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親子の戦い

朱抗の父、朱邦。


まさに親子の対立であった。



息子であり、敵である朱抗を睨む父。



「何をしに来た。 まさか、息子であるお前自ら大将である私の首を取りに来たのか?」



朱邦の周りにいる護衛達もこの緊張した空気に唾を飲む。

当然朱抗の実力は耳にしており、雷火の副将と言うことも知れ渡っている。



険しい表情の朱邦に比べ朱抗はというと、なんら普段と変わらない表情で見返していた。




「父上は戦争がお好きですか?」




いきなりの言葉に驚く。

そんなの誰も好きな人なんかいないに決まっている。


いや、それは下で戦う兵士が思っている事だ。


実際、上に就いている重鎮や狼徳なんかは戦争が嫌いとは言わないだろう。


なぜなら自分達は戦わず、下の人間に戦わせているのだから。



自分はどうだ?

長年将軍を務め戦ってきたが、好きか嫌いかと言われれば当然嫌いである。


兵士達が死ぬのは仕方がないかもしれない。


だが、女子供まで殺されるのは憤怒の思いが募る。

そして、戦争が憎い。



つまり、答えはそういう事だ。



「何を言っている。 好きなわけが無いだろう。

だが、戦わなくては終わらないのだ! 狼徳王子が蝶国を平定しなければ終わらないのだ!!! だから、貴様らも無駄な抵抗はやめ、一つにならなければなるまい!」




熱く語る父の言葉を聞き呆然とする息子。


しかし、少しすると急に吹いてしまった。



「・・・・・・ブフッ!!! ハッハッハッ!!!」



急に笑い出す息子に対し当然怒りを覚える。

眉間に皺を寄せ叱責する朱邦。



「なっ?!!! き、貴様ッ!!! まぁいい。 所詮馬鹿息子にはわからない話であったな」



そう言って鞘から剣を引き抜く。


当の朱抗はというと、大笑いしていたのもようやく鎮まり

再び朱邦に目をやる。




「いやぁーーーすみません父上。 頭のいい父上からまさか

そんな愚考な言葉が出てくるとは思いもしなかったので」



更に挑発する朱抗に、朱邦だけではなく周りの者達も怒りを覚えていた。

だが、朱抗は気にせず言葉を続ける。



「戦争は蝶国を平定しても終わりませんよ父上。

蝶国を平定すればその次は他の国。 そして、全ての国を平定しなければ戦いは永遠に終わりません。狼徳王子に付いても

この戦いは永遠に終わらないのですよ!」



息子の真面目な面持ちに驚く。

いつもはやる気のなく、雲の様に自由な人間と思っていたが

今の彼は違う。


真剣な眼差しでしっかりと父を見据えている。



「そんなの蝶姫に付いても同じではないか!」



「それは違うッ!!!!!」



突然の朱抗の張り上げた声にまたしても驚く。

今まで父に反論したことなど一度もないのだから。


だが、そんな息子が今は声を張り上げ見つめている。



「狼徳王子は自分が国力を広げたいが為に戦っている。

全ては私利私欲の為に、、、だから、前国王である父も殺し実権を握ったんだッ!!!


・・・・・・ですが、蝶姫様は違います。

父を殺され、弟を殺され、大切な仲間も殺されました。

そんな戦争に嫌気を差して、まだ年端もいかない蝶姫様は

戦っているのです!!! 大嫌いな戦争を無くす為に!

剣も持った事がない姫様が!!!

父上は頭脳明晰の御方のはず! 自分の付くべき主を間違えないでください!!!」




息子が熱く語れる人間だなんて知らなかった。

ここまで熱い思いを秘めていたなんて知らなかった。



そして、自分の心にモヤがあったかのように、今その心は解き放たれた気がする。

気付けば息子の言葉に感銘を受けていたのだ。



朱邦が呆然としていると、近くに居た一人の衛兵が剣を抜いた。



「朱邦様! この様な戯言に耳を傾ける必要はありません!

朱邦様の愚息は私がこの剣で断ち切りましょう!!! 死ねッ!!!」




「ザシュッ!!!」




「・・・・・・朱邦様?、、、何故、、、」



朱邦目掛けて切り付けようとした衛兵は、背中から胸にかけて

剣を突き刺されたのだ。


朱邦の手によって。



それには周りの者はもちろん朱抗でさえも驚愕していた。

いや、笑っていた。



「やっぱり、父上は頭のいいお方です」



小さな声でそう呟く。



「おい貴様、、、私の息子に向かって愚息と言ったのか?

お前なんかよりも頭が良く腕の立つ人間に向かって愚息と言ったのか? 貴様が死ね」



朱邦は突き刺した剣をそのまま上へと上げ衛兵を斬り裂いた。


他の衛兵達も唖然としている。

何せ、息子とはいえ敵を助けたのだから。



「朱邦様、、、我が主を裏切るのですね?」



衛兵が10人槍を構えて朱邦へと向ける。



「ふん、貴様らは元々狼徳が寄越した兵ではないか。

どうせ、私の監視か何かだろう。 息子よ、手を貸してくれぬか? 私一人では手が足らぬ」



その言葉に朱抗は微笑む。



「もちろんですよ父上。 この歳になってようやく親孝行が出来そうですね!」


「バカを言うな。 お前が攻めてこなければこんな事にはなっておらぬわ」


「それこそバカを言わないでください。 自分が来なければ、父上はずっと馬鹿な主に仕えていたんですよ?」


「・・・・・・それもそうだな。 では今回の事は借り一つとしよう。

まずはここを切り抜けるぞ息子よ!」


「えぇ! 父上! 父上には指一本触れさせません!」



こうして朱邦と朱抗は親子で肩を並べて敵と戦う。

朱抗の力はもちろんだが、朱邦も負けていなかった。


息子と遜色ないくらいに強かったのだ。



そして、あっという間に二人は十人もの敵を殺してしまった。



拳を突き出す朱邦。

それに笑顔で答え、拳を突き出す朱抗。



こうして、蝶支城の戦いは朱抗の活躍もあり幕を閉じるのであった。

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