思わぬハプニング
蝶永城は蝶国の王都の真上に位置する。
蝶永城からそのまま王都へ行ってしまえば勝ちと思うかもしれないが、まずはその手前の蝶霊城を落とさなくてはならない。
蝶霊城を無視して王都へ行けば背後を絶たれる可能性があるからだ。
それに、情報によると蝶霊城にはあの、陸前将軍がいるらしい。
どちらにせよ、蝶霊城は無視できないということだ。
向こうは何度も城を取られ、敗戦を繰り返している為、攻めてくることは無いと鳳金は判断した。
しかし、こちらも立て続けに何度も侵攻を繰り返した為、兵達の疲労は溜まってる。
よって、来る戦に備えて今は休養の時期。
それに狼德軍から吸収した兵も少なくは無い。
新たな兵達との連携も取らなくてはいけないため、日々練兵が行われている。
そんな中、とある練兵場では
「次こそッ!!!」
蝶姫が鋭い突きをお見舞する、、、が、雷火は余裕の表情で
その突きをいなす。
「まだ速く突けるはずだ。 言っただろう。 腕の力だけでやるな。 腰の回転、脚の力、全てを使え。 そうすればお前の突きでも大男を倒せるだろう」
何度も注意されるが、そんな全てを意識してなど出来ない。
まだまだ訓練不足という事だ。
「むぅーーーッ!!! そんなにいうなら雷火が手本見せてよ! 完成系を見ないとわからないもん!!!」
蝶姫は頬を膨らませ、拗ねたように嘆いた。
「・・・・・絶対に動くなよ? 動いたら当たるぞ」
雷火の鋭い眼光に、ビクッとすると、たくさん頷いた。
雷火が剣を構える。
蝶姫は恐怖で固まっていた。
「いくぞ、、、はあッ!」
雷火の目にも止まらぬ速さの突きに蝶姫は思わず目を瞑り、その場を避けようと動いてしまった。
雷火は止まっていれば当たらないように放つ事ができた。
だというのに蝶姫は動いてしまったのだ。
(ッ?! まずいッ!!!)
雷火は突いた腕を無理矢理外へと持っていく。
全力で突いた腕を更に逸らすのだ。
雷火の腕にかなりの負担が掛かる。
「外れろッ!!!」
雷火のおかげでなんとか蝶姫に当たるのは避けられた。
そして、珍しく息を荒らげる雷火。
それ程に緊張が走ったのだ。
下手をすれば蝶姫の命を落としていたかもしれないのだから。
「おいッ!!! 動くなと言っただろうがッ!!!
お前に万が一があったらどうすッ・・・・・・る・・・・・・!?」
先程の雷火の神速の突き。
それは蝶姫に当たることは無かったが、服を切り裂いていた。
つまり、胸元が露となっていたのだ。
顔を赤くし急いで後ろを向く。
「す、すまん。 わ、わざとじゃない!!! 、、、け、怪我は無いか?」
焦る雷火に呆然としている蝶姫。
先程の突き。
それは目にも止まらぬ速さであり、身体が条件反射で動いてしまうほどに。
あと一歩ズレていれば、そして、あと1センチでも雷火が逸らすのを遅れれば蝶姫は致命傷を負っていたかもしれない。
「雷火・・・・・・」
「?」
「・・・・・・雷火ッ!!!」
「ッ?! ど、どうした?!」
雷火は蝶姫に背を向けたまま返事を返す。
何せ、蝶姫は今胸元を露にしているのだから。
だが、当の本人はそんな事全く気にしていない。
それよりも気になるものがあったから。
「凄いよ雷火ッ!!! さっきの突き! 何も見えなかったもん! 私もたくさん訓練したらできるかな?!」
蝶姫は雷火の前に立ち、目を輝かせながら興奮している。
それ程、雷火の攻撃に感激していた。
だが、雷火からすれば困ったものである。
前に立たれれば否が応でもその姿は目に映る。
「わ、わかった!!! いいからお前は着替えてこい!
技の説明はその後するから!」
雷火は自身の羽織を蝶姫に羽織らせる。
これで目のやり場に困る必要はなくなったはず。
そして、雷火の言葉でようやく自分の身体を確認した。
特に怪我はなく、服が破れているだけ。
傷がない事にホッとするだけで服が破れたことに関してはなんとも思わなかった。
とはいえ、雷火が着替えなければ教えないというので仕方なく着替えに戻る。
訓練所を後にする蝶姫。
残った雷火は伏せていた顔を上げ、目を瞑る。
(これが動揺・・・・・・ あいつもいつまでも子供じゃない。
俺達と同じ様に成長している。 今後はあの性格も矯正してやらないと危ないかもしれないな・・・・・・)
蝶姫の行く末を心配する。
そして、思わず先程の光景を思い出してしまう。
白く透き通る肌に、二つの山。
男には無い、立派な山が二つ。
思わず顔を赤らめる。
すると顔を横に振り、再び剣を握り訓練に励む。
邪念を無くす。
気付けば雷火は素振りを一万回もこなしていた。
それ程に集中し、先程の光景を忘れることが出来たのだ。
何せ気付けば夜になっているのだから。
「あっ、、、蝶姫にさっきの技を教えるの忘れていたな。
まぁ、明日でいいか」
邪念を忘れる為、素振りをしていた結果蝶姫との約束を忘れてしまったことに気付く、
そして、蝶姫の顔を思い出すと再び先の光景を思い出し顔を赤らめるのであった。
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