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懐かしい記憶

「うぅ、うぅ、もう嫌だよ・・・・・・ごめんね李凛」



泣きながらも必死に馬を走らせる。

どのくらい走っただろうか。

気付けば朝日が昇っていた。


夜通し走っていたのだ。



「今は謝らないでください! 皆の為に、瞬冷の為にも逃げるんです!」



ボロボロになりながらも馬を走らせる二人。

喉もカラカラだ。

それでもひたすら走らせる。


宰相や瞬冷の死を無駄にしないためにも。



暫く走っていると



「あっ、あそこに川が!」



李凛が川を見つけた。

恵の水である。


追いつかれる可能性もあるが自身も馬も水分を取らなければ倒れてしまう。


危ない賭けではあるが馬から降り


「ごくっごくっごくっ」


人も馬も夢中で水を飲み込んだ。

こんなにも水が美味しいと感じたのは初めてだった。


何時間も休まず走ったのだから当然である。


だが、ゆっくり休んではいられない。


「はぁ、はぁ、飲んだら直ぐに行きましょう」


その時だった。


「ヒュンッ!」


「ヒヒーンッ!!!」


突如馬の一頭の臀部に矢が突き刺さった。


矢の飛んでくる方を見れば何十、いや何百もの騎馬兵が。


少し休んだだけでここまで追いつかれた。


しかし、後悔してももう遅い。

敵は目前まで迫っているのだから。


蝶姫は項垂れていると、


「早くもう一頭の馬へ!!!」


李凛に無理矢理抱えられ、馬へと乗る。

しかし、もう一頭は先程の矢で逃げられてしまった。



「李凛も早く乗って!!!」


こうなったら二人で乗るしかない。

蝶姫は李凛に手を差し伸ばす。




だがその手を握られることは無かった。


「私が乗ったら馬のスピードが遅くなります。

私が少しでも止めるので早く逃げてください!

えいっ!」



そう言うと蝶姫の乗る馬のお尻を叩く。

馬も驚き、思わず走りだす。


突然の別れに頭が回らない。

なぜ、李凛だけ一人で後ろにいるのか。



「李凛ッ!!! いやだよ李凛!!! 李凛まで居なくなったらやだよ! 李凛しか私にはいないの!!! 李凛ーーーーーッ!!!!!」




止めようにも馬は止まってくれない。

そんな中、確かに聞こえてきた。




『大好きだよ、、、私の大切な妹』




目の前に死が迫っているにもかかわらず振り返り

笑顔でそう囁く李凛。





「いや、、、いやああああ!!!!!」





最早精神は限界だ。

泣き叫ぶことしか出来なかった。


次々に大切な人が死に、そして最後には姉のように慕っていた一番心許せる親友。





その時だった。





「グサッ!!!」




背中に熱いものを感じる。


なんだろう。


痛い。熱い。


だめだ、、、意識を失いそう。


馬に倒れ込み、薄れゆく中で見える景色。



敵が槍を手に近づいてくる。

自分を殺そうと近付いてくる。



あぁ、皆の死を無駄にしてしまった。


無能なばかりに・・・・・・。


次があるなら今度はちゃんと生きよう。

毎日をちゃんと生きよう。


でも、これでまた李凛やみんなに会える。




口は僅かに微笑み、そのまま瞳を閉じた。






「ーーーーー蝶姫ーーーーー」






なんだろう。

聞き覚えのある声。


懐かしい声。


ほっとする声。


でも、もうだめだ。

眠い。このまま寝よう。


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