蝶姫の想い
鳳金が机上に蝶国内の地図を置く。
蝶姫軍の 勢力図は主に国の左上を占めている。
狼徳軍の城は残り五個。
○蝶龍城
○蝶明城 ○蝶巴城 ○蝶支城 ●蝶永城
●蝶華城 ●蝶霊城 ◎王都 ●蝶平城
●蝶江城
●は狼徳軍の持つ城だ。
そして、次に取るべき城は左下の蝶華城。
元緋水の城だ。
ここを取れれば左は完全に憂いが無くなる。
後は右方向に進んでいけばいいだけの事。
そして最終的には◎のある王都を奪還する。
恐らく狼徳王子も未だ王都にいるはず。
ともあれ、まずは蝶華城だ。
「やっと俺の家に帰れるのか! んで、誰が出撃するんだ?
もちろん俺は行くよな? ってか俺一人でも余裕だけどな!
ガッハッハッ!!!!!」
緋水は声高らかに大笑いする。
何せ約1年ぶりに自分の持ち城へと帰れるのだから。
そして、蝶華城は緋水が一番よく知っている為、当然緋水は出陣するのは確定だ。
「そうですねぇ、ここには五行将軍並びに豪覇将軍までもが居ます。 ならば一つの城にこの戦力は些か過剰でしょう。
ならば、二城同時奪取といきますか」
突然の進言に驚く一同。
まだこちらの戦力の方が低いにも関わらず、ここで軍を二つに分けて攻めるなど、愚の骨頂。
二つも攻めれば今度は守りも難しくなるし、攻めるのも二倍大変になるのだから。
と、蝶姫は思っていたのだが、そう思っていたのは蝶姫のみであった。
「なるほどな。 確かに『俺達』ならそれが出来るな」
「どうせ俺の隊も二つに分けるんでしよ?」
「俺は絶対蝶華城の方に行くからな!!!」
「えっと、僕は城で守ってるよ。 攻めるのは苦手だからさ」
「グッハッハッハッ!!! 久しぶりに若造達の戦争を後ろで見ててやるかのう!」
五行将軍の四人と豪覇将軍がそれぞれ談笑している。
とてもこれから戦争をするとは思えないほど陽気に話していた。
「では、まず攻める城ですが、もちろん南西の蝶華城です。
そして、もう一つは------北東にある蝶永城です。
一番近くに位置する蝶霊城、もと私の城ですが、そこは守りが相当硬くなっております。 まぁ、私の城なのですから硬いのは当然。 そして、軍の編成ですが、蝶華城へは、緋水、淋木、豪覇将軍
蝶永城へは雷火、竜土、私が。
そして、蝶龍城には蝶姫様と李凛さん、護衛に瞬冷が配備してください。 残りの城は既存の兵力で保てるはずです」
鳳金の指示に誰も文句は内容で頷く。
ただ一人を置いて、、、
「ちょっと待って!!! 私も行くッ!」
声を張り上げてそう話すのはなんと蝶姫だった。
姫であり、次期王女の座に座るべく者だ。
それには皆も驚愕する。
蝶姫が死ねばこの軍は崩壊してしまうのだから当然だ。
五行将軍はもちろん、豪覇将軍も蝶姫が居るからここに居る。
蝶姫が立ったから、目の前の敵を振り払うのだ。
だから、皆が止めるのは当然。
「お前はだめだ。 万が一があったらこの軍は瓦解するんだぞ?
自分の立場がわかっているのか? ちゃんと自分がどういう存在なのか理解しろ」
少しキツい言葉かもしれないが、周りも同感の様で否定はしなかった。
むしろ、このくらいの方が蝶姫も引き下がるだろうと読んでいた。
「・・・・・・わかってるよ! 私は蝶国の姫であり、この軍の顔だけの王! でも、私はそんな自分が嫌で雷火に訓練を頼んだんだよ! 強くなりたくてしたんだよ! それじゃあ、なんの為に訓練していたの? いざ、窮地が来た時の為? いきなり、そんな状況になった時の方が怖いよ。 それに、人を斬るのは確かに怖いよ、、、
でも、仲間が斬られる方がもっと怖い!!!
大切な人をしなう方がもっとイヤなの!
私は戦えるから!!! だから、お願い・・・・・・私の羽を折らないで。 私は戦場を舞う蝶になりたいの・・・・・・」
皆が蝶姫の言葉を黙って聞く。
言葉の一つ一つに熱い魂が乗っかっていた。
そして、そのサファイアの様な美しい瞳が、まるでルビーの様な
情熱の真っ赤な瞳へと変貌しているかのような錯覚を起こしていた。
それほどに蝶姫の決心した想いは皆の心まで響いていたのだ。
「連れてってやれよ雷火! お前が近くで守ってやればいいだろ?」
軽い感じで緋水がそう話すと
「なら僕の後ろにいる? 僕がいる限り蝶姫が傷付くことは万に一つないよ・・・・・・でも、転んだりしたら無理だけど、」
「そうですね。 いつまでも、あの頃の蝶姫様と思うのは良くないかもしれないですね。 上に立つのなら、大陸を統一するのなら
自分の目でちゃんと戦争を見るのも悪くないのかもしれません」
「そうそう。 淋木の言う通りだよ。 実際に戦争を体感すれば
きっと蝶姫はいい王様になれんじゃない? 知らないけどさ」
「ワシはどちらかといえば反対じゃが、蝶姫様がここまで想うのなら止めはせぬ。 じゃが、蝶姫様に万が一があったら貴様ら許さんぞ」
皆がそれぞれ口にする。
ともなれば、ここで雷火一人が止める訳にもいくまい。
「全く、、、いつもは、だらけている癖に、こういう時だけ引かないのは変わらないな。 一つ約束しろ。 俺から絶対離れるな」
皆の言葉に、そして雷火の言葉に大きく頷く。
ようやく戦争に出られる。
決して人を殺したい訳では無い。
自分も強くなった為、一人でも多くの仲間を助けたいのだ。
蝶姫はいつも戦後処理が行われてから戦場へと向かっていた。
そこに広がるのは数々の死体。
当然仲間の死体もあったし、一般人の死体も見た。
まだ幼い子や、戦えない老人。 お腹を大きくした女性。
そんな人達を少しでも救いたい。
それが蝶姫の想いだ。
そして、皆のおかげでいよいよ数日後、蝶姫は戦場へと向かうのであった。
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