皆の決意
蝶支城に揃う蝶姫と五行将軍。
更には副将達も揃っている。
机の上には蝶国内の地図が開かれている。
○蝶龍城
○蝶明城 ○蝶巴城 ○蝶支城 ○蝶永城
○蝶華城 ●蝶霊城 ◎王都 ●蝶平城
●蝶江城
○が蝶姫の納める白で、●が狼德軍だ。
王都も今は狼德が納めているため、こちらが六城、相手が四城である。
城も兵もこちらの方が多いが一つだけ懸念すべき事がある。
「問題は『陸前 飛将軍』だな」
雷火の言葉に頷く面々。
狼德軍で唯一恐れる存在と言えば陸前だ。
彼の武力、知力、統率力は群を抜いている。
更には戦場でも常に冷静であり、先の戦いも瞬時に自分達が負けると理解出来た。
あの男を倒さないと狼德を捕まえることは出来ない。
引いては、蝶姫を王に座らせることができないのだ。
「雷火、貴方の武力で陸前将軍に勝てますか?」
鳳金がそう訊ねると雷火は眉間に皺を寄せしばらく思考する。
「・・・・・・勝てる---と、言いたいところだが五分だろうな」
その言葉に蝶姫は驚くも、他の者たちの表情は変わらなかった。
皆もそう思っていたのだろう。
「では緋水はどうです? 貴方は騎馬戦で勝てますか?」
今度は緋水だ。
いきなりの事に目を見開いて驚いたが、彼は直ぐに答える。
「あ、当たり前だろ!!! あの時とは違うんだ! 今の俺なら勝てる!」
緋水は過去に一度だけ陸前に馬上勝負を申し込んだ。
そして、結果は緋水の惨敗。
何年も前という事もあり、あれから緋水が強くなっているのは事実。
何せ、あの敗北が緋水にとって馬上勝負のたった一度の敗北なのだから。
それはもう、死に物狂いで訓練をした。
二度と馬から落とされないように。
緋水は思い出す。
叩き落とされ、馬上の上から興味のないものを見るような目で蔑んできた陸前の姿を。
「戦いとは情報戦が優劣を決すると言っても過言ではありません。 相手の兵力、陣容、進路、全てを知ることが出来ればそれだけで優位に進むことができるのですから。
ただ、陸前将軍の諜報部隊は『蝶国一』とも言われていました。 淋木、貴方は勝てますか?」
鋭い視線で鳳金を睨む淋木。
「何言ってるの? それは過去のことでしょ?
今では俺の黒殺衆が一番だよ。 諜報戦で負けるわけないじゃん」
ムスッとした表情でそう答える。
「ふふっ、そうですね。 では竜土、陸前将軍の攻めもまた
蝶国随一と言われています。 貴方は防ぐことが出来ますか?」
ぼーっとしていた竜土は名前を呼ばれた事で、鳳金を見つめる。
何を考えているのか分からないといった様子で。
「・・・・・・どうだろうね? やってみないとわからないけど。
防げると思うよ。 僕の守りは世界一だからさ、、、だよね?」
竜土以外の者たちが溜息をつく。
やる気があるのか、ちゃんと考えてるのかはわからないが、
それでもやる事はしっかりやってくれる。
それに竜土の守りは鉄壁だ。
だから、誰も疑わないし何も言わない。
「そういうお前はどうなんだ?」
「確か陸前将軍も頭はよかったよな?」
「皆に聞いといて自分は勝てるの?」
「そうだよ。 勝てるの? ・・・・・・誰に?」
皆が今度は鳳金に訊ねる。
陸前将軍は武勇はもちろん、知略も兼ね備えている。
つまり、知勇兼備の将軍だ。
残虐性を無くせば、間違いなく蝶国のみならず世界でも屈指の
将軍として名を馳せていただろう。
そんな大物を相手にするのだ。
まずは皆のやる気を聞き出す必要が鳳金にはあった。
それで作戦を決めるのだから。
だというのに、今度は皆が自分に訊ねてきた。
鳳金は少し驚いた顔をすると直ぐに笑みに変わる。
「ふふっ、そんな当たり前のこと聞かないでください。
もちろん、知略勝負で負けることはありません。
ですが、全体的に見ると私の方が遥かに劣ります。
ですから、私の頭、そして皆さんの力で勝つのです」
一人一人で見れば能力値は陸前よりも劣るかもしれない。
だが、一つ秀でているものがあれば、それを皆で助け合うことにより相手を凌駕する。
よって五行将軍は五人で陸前へと挑むのだ。
五人は互いに微笑み、互いの意図を察する。
「待ってよ!!! 私だけ除け者にしないで!
私も戦う!!!」
自分だけ蚊帳の外状態だった蝶姫が叫ぶ。
今の今まで、皆の眼中に入っていなかったのだ。
それに対して少しムスッときて大声を上げた。
私もいるからと。
「何を言っている。 率いるのはお前だろ」
「そそ! 蝶姫が俺達を引っ張るんだから一緒に戦うのは当たり前じゃん?」
「でも、蝶姫は弱いんだから後ろにいてよね」
「大丈夫だよ。 僕が守るから。 前にいても後ろにいてもね。
でも、後ろの方がいいのか」
「私達『六人』で必ず陸前将軍を打ち破り、国を取り返しましょう」
五行将軍の輪の中に蝶姫も入る。
除け者になんかされていなかった。
何も出来ない弱い自分を皆は無視してなかった。
無用だなんて思っていなかった。
蝶姫はそんな皆の暖かい言葉に嬉し涙を零す。
「うんッ!!! ありがとう! 皆! 必ずお父様の大切な国を取り戻すからね!!!」
蝶国奪還戦の最後の壁とも言える陸前将軍。
彼を倒せば、残る城を落とすだけ。
これから、最後の激しい戦いが幕を開けるのであった。
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