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家族の亀裂

〜玉座の間にて〜



「父上! 最後のお願いです! どうか勢力拡大、引いては戦争の自由をお許しください! 必ずや父上に、蝶国に勝利を!」



未だに諦めていない狼徳。


そして、当然ながら国王も首を縦に振ることは無い。



「先日も伝えたであろう。国が復興するまで待て。

急かずとも必ずや戦の時は来る」



いつもと変わらぬその返答に、拳を震わせ、口調に怒りが篭もる。



「だからッ、、、それはいつまで待てばいいのですかッ!!!? いつまでも停滞していては勝機を見逃します! 今がチャンスなのに!!!

どうして分からないのですか父上!!!」



「来たるべく、戦さのためにも今は国を豊かにしなければならないのだ。

それに、勝機は自分の手で切り開くもの。

その時に勝機を見い出せば良い」


相も変わらず首を縦に振らない国王。

そして、先程まで激昂していた狼徳も急に無表情に変わった。



「そうですか、、、わかりました。 失礼します」



諦めたのか、なんなのか分からないが大人しく引き下がる。


そんな狼徳を見つめる国王の瞳は、いや、表情はとこか悲しげな目で見つめる。


そっと目を瞑り思考し、覚悟を決めたのか目を見開く。



「呉怜、お主に頼みがある」



傍に控える宰相である呉怜。

50半ばであり、国王の友であり、国を支えるものの一人。


国王の数少ない信頼する仲間である。



「はっ」



そして、国王は呉怜に耳打ちをした。

誰にも聞こえない声で。








「起きてください!!! 夜眠れなくなりますよ!!!」



眠い目をこすると窓には夕陽の灯りがさしていた。


「んーーー、、、よく寝たー。 李凛大丈夫だよ。

私はいつでも何回でも寝れるんだからね」


エッヘンとまるで自慢するかのようにそう話す蝶姫に呆れる李凛。


「なんの自慢にもならないですよ。 それよりも

夕飯の時間です! 国王陛下を待たせるわけに行きません! 早く身支度を整えて行きますよ!」




気付けばあっという間に夕飯時であった。

ご飯と聞けばテンションが上がる蝶姫は急いで身支度を整えると国王の待つ食堂へと向かう。




既に父と弟は待っていたが兄の姿はなかった。

といっても蝶姫は気にすることは無い。

そもそも気付いてすらいないかもしれない。


テーブルに並ぶ食事にしか目がいかないのだから。



「ふむ。狼徳はやはり来ぬか」



国王も来ないとわかっていたようで、そのまま食事を三人で頂く。


少し食べると国王が獅徳へと話し掛ける。


「獅徳よ、蝶姫との久しぶりの外出はどうであった?」



突然の質問に思わずフォークを落とす。


「えっ?!!! あ、はい! と、とても楽しかったです!」



何やら雰囲気は怪しいが、無駄な詮索はしないでおこうと国王も微笑み頷く。


「蝶姫よ、お主も久しぶりの外は楽しかったか?」


黙々と食べ続ける蝶姫に訊ねる。


「もぐもぐ、ごっくん。 えっ? どうかなー? 空気はおいしかったかも! でも疲れたなー。 だから、

たくさんご飯食べるんだー! もぐもぐもぐもぐ」


そうしてまた食べ続ける蝶姫。


最早呆れてものも言えない国王は、美味しく食べる蝶姫をただ眺めるばかりである。


そして、僅かに口が微笑んだ。


そんな国王の様子を見ていた獅徳は首を傾げる。


(ん? 今父上が姉上を見て笑ったような・・・・・・でも目は悲しそうだった、、、気のせいかな? )


一瞬であった為、気のせいだと思いそのまま食事を続ける。




ご飯を食べ、部屋へ戻る前に入浴を済ませる蝶姫。


さすがは王城の風呂なだけあり、とてつもなく広かった。


もちろん王族専用の風呂の為、王族以外は入れない。


鼻歌交じりに風呂へ入り、身体を洗い入浴する。


「はぁーーー、今日はたくさん汗かいたから生き返るー。 気持ちいい」


顔が綻び、口元まで湯に浸かっていると、突如後方より声が聞こえてきた。


「なんだお前もこの時間に入ってきたのか」


そこには既に入浴している兄である狼徳の姿が。

蝶姫も特に驚くこと無く、顔を向ける。


「んー? お兄様も入ってたんだねー。 もう出るー?」


あたかも早く上がってくれと言わんばかりの言動に込み上げる怒りを抑えながらそのまま話を続ける。


「くっ、、、それよりも蝶姫。 お前はこの国を、父上をどう思う。 このままでいいと思うか? 何も変わらなくていいと思うか?」




真剣なその言葉に蝶姫は首を傾げる。

何普段考えていないばかりに、中々理解するのが難しかった。


「んー・・・・・・わからない? 私はこのままでもいいかな? いつも通り毎日を過ごせればいい。

この生活が無くなるのはいやだ。 って事は変わらなくていいのかも! うん! このままがいいなー」


そうして、また蝶姫は湯に浸かって風呂を満喫するのであった。



そんな蝶姫の返答に俯き、小さく呟く。


「・・・・・・そうか、、、残念だ。 じゃあな」


どこか暗い雰囲気で風呂を後にする狼徳。

しかし、そんな兄の言葉も存在も最早目にも耳にも入らない。

今はただ風呂を満喫するばかりであった。





部屋へ戻ると李凛が髪を拭いてとかしてくれている。


「本当に蝶姫様の髪って綺麗ですよね! 長くてサラサラして銀色に輝いている!」


女である自分でさえも見惚れるくらいであった。

そして、その美しい髪にも引きを取らない美貌。


風呂上がりと言うこともあって、余計に美しく見えた。


それと同時に、この性格じゃ無ければ今頃男に引っ張りだこなのにと残念がる蝶姫。




「ねー李凛。 貴女はこの生活を変えたい? それとも変わらず今まで通り過ごしたい?」


突然の真面目な質問に思わず唖然とする。

今までそんな話をしたことなど一度もない。


「ど、どうしたんですか?! ま、まさか長湯し過ぎて体調が悪いんじゃないですかー?! 直ぐに医師を呼ばなきゃ!!!」


蝶姫のおかしな言動に慌てふためく。

そんな李凛を見て、流石にムカッときたのか頬を膨らます。


「むーーー! お兄様がお風呂で言ってたんだよ!

李凛はどうかなーって」


その言葉で納得する。

蝶姫からその言葉が出るはずがない。


だが、それでも不思議だった。

人の話など右から聞いて左から流すような蝶姫が

未だにその言葉を覚えているなんて。


「んー、難しいですね。 毎日同じ繰り返しでは飽きてしまう。 でも、そんな毎日の暮らしが幸せ。

当たり前なんてことは無い。だっていつ死ぬか分からないんですから。という事で、程よく変える。

ではダメでしょうか?」



李凛にもその質問は難しかった。


だが、その答えもあるかと納得もした。


「なるほどねー。それもいいかもね! でも私はこの生活に満足しているしこのままでもいいなー」


李凛は思う。だろうなと。


聞かなくてもわかる答えであった。




「ふふっ、そうだと思いました! さっ、終わりましたよ! ベッドに入って寝てくださいね! おやすみなさい」


「うん! おやすみー」




こうして部屋の明かりは消え、一人ベッドの中に入るのであった。


李凛の不安も他所に、あっという間に眠りにつく蝶姫。

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