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右、左翼の戦い

蝶姫が皆の前に立ち、皆の前で激励している。



雷火率いる迅雷隊も黙ってその様子を聞いていた。

いや魅入っていた。



ただの姫ではない。

人徳もあり、人望もある。

何より皆から愛されていた。


それは蝶姫の人柄のおかげである。

不思議と皆が守ってあげたくなる。

そうおった存在なのだ。


蝶姫の言葉が終わると迅雷隊が大声で雄叫びを上げる。

鳯金隊、竜土隊も同じだ。


迅雷隊の士気がこんなにも高いのは初めてである。



「ふっ、お前等まで感化されるとはな」



思わず雷火も微笑んでしまう。

自分の配下のこの変わりように。


そして、蝶姫から雷火軍へと突撃の号令がかかる。



『雷火軍突撃ッ!!!』



蝶姫と目が合う雷火。

互いに頷き、剣を高らかに構える。



「出るぞ朱抗。楔だ」



「はッ!!! 迅雷隊突撃ッ!!!」



先陣をきるのはもちろん雷火軍。

雷火を先頭にその斜め後ろを副将である朱抗、そして反対を

迅雷隊隊長の呂凱。


楔型の陣にて突撃をする。



雷火率いる右翼軍5千に対し、敵の左翼軍は1万。

2倍もの兵力差があるが問題は無いと雷火は判断している。


迅雷隊が強者揃いなのはもちろんの事、蝶姫の激励のおかげで士気も最高潮。


つまり、このまま突っ込むのが一番敵にダメージを与えられると判断した。


何より、敵総大将である陸前は中央の軍に居る。

彼が相手なら厳しいかもしれないが、そうじゃなければ問題なし。



「雷火将軍! 先程、お前等まで感化されたと言っていましたが、お前『等』という事は雷火将軍も?」



ニヤつい顔でそう話してくる朱抗。



「さぁな。 そんな無駄口はいいから行くぞ」



表情を変えることなく、前だけを見つめる。

長年雷火の隣にいた朱抗はわかる。


照れくさいのだと。

朱抗は微笑みながらも気持ちを切り替え敵を見続けた。



当然敵軍も矢を打ち込んできて、行軍を止めに入ろうとするが、そんな矢で止まるほど、迅雷隊は弱くなかった。


体に刺さろうともその速度が衰えることは無く、迅雷隊の鬼の形相に相手の左翼軍は、得体の知れない何かを相手にしているかのように恐怖していた。



そして、先頭を走る雷火がいよいよ敵に肉迫する。


相手も盾を持ち構えているが、そんなもので迅雷隊である騎兵隊を防げるはずもなく、次々に馬によって散らされる。



更には馬上より次々と槍が降り注ぐ。



何より、雷火の戦いぶりは凄まじく次々に敵兵が死んでいく。

2倍もの兵力差をものともせず、蹂躙していく迅雷隊。




その戦いぶりを遠くから蝶姫達も見つめていた。



「久しぶりに雷火の戦いを見たけど凄いね。 いや、想像以上だよ。 僕に今のあの軍を止められるかな」



「本当に凄い、、、まるで相手の歯が立たない」



「蝶姫のおかげだよ。 何せ、僕の仲間までやる気になってるからね。 あっ、敵の右翼も攻めてきてるよ」



竜土が指さす先は鳯金の目の前に陣取る敵である。

数は1万であり、やはり2倍。


つまり、相手の布陣は左右が1万ずつの真ん中が5千だ。

左右から抜くつもりなのだろう。



「鳯金は大丈夫かな? 他の4人と違って自分で戦うような人じゃないでしょ?」



心配そうに見つめるも、竜土の表情は何も変わらない。

なぜなら大丈夫だと分かっているから。



「鳯金には鳯金の戦い方がある。 見てればわかるよ」



竜土の言葉に再び左翼を見つめる。





敵右翼のうち騎兵5千が突っ込む。

対する鳯金隊は前に盾兵を配備し、その後ろを弓兵が構える。


そんな布陣を見て蝶姫は何かを思う。



「あれ? これだと雷火達と同じじゃない? やる方とやられる方が変わっただけだよ! これじゃあ鳯金たちもやられちゃう!」



心配するように大きな声でそう話すも、竜土は何も答えず黙って見続けていた。


そんな竜土の態度に仕方なく蝶姫も再び視線を戻す。



(お願い鳯金、、、死なないで)



そう願いながらも先頭の行く末を見続ける。





前方にて盾兵を率いる鳯金の副将である銅刹。


その後方で弓兵を率いる鳯金。



皆が黙って迫り来る騎兵に備える。



そんな中銅刹が振り返り、鳯金の顔を伺うと鳯金は頷いた。



「陣替えせよ!!! 凹牙の陣!!!」



銅刹の大声で陣組を始める盾兵。

横陣を敷いていた盾兵は、凹凸になる様な陣形へと変わり

凸の先端は丸くなるように構えた。



そうして、敵の騎兵は凹の中央へと吸い込まれて行く。

馬の特性を活かした方法である。



次々に敵の騎兵は分断され、その瞬間鳯金率いる弓兵が動き出す。



「さぁ、籠の中の敵兵を射抜きなさい」



「放てッ!!!」



次々に射ち込まれる矢。

それも近距離からの射撃により、次々と射抜かれる。


さらに、銅刹の敷かれた陣形により騎馬の強みである速度も奪われた。



為す術なくやられていく敵右翼軍。

槍で貫かれ、矢で射られる。



雷火達と同じ戦いが行われるに思えたが全然違うものとなり、守側の優勢に変わっていた。





そんな様子を見て安堵している蝶姫。



「ねっ? 鳯金なら何も心配する必要ないよ。

鳯金には鳯金の戦い方がある。 そして、もちろん僕にもね」



突然鋭い視線を真っ直ぐ向ける竜土。




敵の中央もいよいよ動き出したのだ。

そして、旗には『陸』の文字が。


つまり、陸前『元』大将軍のお出ましである。



こちらにもとうとう敵がやってくる。

震える手を抑えながらも唇をかみ締め気を引きしめる蝶姫。



「大丈夫。 僕の守りは何も通さない。 そう。二度と」



鋭い目で陸前軍を睨みつける竜土。

そんな彼が頼もしくもあり、どこか恐ろしく感じた。



こうして、最初の右翼、左翼の戦いは有利に始まり、中央の戦いも始まろうとしていた。

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