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最悪の再会

それはなんの前触れも無く起こった。


西門の予備兵にと配置されていた兵士達が一斉に門目掛けて走ったのだ。


門の前にも兵は配置されていたが数人しか居ないためあっという間に蹂躙された。


そして、その裏切り者の百名は迷うことなく階段脇にある通路へと入り門を開く為の装置へと向かう。



真ん中でその悲劇を見ていた朱邦も必死に叫ぶも既に遅い。



突如西門が開かれた。

いや、開けられた。



そして、門が開くと同時に騎兵達がなだれ込んでくる。



一体いつ入ってきたのだ。

常に城壁の上は見張りが沢山いた。


一部の隙もなく配備されていたのだ。


それなのに、百名近くの侵入を許してしまった。


朱邦は必死に考える。




「・・・・・・まさか、、、農民に紛れた? ついこの前麦の収穫に多数の民を駆り出した。 だ、だが、門兵にちゃんと戸籍の確認もさせたはず、、、一体どうやって、、、」



朱邦は頭が真っ白になっていた。

何せ、安全だと思っていた城の中に百人もの敵兵が紛れ込んでいたのだ。


しかも、それに誰も気付くことなく。



朱邦は考えてもその方法が全く分からなかった。


いや、いいところまではいっていたのだ。



答えは簡単。


門兵も蝶姫の手の者が成り代わっていたのだ。



侵入と変装の名人であり淋木の右腕である『無魂』の力によって。



つまり、淋木の配下は民の服装に変装し悠々と敵の城へと侵入する事が出来たのだ。


そして、本物の門兵はとっくに殺されていた。

家族でさえも無魂に気づけることが出来なかったのだ。



息子と思っていた相手がまさか、息子を殺した張本人だとも知らずに。




だが、今更知ったところで関係ない。

もう敵は城内へと続々と侵入しているのだから。



そして、周りの重臣達も皆慌てふためいている。

これからどう対処すればいいのか。

何から始めればいいのか。

兵達の配備はどうすればいいのか。


しかし、今の朱邦にそんな言葉は何も耳に入らなかった。


彼が少し優秀であるが為に、この失態をいつまでも引き摺っているのだ。

そのプライドを粉々にされて立ち直れずに。



皆が朱邦に助言を求めるも、朱邦の視点は定まっておらず

心ここに在らずといった感じである。



そうやっている間も城内には続々と敵が入ってきているというのに。





「進めーッ!!! 俺達烈騎兵の速さで城内を蹂躙しろッ!!! 斗亜! そのまま右回りで行ってくれ!

俺は左へ回る!」



副官である斗亜に指示を出しながらも、得意の槍裁きで馬上より敵を殺していく。



「了解! ドジうって死なないでよね将軍!」



そう茶化された緋水はニヤッと笑いそのまま敵を貫いていく。



「へっ、馬鹿言うな! 馬上の俺様はな---最強なんだよ!!!」



自画自賛。

だが、実際に馬上においてはこの大陸でも緋水の力は五本の指に

間違いなく入るだろう。


自他ともに認めるその強さは、まさに最強である。


そんな緋水を横目で見詰める斗亜。



(全く、、、いつもはちゃらんぽらんな癖に戦場に出るとカッコよくなるんだから、、、)



恋する乙女の様な目線で緋水の戦いぶりを見詰める斗亜。


斗亜も緋水の副将なだけあって、女性であるにも関わらず馬上においては緋水に次ぐ力を持っている。



緋水の力強い槍裁きとは対称に、斗亜の槍裁きは華麗であり一突き一突きが洗練されていた。



そして、斗亜に続く兵達も皆斗亜を妹の様に可愛がっている為

斗亜に怪我をさせまいと鬼気迫る勢いで敵を斬り倒していく。






雷火も淋木も緋水隊が城内へと入ると、その後に続いて北南へと別れる。


そして、最後に入るのが雷火の副将であり迅雷隊を率いる朱抗。



「我等はこのまま西門を制圧する! 敵は我等の10倍!

だが、敵の戦意は落ち、我等の武力も一人十殺の力を持っている! つまり、余裕だ。 迅雷隊隊長 呂凱ロガイ

お前は右を頼む! 俺は左へ!」



「お任せを!!!」



朱抗は力はもちろんだが、統率力も秀でている。

彼もまた、本来なら一人で兵を率いる将軍並の力を持っているからだ。


だが、朱抗は雷火を尊敬しており、崇拝している為副将の座に居座り続けている。



そして、迅雷隊長である呂凱もまた将軍並の力を持っていた。


統率力はまだ備わってないにしろ、その武力は将軍並である。

雷火、朱抗に次いで三番目の強さを持っている。


いや、もしかしたら朱抗よりも武力に於いては強いかもしれない。



朱抗の指示の元、兵を二つに分け階段を登り城壁へと上がる呂凱。

目の前には二千以上の兵士が城壁の上で待機していた。


戦意が落ちているとはいえ、彼等もまた背水の陣であり、飛び降りて死ぬか戦って死ぬかの二択の為決死の覚悟を持っている。



だが、相手が悪すぎた。



呂凱の振るう偃月刀が一度で五人の人間を切り裂く。



あまりの出来事に敵兵は唖然としていた。


呂凱のたった一振の攻撃で、せっかく上がった士気がまた失われてのだから。



そこからは最早蹂躙である。


呂凱ももちろんだが、精鋭である迅雷隊。

一人一人の武力はもちろん連携も凄まじく、割って入る隙がない。


まるで一つの塊の様に呂凱を筆頭に次々と敵を葬っていく。



肉が散り、血が吹き出し、まさに地獄絵図だ。


逃げ場もなく戦う敵兵達が思う事は一つ。



『早く降伏してくれ』だ。



総大将である朱邦が降伏を申し出てくれればこの勝ち目のない戦いに終止符が打たれる。


つまり、大将の判断で何人もの命が救われるのだ。



だが、彼は今正常な判断が出来ないため、放心状態である。


よってこの戦いは終わることなく、次々に兵士が死んでいく。

それも狼徳軍の兵士だけが。






真ん中で呆けた顔で戦場を見渡す朱邦。

周りの重臣達も、最早朱邦に頼ることは無かった。


何せ、生きた屍のようになっており、何も期待出来ないからだ。


いや、この状況に於いては誰が総大将であろうと盛り返すことなど出来ないだろう。


つまり、半ば諦めているといった方がいいかもしれない。



だが、突然朱邦が動く。



「ッ?! お、お前は何故ここに?!」




目の前に現れたのは雷火の副将である朱抗であった。

たった一人現れた朱抗に驚く朱邦。






「お久しぶりですね、『父上』!!!」

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