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李凛の眼

李凛の無礼とも取れるその発言に周りの空気が瞬時に変わる。



「本当の王妃様はどこですか?」



続けて李凛はそう語る。

隣に控える銅刹も冷や汗ものだ。



「李、李凛殿。 何を言っておられるのですか! 目の前の玉座に座る御方こそが鷲国の王妃様です。 直ぐに謝罪を」



玉座に座る者こそが国のトップに君臨する者。

これは一般常識であり、子供でもわかる。

そう思っていたが、まさか李凛が知らないとは思いもしなかった。



「いえ、違います。 王妃様はあの方ではありません」



李凛の変わらぬ表情。

そして、折れぬその意思に銅刹は驚愕する。



そして、なんとも言えぬ空気の中、玉座に座る者がとうとう口を開く。



「では、本物の王妃はどこにいると言うのですか?」



玉座に座るその女性は李凛にそう訊ねる。


李凛は辺りを見渡し、一人一人の顔や挙動を観察した。

そして、しばらくの間様子を伺うと一人の文官を見詰めた。



そのまま、文官の女性に近付くと膝をつき頭を下げる。



「鷲国の王妃様、挨拶が遅れてしまい申し訳ありませんでした。 蝶国の代表で参りました、外交官の李凛と申します。

以後お見知りおきを」



その流れるような姿に周りの者も目を見開く。

特に、銅刹は冷や冷やものだ。


何せ、そこらに居そうな文官に挨拶をしているのだから。

間違っていたら交友もへったくれも無い。



唾を飲み、その様子を伺う。



暫くの沈黙が過ぎ、とうとうその文官が口を開く。



「よく分かったのう。 如何にも妾がこの鷲国を治める楊麗ヨウレイじゃ。 試す様な真似をしてすまぬな。 暫し着替える故に待っててくれぬかの」



そう話すと李凛は普通に返事をし、銅刹は再び驚愕する。



(な、何故わかったのだ?! あの者はただの文官にしか見えぬ。 誰も気付けるはずがない、、、李凛殿には何か我等にはない力があるのかもしれない・・・・・・)



李凛の垣間見える生まれ持った力。

それが今になって開花しようとしていたのだ。




偽物の王妃は玉座を降り、本物の王妃が正装に着替えてやってくる。


先程までとは比べ物にならない程、その姿は様になっており

如何にも王妃の姿であった。



「改めて、試す様な真似をして申し訳なかった。

昨今、蝶国の国力は低下の一方でありようやくここ最近盛り返してきたと聞く。 だが、その中での反乱。

お主達の力を見る為に試させてもらった。許せ」



玉座に座る本物の王妃である楊麗がそう話す。



「いえ、そう思われるのも無理はありません。

王妃様が謝る必要はありません。

改めて、私は蝶国の李凛と申します。

この度はこの会談を用いてもらい感謝致します。

単刀直入に話させて頂きますと、私達と同盟を組んで頂きたいのです」



突然の言葉に今度は周りの文官達が驚愕する。

いきなり、話を切り出すのは礼儀として欠けるとも取れるから。


だが、当の楊麗はというと何やら不敵に微笑んでいる。



「ほう? 妾もその方が好きじゃぞ? 余計な身の回りの話など無用。 大事なのは本質のみ。 じゃが、その前に一つ聞かせてくれ。 何故、妾が王妃とわかった?」



それには楊麗だけでなく、文官達や銅刹も耳を傾ける。

むしろ、気になっていない者は一人もいない。



「鷲国の力は勿論ですが、それ以上に王妃様の智謀により

ここまで栄えたと聞いています。

ですが、玉座に座る御方は失礼ではありますが、そうは見えませんでした。

どこか不安そうな表情、震える身体。

とてもそうは見えませんでした。

そして、辺りを見渡し一人だけ目が違うのもわかります。

それにその佇まいも他の方とは違いました。

王妃様のその持つ力は隠し切れるほど小さなものでは御座いません」



黙々とそう話すその姿に、皆が驚く。

しかし、説明されてもやはり銅刹には区別がつかない。


やはり、李凛の生まれ持っての才能なのだろう。



「であるか。 妾の才能は隠しきれぬか、、、くっくっくっ。

では、本題に入ろう。 答えは『良い』じゃ」



その言葉に李凛以外の皆が驚く。

更に、文官達も何やら騒いでいる。


そんな簡単に国家の大事な決め事をしてしまう楊麗。


だが、誰も楊麗に文句を唱える者はいない。

なぜなら今まで楊麗のお陰でここまで来れたのだから。



そして、李凛は改めて礼を述べる。



「有り難き幸せに御座います。

この同盟は我々にとって大きな糧となります。

改めてよろしくお願いします」



「うむ。 して、時間はあるかのう?

出来ればお主と二人で語り合いたいのじゃが」



「大丈夫で御座います。

私も王妃様との会談を楽しみにしております」



「くっくっくっ。 お主の度胸も気に入っておる

では、この度の会談はこれにて終いじゃ。

李凛と言ったかの? 暫し、部屋で待っていてくれ」



流れるように終わる会談。

互いに簡潔に語るもの同士だったが故に瞬時に終わった。


これも、李凛の力のおかげである。

そして、李凛を抜粋た鳳金の力も。



こうして、李凛の観察眼に加えて外交の力で蝶国と鷲国は

同盟を結ぶのであった。

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