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守る為に


「はぁ、はぁ、はぁ」



高鳴る心臓の中、必死に馬を走らせる。


共に行くのは李凛と瞬冷。そして、瞬冷に従う兵士が四名のみだ。


そんな寡兵を率いて逃げるのだが、敵の追撃が多すぎる故に何度も足を止められる。



だが、それでも瞬冷の力で何度も敵の壁を突破した。





舜冷やその手下達の力もあって最後の門をとうとう潜りぬける。



「や、やりましたよ蝶姫様、、、このまま最北端にある『蝶龍城』まで落ち延びます! 疲れているでしょうがもうひと踏ん張りです! 瞬冷達も辛いでしょうがお願いします」



瞬冷達も所々矢傷を受けており血を流していた。

誰一人として無傷な者はいない。




こんなにも蝶姫を守ってくれるのはこの王都でこの5人だけであろう。

いや、ここへ来るまでに2人の兵士が死んだ為、残りは瞬冷含めて3人だ。



(私を守る為に二人が死んだ・・・・・・)



俯く蝶姫であったが、直ぐにその思考を理解した李凛。



「無くなった兵士の為にも! 貴女は生きて逃げなければ行けません!!! 蝶姫様!!!」



そんな激に目をやると、李凛も唇を噛み締めていた。

目にも涙を浮かべている。

辛いのは自分だけではない。


そして、瞬冷達も限界なのだ。

ボロボロになりながらも、自分を守ってくれている。


その証拠に自分と李凛は無傷なのだから。



自分は逃げる事しか出来ない。

守られることしかできない。


いや、皆が居なければ逃げることも叶わなかった。


自分の無力さに打ちひしがれながらも、必死に馬を走らせる。


それしか今はできないから、、、




どのくらい走っただろうか。


城から離れ、森に入っても敵の足は止まらない。

このままでは追いつかれる。




李凛は焦りながらもただ蝶姫を逃がすことしか出来なかった。


すると、



「李凛、君もわかっていると思うがこのまま一緒に逃げていては敵に追いつかれるだろう。 だから、俺がアイツらを引き止める! 俺の力なら数十秒は持つだろう。 その間に必ず蝶姫様を逃がすんだ! 俺は姫に会って直ぐにわかった。この国を継げるのは蝶姫様だけだ!」



突然の提案に驚く李凛。

いや、提案ではない。

すでに瞬冷は覚悟を決めているのだ。


そんなの嫌だ。

ここに蝶姫がいなければ李凛はそう発していただろう。


だが、蝶姫を逃がすにはそれしかない事も理解してる。


それ故に止めることも出来ない。


ただただ涙を流し頷くばかり。




「うぅ、ごめん、ごめんね瞬冷。 貴方にばかり辛い思いを、、、」




「気にするなよ李凛! 俺の大好き女性に泣いて見送ってもらえるんだ! これ程名誉なことは無い!

行けっ!!!!!」



これから死ぬと分かっていながらも、自分達の為に笑顔でそう話す姿に余計涙が止まらない。


瞬冷はすぐ様反転してしまった。

最後の告白をして、、、



「瞬冷! いやだよ瞬冷!!! ずるいよ瞬冷!!!

私だって貴方が大好きなのに!!! 瞬冷ーーーッ!!!!!!」



泣き叫びながら大声で叫ぶ。


とうとう、我慢できなかった。

もう会えないと互いにわかっているから、

最後に気持ちを伝えたい。



顔を両手で覆い隠す李凛の肩にそっと触れる。



「ごめ、、、さい、、、本当に、、、ごめんなさい李凛・・・・・・私のせいで」



李凛の身体は小刻みに震えていた。

覆い隠した手から漏れる涙。


自分のせいで大切な友達である李凛の愛する人が

死地へと向かった。


好きな人ではなく自分を守る為に。


蝶姫は唇を噛み締める。

血が出るほどに。


こうまでしても生き延びなければいけないのか。

自分みたいな無能な女のために才能あるものたちが死んでいかなければいけないのか。


王族に産まれただけで、ただの平凡な女なのに。


だが、蝶姫は首を振るう。

気持ちをしっかりもたないと。


でないと皆の死が無駄になる。

それこそ無駄死にになっちゃう。



蝶姫と李凛は涙を流しながらただただ馬を走らせる。






「ふふっ、まさか両思いだったとはな・・・・・・こんなことなら早く告白すればよかった。いや、そしたら死ぬのを恐れていたかもしれない。これでいいんだ。最後に知ることが出来ただけでも御の字だな」



そう一人で呟きながら敵へと単騎で突っ込む。

これから死にに行くというのに、その表情も心もなんとも穏やかであった。


脳裏に浮かぶのは李凛の顔だけである。


しかし、後ろから蹄の音がーーー





「へへっ、良かったじゃないですか隊長。 この幸せ者め!」


「いいなー! こんなんだったら俺も誰かに告白しとくんだったぜ!」



声がする後方を振り返るとそこには、、、なんと瞬冷直属の兵士の二人が居た。



「ど、どうしてお前達が居るんだ! お前達は早く姫達の護衛に行けッ!」



てっきり蝶姫と共にいると思った兵士がここに居たのだ。

それには驚愕した。


しかし、二人は首を縦に振ることわない。



「へへっ、自分だけ格好つけないでくださいよ!」


「それに、隊長だけなら数十秒かもしれないけど、俺達も加われば数分は持ちますよ!」



二人は瞬冷率いる隊の中でも特に優秀な二人であった。


いや、先に死んだ二人も合わせて優秀な四人であったのだ。



これには瞬冷も堪らず微笑む。



「お前達は大馬鹿者だな・・・・・・それでこそ瞬冷隊だ! 行くぞお前達! 我等の力を見せてやろうぞ!!!」


「「おぉッ!!!!!」」



瞬冷が激励すると二人の士気も大いに上がる。




その三人の力はまさに鬼神の如く。

蝶姫を追いかけることは叶わず次々と倒れていく狼徳の兵士達。

特に瞬冷の力は抜きん出ている。


10倍上の兵力差をものともせず、ただただ目の前の敵を殺しまくる。


狼徳の隊が恐れを成すほどであった。




しかし、時が経つにつれ三人の傷も次第に増えていた。

ただでさえ、抜け出す時に傷を負っていたのだ。

そして、圧倒的大差の数の敵。


最早満身創痍であった。


それでも三人は止まらない。

10倍近くの敵を前にしても。




「うおおおおぉッ!!!!!」




こうして、宰相に続き瞬冷もまた蝶姫を助ける為にその命を散らすのであった。

「面白いな、続きが読みたいなと思ったらブックマーク、高評価をお願いします。そして誤字脱字や意見などあったら是非コメントしてください。」

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