蝶と蜂
『蝶支城陥落』
その報せは蝶姫が待つ蝶龍城まで届いた。
「流石に三人も五行将軍が揃えば負けは無いですね。
三人のおかげで予想より遥かに早く戦が終わりました。
恐らく被害も想定より少ないでしょう。
本当に頼りになりますね」
蝶姫の隣でそう話す鳳金。
「違うよ鳳金! 四人の力だよ!」
蝶姫の言葉に首を傾げる。
戦ったのは三人なのに何を言っているんだと言わんばかりに疑問を浮かべていた。
すると、蝶姫の後ろに控える李凛も思わず笑みを零す。
「ふふっ、鳳金様は頭は凄くいいけれどそういうところは抜けてるんですね!」
「なっ!?、、、なんの事です?」
「戦ったのは三人だけど、作戦を考えたのは鳳金でしょ?
鳳金の作戦がなかったらそもそも戦いにもならなかったじゃん! だから鳳金のおかげなんだよ! つまり、四人のおかげだね!」
その言葉でようやく二人の意図を理解した。
そして、もう一人の勝利でもある事がわかった。
「それを言うなら蝶姫様がいなければ私達は、戦っておりません。 となると、蝶姫様も入れて5人の力、いえ、李凛さんが同盟を組んでくれたおかげでこの作戦が結びつきました。
つまり、六人の力ですね」
そう。
元々を言えば蝶姫が立ち上がらなければ、五行将軍は誰一人
戦うことをしなかっただろう。
それに同盟を組んでもらえなければ今回の作戦も結ばれなかった。
となると、二人の働きがかなり大きいことになる。
「そんなこと言ったら戦ってくれた兵士の皆の活躍もあるよ? だから、、、皆の力だね! 皆に感謝しなきゃ!
みんなーーーッ!!! ありがとおおおッ!!!」
城壁の上から蝶支城の方へ叫ぶ蝶姫。
聞こえるはずもないが、叫ばずにはいられなかった。
そんな蝶姫を優しく見守る二人。
一先ずは蝶支城を取ったことにより、蝶姫達の基盤は厚いものとなった。
何せ、蝶支城と蝶巴城の城の連携は鉄壁なのだから。
敵がこちらへ来るには蝶支城を越え、蝶巴城を取らなければ
本丸である蝶龍城へは来れない。
だが、この二つの城を取るには何万、いや何十万もの兵が必要となるだろう。
いや、そういえば蝶支城と狼徳の支配地域の間にある古城で
山賊が根城を作り篭っていると言っていた。
それも、何度も狼徳軍を撃退しているとの事。
つまり、蝶支城へ狼徳軍が来る前の防壁となって貰えるのだ。
という事で鳳金も暫くは戦争は起こさない予定。
まずは蝶支城の内政を落ち着かせること。
そして、それぞれの城の軍の配備だ。
現在蝶姫軍が保有する城の数は4つとなった。
雷火が所有していた蝶龍城。
豪覇が所有していた蝶明城。
陸真が蝶姫に心打たれ、明け渡してくれた蝶巴城。
最後に、先程皆の力で奪取した蝶支城である。
兵の数も五万まで膨れ上がり、だいぶ戦力は補強できた。
次に取るべき城はここより南西にある蝶華城。
緋水の所有していた城だ。
だが、今は狼徳の手により奪われてしまっている。
とはいえ、蝶明城に居る豪覇将軍が目を光らせているため
相手も迂闊に手は出せない様子。
彼がいる限り南の心配はしなくて済みそうだ。
鳳金はすぐ様、軍の配備を急いだ。
蝶龍城には蝶姫と鳳金、そして雷火が。
蝶明城は引き続き豪覇が守り、蝶巴城へは淋木。
そして蝶支城は緋水が守ることになった。
蝶龍城一万。 蝶明城一万五千。 蝶巴城五千。 蝶支城二万が
振り分けられた。
やはり対狼徳の最前線に位置する蝶支城は、壁を暑くしなければならない。
よって二万の兵が配備された。
こうして戦後処理も兼ねて一ヶ月の月日が流れる。
「ねぇ、雷火! 私強くなってるかな? 早く雷火以外の人とも戦ってみたいな!」
相変わらず毎日の日課である雷火との訓練は続いている。
雷火が戦争に出てる時は当然出来ないが、いる時は必ず行っていた。
最初の頃はたくさん豆もでき、剣の重さで直ぐにばてていたが
今では一時間ぶっ通しでも訓練が出来ている。
そして、剣の腕も著しく上がっていた。
だが、雷火以外との訓練は一度も行っていない為、蝶姫自身は
自分がどれくらい強くなったのか実感出来ていない。
だから、他の兵士と訓練がしたくなってきたのだ。
満遍の笑みでそう話すも、雷火はいい顔をしていない。
何故ならば、
(今の蝶姫が兵士とやれば必ず蝶姫が勝つだろうな。
下手すれば俺の迅雷隊ともいい勝負が出来るかもしれねぇな。
となると、男の兵士達が負けたらやる気が一気に削がれるかもしれねぇ。 暫くはこのまま俺とやってもらうしかないな)
そう。兵士は皆男だ。
それも蝶姫を慕い、守る為に皆戦っている。
それなのに、蝶姫に負ければその兵士達は皆心がボロボロになるかもしれない。
そうなるのはまずい。
という事で、引き続き雷火との個人訓練が続く。
「いや、だめだ。 俺ならともかく、兵士達ではお前に怪我をさせるかもしれない。 このまま俺とやるぞ。 もう少し上手くなったら考えてやろう」
雷火の言葉に頬を膨らます。
「むううぅ、、、雷火とやっても強くなってるのか分からないもん! 絶対いつか参ったって言わせてやるんだから!!!」
そうして、蝶姫は再び雷火へと切り結ぶ。
蝶姫の剣は特殊であり、普通の剣ではなくレイピアの様なものが使われている。
これは雷火が蝶姫に合った武器を見繕ったのだ。
彼女の体の柔らかさと鋭い突き。
まさにレイピアがピッタリであった。
蝶の様に舞い、蜂のように刺す。
それが蝶姫の戦い方であった。
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