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三路進行戦

「今、この平和な時間もつかの間---戦争真っ只中なんて信じられませんね。姉上」



「そうだね。 明日、、、もしかしたら今日戦争が起きてもおかしくは無いもんね。 でもせっかくだから今この平和なつかの間を満喫しよう。 思い出を作らないとね!」



蝶姫は弟の獅徳と共に蝶永城の城下町を散策していた。



蝶永城を奪取してからは大きな戦はなく、小さな小競り合いすらも起きていない。


おかげで、市民達の緊張は解け、戦時前の様に生活をすることができている。


大戦前の静けさかもしれない。

そう思えるほどに、町の景色は平穏そのものだった。



本来なら姉弟水入らずの散策と思っていたのだが、蝶永城を落として間もないことと、姫としての自覚を持つようにと雷火に言われ

護衛の兵を伴い散策している。



その為、当然目立つのだ。

すれ違う人皆が蝶姫に気付き、わざわざ頭を下げて挨拶をする。



それに話しかけてくる人も少なくは無い。


よって、散策もままならないのであった。




太陽が真上に差し掛かろうとしているころ。


今日は朝早く起きて散策に出掛けたというのにまだ城下町の入口近辺しか見れていない。


何せ、詰め寄る市民や土産が多いからだ。



姫であろうがなかろうが、蝶姫は町の人気者となっていただろう。

それほどまでに彼女は人から好かれやすい体質であった。



「姉上、もう昼時です。 今日は一度帰りましょう。 土産も沢山ありますしね」



そう獅徳が護衛兵に目をやると、確かに護衛兵は土産を沢山持っていた。

最早護衛兵と言うより、荷物持ちである。



「そうだね! 今日のお昼はこれを使って豪勢にしてもらおう!」



結局ゆっくり姉弟水入らずでとはいかなかったが、それでも獅徳は満足していた。


以前は全く相手にもして貰えず、獅徳の名前すらほとんど呼んでもらった記憶が無い。



だが、今日はたくさん会話もでき、たくさん名前も呼んでもらえた。


それだけで獅徳は満足だったのだ。





二人が城へと戻るとそこには既に五行将軍達が集まっていた。

なにやら神妙な面持ちで。


楽しい雰囲気だった蝶姫達も、皆の顔を見て只事では無いと察知する。

そういう空気だったから。


そして、この緊迫した空気の正体がわかった。


それは、、、




『陸前将軍が城より打って出た』と。




向こうは敗戦一方であり、攻めてくることはないと思われていた。

だというのに敵は攻めてきたのだ。


後がないと思い背水の陣で攻めてきたのだろうか?


兎にも角にも、向こうから来るのは鳳金にとっても誤算であった。


いや、陸前を深く知っていればこの動きも読めたのかもしれない。

何せ、彼の情報は噂程度でしか聞かないため少なすぎたのだ。





急いで淋木の配下に偵察に向かわせた。

まずは敵がどこを狙いどの道から来るのか。


それを知らなければ下手に動けない。



「恐らく狙いは蝶支城でしょう。 蝶支城への道のりは三箇所。

一つに絞るのか、それとも三路から来るのか」



鳳金は地図を見ながら頭を悩ます。



「来たる戦に備えて俺達も準備をした方がいい」



雷火の言葉に皆が頷く。

今は偵察隊を待つだけである。

その間に兵の準備をしておく必要があった。


直ぐに出れるように。


つまり、もうじきまた戦が始まるということだ。

蝶姫は何度体験しても慣れないその空気に息を飲み、拳を力強く握る。


蝶姫の場合は戦の準備の前に覚悟を決める準備が必要だから。




次の日、淋木が配下である偵察隊が帰ってきた。


鳳金が予想した通り、狙いは蝶支城。

そして、行路は三路同時進行であった。



陸前は真ん中の道を通っている様子。

それもそのはず。

真ん中は一番道が広く見晴らしもいい。

一番強い武将が率いるに相応しい道だ。


それぞれが一万程であり、総勢三万の軍勢。


こちらの数も三万程はいる。

つまり、兵力的には互角。



あとは質であるが、恐らく蝶姫軍の方が質も上だと思われる。

局所的に見てだが。



五行将軍達の力は蝶国のみならず、列国の中でも上位に位置するだろう。

それが五人も揃っているのだ。

負けるはずがない。


とはいえ、陸前将軍は更にその上に位置する『元大将軍』である。



五行将軍が一つを極めているのに対して陸前将軍は、全ての項目が上位に位置する。


それはまるで、五行将軍が合体したかのように。


つまり、一体一となると危ういかもしれないが、五人を各所に配置すれば質でも此方が優勢ということになる。



問題は陸前将軍率いる中央軍だ。

誰かが真ん中で陸前将軍の猛攻を防ぎきらなければならない。



それに、左右の軍だって決して弱い訳では無い。

仮に五行将軍全員を真ん中に集めれば左右が抜かれるだろう。


何せ、左右を率いているのも陸前将軍の副将たる二名なのだから。


数々の歴戦を潜り抜け、その隣で陸前を支えてきた将軍二人。

弱いはずがない。



つまり、理想としては左右に一人ずつ、そして中央に二人。

鳳金は戦闘は得意では無いため、中央の後方で指揮を執る。



つまり、一、三、一が一番理にかなっていると思われた。



鳳金や他の者たちが頭を悩ます中、一人黙り込んでいる男がいた。



竜土である。


彼は一体何を考え、何を思っているのか。



それは竜土にしかわからない。

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