安否を知って嬉し涙を流していた。



「李凛ッ!!!!! 本当によかった、、、もう二度と私を一人にしないでよ!!! 貴女がいないと私、、、私、、、本当にありがとう、、、うぅ、」




互いに涙を流しながら抱きしめ合い、生を実感する二人。

そんな二人を見ながら雷火は



「落ち着いたら食事部屋に来い。飯は出来ているのだろう。って・・・・・・きいてないか。まぁいい」




二人は最早、二人の世界に入っており、ここにいるのは雷火も無粋だと思いその場を後に部屋を出る。





沢山泣き、たくさん謝り、たくさん感謝をし、ようやく泣き止む二人。


あの後何があったのか李凛に訊ねる。




「えっとですね! 矢が蝶姫様に刺さった時正直終わったと思いました。 ですがその奥から突如単騎で現れたのがあの『雷火』将軍だったのです! 将軍の強さは尋常じゃなく、敵を次々に倒し、敵の戦意は喪失していました。 気付けば私を捉えようとしていた敵も雷火将軍の手によって倒されたのです!

そして、気絶した蝶姫様を雷火将軍は抱き抱えて

ここまで運んでくれたのです! まさに間一髪でした!」



息継ぎなく早々口にする李凛に圧倒されながらも蝶姫は一語一句逃さず聞く。


そして、話を聞いて気絶していた空白のページが埋まった。


やっぱり、薄れゆく中で聞こえた声は雷火の声だったんだと。


どうりで懐かしい感じがした。


雷火が居なければ死んでいたのだ。


蝶姫は心の底から雷火に感謝をする。

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