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古城の守り

重い空気が流れる中、蝶姫は首を傾げていると、唐突に竜土は口を開いた。



「あるよ。 守りは敗れたけど戦争には勝った戦いがね。

確かね、、、なんだっけ? 庄亀覚えてる?」



いつもの竜土の雰囲気に皆が崩れる。

竜土は普段は何も考えていないが、こと守りに於いては人並み以上に思い入れがあり、一度の敗北でさえも凄く根に持つ。


幼少期なんかはよく雷火や緋水にやられてだいぶ根に持っていた。


そして、成長し兵を指揮するようになってからは彼の守りの才能は更に開花されたのだ。



そんな中での一度の敗北。

いや、戦争自体には勝ったのだから勝利ではある。


とはいえ、守りは破られたのだ。



庄亀は素直に答える。



「はっ、あれは二年前の虎国との戦いです。 虎国の第三将軍とも呼ばれていた『什故将軍』によって我等が守りは破られました。 とはいえ、破られたのは一度でありその後は逆に

什故将軍を竜土将軍自らの手で打ち破ったのです」



虎国といえばこの世界でも二番目に大きな国である。

そんな強国である将軍に、しかも第三将軍を相手にまだ若い竜土は勝ったのだ。


それには蝶姫も驚きである。



「凄いッ!!! 虎国の! しかも第三将軍に勝つなんて竜土凄いよッ!!! 竜土の近くなら絶対安全だなって思ったよ!」



興奮しっぱなしの蝶姫の圧に押される竜土。

そして、敗戦を思い出し、落ち込むかと周りも心配していたがそんな心配は必要なさそうだ。



「蝶姫近いよ、、、でも、近い方が守れるしいいのか。

いや、この状態で守れる自信がないな。 でもいっか」



女性への免疫が無いため、いつもの動きが出来ないことを杞憂しているが、好きな相手の傍に居られるのならそれはそれでいい。



「ふふっ、竜土ってほんと面白いね! 早く雷火の元へ行こう!」



頷く竜土は再び馬を歩かせた。




そんな二人の後方を歩く鳳金と竜土の副将である庄亀。



「我々が過去の敗戦を口にすれば竜土将軍は、我を失い怒り狂うでしょう」



「私も雷火から竜土の過去は聞きました。 ですが、心配はありませんでしたよ。 なぜなら蝶姫様が近くにいるから。

不思議ですよね。 蝶姫様と話していると、怒りや悲しみ、不安や心配が全て馬鹿らしくなるのです。 彼女の笑顔を見ていると、全てが消え去るのです。 蝶姫様はそういった方なんですよ」



鳳金の言葉を聞き、蝶姫の後ろ姿をじっと見詰める。

副将達は蝶姫に会ったことがない者がほとんどだ。

庄亀もそう。



(確かに、あんな将軍は初めて見る。 そして、私も自然と蝶姫様を守りたいと心から思える。 蝶姫様が姫だからでは無い。

例え、あの方が姫じゃなくともそう思っていただろう)



感慨深そうに見つめると、蝶姫達の後を続くように馬を走らせた。





雷火は古城のすぐ近くに生い茂る高草にて様子を伺っていた。

というより、報告を聞く為に合流していた。



「これはこれは雷火将軍。 敵は今のところ城の中で篭っています。 外に放っている偵察兵が戻って来ないから、今頃慌てふためいていると思われます」



その者が居る草の周りには何体かの屍が。



目の前にいるのは淋木の副将である無魂。

目元だけが見える服装は、まさに暗殺者そのものである。


正直性別もどちらか分からない。

そもそも、無魂の性別を知るものは淋木しか知らないと言う。


何故なら無魂は変装を得意とし、どれが本物の無魂なのか分からないのだ。


つまり、目の前にいる無魂も本当の姿かは分からない。



「そうか。 なら、このまま一気に攻め入るとしよう。

お前達は引き続き、奥の方を警戒してくれ。

万が一蝶永城から狼徳軍が来たら直ぐに知らせろ 」



「はっ!」



そういうと、無魂以下、数名は一瞬で目の前から消え、行動に移った。



「では俺達も行くとするか。 朱抗、続け」



勢い良く馬を走らせ古城へと走る雷火。

そして、その後を続くように迅雷隊が進む。



報せもなく、突然の攻撃に古城に陣取る敵兵達は混乱している。



それもそのはず。

相手は赤備えの鎧を着た、迅雷隊なのだから。


蝶国にいれば、いや、全世界に鳴り響く迅雷隊の名。

自国であればもっと恐ろしい程に耳にするその名前。



古城にいる兵は迅雷隊を見ただけで戦意喪失していた。



あとは、一方的な殺戮である。

ある程度数が減るまでは、そして降伏するまでは斬って斬って斬りまくる。



下に入れば騎馬の餌食となり、城壁の上に入れば迅雷隊の矛の餌食となる。


最早、逃げ場は無く地獄そのものだ。




「くっ、怯むな!!! 敵の数は同数! それにこの古城は鉄壁の守りがある! それは相手が示したようなもの! 俺に続け!」



敵軍の総大将と見られる男。

絶望的な状況であるにも関わらず、少ない可能性を信じて愚かな

激励を飛ばす。


彼が優秀ならば、今すぐに降参し少しでも味方の兵士の死を防ぐことができただろう。



そして、敵の総大将は雷火も見たこともないということは狼徳が国を動かしてから優遇されたものだろう。


つまり、実力ではなく家柄などで刈り上げられた雑魚という事だ。




「雷火将軍、彼奴の相手はこの私が」




雷火の隣に進み出る呂凱。

あの敵は雷火が出るまでもないと、判断したのだ。




「あぁ、行ってこい」




それだけ言うと呂凱は馬を走らせ、敵総大将へと肉薄する。



途中、守りの兵士もいたが、紙を散らすかのように呂凱は蹴散らした。




「くっ、奴が雷火将軍か? 俺の手で葬ってやろう!」



呂凱を雷火と勘違いしながら自身も迫る。


自分は実力で将軍にまでなったと勘違いした愚かな結果が、彼の

寿命を早めることとなろうとは思いもしなかっただろう。




互いに近付き交差した瞬間、、、





「ザシュッ!!!」





肩から腰にかけて敵総大将は一撃の元斬り伏せられた。


力の差があまりにも大きい。

恐らく迅雷隊の一兵士でも勝てただろう。


呂凱も物足りなかったのか、そのまま敵陣へと更に突っ込む。




総大将を一太刀でころされた狼徳軍はまたしても混乱状態に陥り

あっという間に降伏を宣言する。



こうして、雷火軍の圧倒的勝利により、古城の戦いは幕を閉じるのであった。

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