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遅すぎる後悔

蝶支城を取って早二ヶ月。


蝶姫は雷火と共に蝶支城へと向かっていた。




「ねぇ、雷火・・・・・・さっきの話本当だと思う?」



雷火の後ろに乗っかり困惑した表情でそう訊ねる。



「どうだろうな。 生きていれば耳にしたはずだが。

とにかく自分の目で見るしかないだろ。

急ぐぞ」



険しい表情の雷火。

僅かな護衛を連れて急ぎ蝶支城へと向かう。



(お願い、、、貴方であって、、、獅徳。)



蝶姫の頭に浮かぶ獅徳の顔。





〜数日前〜


蝶姫は李凛や雷火、鳳金と共に昼食をとっていた。

蝶支城を奪取してからは、戦争は起こらず小競り合いもなかった。


いや、正確には蝶支城へ攻めてこようとしていたが、その手前の山賊に取られた古城で苦戦していたのだ。



「どうやら、また狼徳軍は山賊にやられたようですね。

これで6度目ですよ。 ここまで強いと流石に私も気になりますね」



鳳金の伝令から聞いた内容を皆に伝える。

たかが山賊が、それも小規模なのに六回も正規軍である

狼徳軍を跳ね除けているのだ。


そこらの将軍でも出来ないだろう。


何せ古城はぼろぼろであり、守るには欠陥だらけなのだ。


それを一度や二度ならず六度もである。


これは驚かずにはいられない。



「確かにな。 俺達としては蝶支城が守られるから安心だが

一度調べた方がいいかもしれないぞ」



雷火の言葉に頷く鳳金。



「あのさ、その山賊さん達のおかげで蝶支城は攻め込まれてないんだよね? だったら御礼しようよ! それか仲間になってもらうとか!」




「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」




三人の顔が固まっている。

蝶姫には理由が分からず、自分は首を傾げていた。



すると、困った様子で李凛が口を開いた。



「あ、あのですね蝶姫様、山賊は人を殺して金品や食料を奪い生活しているのです。 人殺しが好きな連中が集まって出来るのが山賊なんですよ! そんな人達を仲間にしたなんてあったら蝶姫様の名が一気に地に落ちます!

それこそ誰も慕ってくれなくなりますよ!」



李凛のあまりの鬼迫にたじろく蝶姫。



「わ、わかったよ李凛、、、でもさ! 中には仕方なくなってる人もいるんじゃない? 住む家がないとか家族を失ったとか!」



その言葉に微笑む李凛と鳳金。

雷火は腕を組み目を閉じている。



「ふふっ、そうですね。 皆が皆悪い人では無いかもしれません。 ですが、『山賊』という名詞が、一般の人にとっては良くない言葉なのです。 だから、山賊は忌み嫌われる存在なのですよ。 中には蝶姫様の言う通り、いい山賊もいるかもしれませんがね」



優しくそう語り掛けると蝶姫も笑顔になった。



「そうだよね! もし、お兄様と戦ってくれている山賊がいい人だった話して仲間になってもらおうね!」



そう話しながら、皆で昼食を済ませると鳳金の伝令兵が部屋へと入ってきた。



「失礼します! 急ぎ報告することが!!! あっ、蝶姫様もいらっしゃったのですね! ちょうど良かったです!」



「えっ? 私? なんで?」



何故自分がいて良かったのか。

蝶姫は戦争関係は全く関わっていない。


つまり、敵が攻めてきたとかでは無いのか。

そう思っていると、



「蝶支城を守る緋水将軍からの報告で、数キロ先で古城に

篭っている山賊の中に、『獅徳様』らしき人物を見つけたとの報告あり!!!」





「カランッ」




蝶姫の手から溢れ落ちる銀のフォーク。



『獅徳』


蝶姫の弟であり、半年以上前に兄である狼徳の反乱に巻き込まれ

死んだと思われていた男だ。



大切な家族。

大切な弟が生きているかもしれない。


蝶姫の目からは自然と涙が零れていた。



「あれっ、、、おかしいな、、、まだ獅徳って決まったわけじゃないのに、嬉しくて涙が出るよ・・・・・・獅徳に会いたいよ・・・・・・」



「蝶姫様、、、」



そっと蝶姫の肩に手を置く李凛。



蝶姫は獅徳とそんなに仲良くはなかった。

決して悪い訳では無い。


むしろ獅徳の方は蝶姫との仲を深めようとしていたのだ。


だが、蝶姫はその性格から全てを面倒臭がり、李凛以外との距離を置いていた。


そして、その愚かな行動は獅徳が死んだと伝えられてから一気に

後悔となって襲いかかってきたのだ。


だが、それも後の祭り。


もっと話していればよかったと、

もっと遊べばよかったと、

そう思っても獅徳はいない---はずだった!



だけど、獅徳が生きているかもしれない。


そう思ったら蝶姫はいてもたってもいられない。




「雷火! 鳳金! 李凛! 私、直ぐに行きたい!!!

自分で迎えに行きたい!!!」




そんな突然の申し出ではあるが、その想いを止める程三人も野暮では無い。



もちろん首を縦に振り、蝶姫は雷火を護衛に蝶支城へと向かったのだ。




そして、今---。



蝶巴城が見えた。

蝶巴城を潜り、その先を行けば蝶支城はある。


初めて見る城ではあるが、蝶姫は見向きもしなかった。


最早蝶姫の頭は獅徳の事でいっぱいだ。




「開門せよ! 蝶姫様と雷火将軍が通る!!!」




雷火の副将である、朱抗が前に躍り出て声高らかに叫ぶ。

すると、門はすぐ様開かれた。



予め、二人が通ることは伝えられてあるからだ。



そして、火急を要する為、出迎えは無しとも伝えてある。



蝶姫達、迅雷隊30騎はそのまま門を潜り真っ直ぐ抜け東門も過ぎて蝶支城へと目指した。




不安げな表情で馬から落ちないようにしっかりと雷火に抱き着く蝶姫。




「大丈夫だ。 獅徳王子を見間違うわけが無い。 このまま蝶支城へ入り、軍を編成したら直ぐに確認しに行くぞ」



蝶姫の不安を振り払うようにそう伝える。



「うん、、、自分の目で確認するよ」



そうして、いよいよ城へと到着した蝶姫一行。


果たして獅徳は生きているのか、、、

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