世界情勢
蝶巴城奪取の報せ。
これで蝶姫が所有城は3つとなった。
対する兄、狼徳の持つ城は7つ。
まだまだ兵力的にも倍以上の差はあるが、こちらにはそれを覆すだけの個の力がある。
五行将軍に豪覇将軍だ。
彼等の力は百人力、、、いや万人力である。
拡張無しにそう言えるだろう。
彼等が戦場に出るだけで味方の士気は上がり、敵の戦意は喪失する。
この戦力でようやく狼徳軍と五分になったと言えるだろう。
蝶龍城では蝶姫と雷火、鳳金が集まっていた。
「ここ、蝶龍城には我等三人が、そして蝶明城には豪覇将軍、蝶巴城には緋水と淋木に治めてもらいます。
淋木の話によれば、蝶巴城を奪取して二日後に狼徳殿の軍が来たようです。 まさにタッチの差でした。当然敵は、諦めて引き返したとのこと。 そこから察するに、恐らく敵もしばらくは攻めてこないでしょう。 いや、来れないですね。
何せ、敵は私達だけではありません。 周りの国も黙って見ている程甘くないでしょうからね」
蝶国の他には7つの国が存在する。
城の多さ、つまり勢力の大きさ順に話すと、
龍国(200強)→ 虎国(150) → 鯨国 (130) →鷲国 (100)
牛国 (80)→ 蛇国 (50)→蜘国 (30)、そして最後に我等が蝶国が10個である。
龍国に至っては20倍である。
蝶国は圧倒的に戦力が少ないのだ。
だから、本来なら内乱などを起こしている場合では無い。
外への敵にこそ備えなければならない。
せめてもの救いは、隣接する敵国が蜘国、牛国、鷲国な事くらいだろう。
もし、上位の三国のどれかと隣接していればすぐ様攻められていたはず。
龍国、虎国、鯨国は日々小競り合い程度の戦をしている。
牛国、蛇国、蜘国も同じだ。
対して鷲国は、日々静観をしており、自ら攻めるといった事はあまり無かった。
蝶国も構えとしては鷲国と同じである。
来たら殺るが来なければやらない。
それに、国力は低くともやはり、五行将軍の名は大きかった。
加えて豪覇大将軍の名も。
だから、他の国も下手に蝶国へ攻めてくることは無い。
小国に削られれば、他の大国に漁夫の利を狙われるからだ。
とはいえ、今は内乱の時。
他国が易々と見逃すはずがない。
恐らく攻めてくるはずである。
だから、鳳金は今は狼徳よりも外へと目を光らせていた。
狼徳の城へ攻めるのなら良し。
だが、もしコチラへ攻めてくるのなら挟撃される恐れがある。
そうなれば数の暴力で一気に攻められてしまう。
鳳金は雷火達に助言を貰いつつ試行錯誤する。
その時だった。
突如淋木の配下がやってきた。
淋木の指示の元、周りに多数の配下を配置し縄を張り巡らせていたのだ。
恐らく何か情報を得てやって来たのだろう。
「報告! これは狼徳殿や他国とは関係がないのですが、ここより南東に4日の距離、そこへめっぽう強い山賊が根城を造り篭っているとの事! 何度も狼徳軍を押し返しては撃退している様子!
如何致しましょうか?」
「ほーう? そんなに強いのならぜひ手合わせ願いたいものだ」
雷火は興味津々の様子。
だが、この城は離れる訳にはいかない。
「ですが行く事は許しませんよ。 今は特に警戒が必要です。
中だけではなく外も」
雷火もその事を理解しているからこそ、反論はしなかった。
それに山賊がいくら頑張ろうと、正規兵に勝つ事など出来ない。
恐らく、その内狼徳が本腰をいれ山賊を討伐するだろう。
「わかっている。 しばらくは練兵に励むとしよう。
蝶姫、お前もしばらく訓練は出来ていない。
まだ、お前にやる気があるのなら付き合うがどうする」
「もちろんやる! 私だって自分の身は自分で守りたい。
強くなるって決めたから・・・・・・」
手を握り締め、その手を見詰める蝶姫。
剣をたくさん振るっているからか、手も固くなってきている気がした。
「なら行くぞ。 鳳金、何かあれば頼む。 俺達は練兵所にいる」
頷く鳳金。
そして、雷火と蝶姫はその場を後にした。
鳳金は再び世界地図を見詰める。
「あれ? 鳳金様! 蝶姫様はいらっしゃらないのですか?」
入れ替わる様に入ってきたのは蝶姫の専属人である李凛だ。
「これは李凛さん。 蝶姫様ならちょうど雷火と訓練に行きましたよ。 練兵所に行けば会えるかと」
「そうなんですね! それなら後にします! それよりも鳳金様は
地図を見つめてどうしたのですか?」
「いえ、今は内乱の時ですが、外にも目を向けなければなりません。 いつ隣接する国が攻めてくるかわからない今、どのような手を打とうかと思いまして」
李凛は軍事関係が全くわからない。
だが、幼少期に世界については学んだことがある。
そして、それぞれの国の位置も理解していた。
「そうなんですね。 でも、確かに外も怖いですよね。 そういえば、昔から鷲国とか友好関係と聞いていましたが、それを足掛かりに何か出来ないですかね?」
不意に発した李凛の発言。
それと同時に鳳金はその言葉で閃く。
「そうか! その手があったか!、、、李凛さん!!! 貴女には
外交の素質があるかもしれません! 今後も私が行き詰まった時は助言して頂けますか?」
いつもは物静かな鳳金である為、こんなにもズカズカと来る姿に驚きを隠せない。
彼は興奮して気付いていないかもしれないが、鳳金の手は李凛の手をしっかりと握りしめていた。
鳳金も当然美男子であり、思わず頬を赤らめる李凛。
結果的に良かったと安堵するばかり。
しかし、李凛の発言した言葉で奇しくも、蝶国の在り方を大いに変える事となるのであった。
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