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歳を重ねて

蝶龍城の危機に豪覇将軍が自ら駆けつけてくれた。


一番敵の数の多かった蝶姫、鳳金の居る南の方より突撃をする豪覇。



彼の武力は凄まじく、まさに一騎当千の勢いであった。

そして、彼の後ろに続く兵士達も歴戦をくぐり抜けた強者達ばかりであり、相手は全くといっていいほど相手になっていない。

それほどに豪覇とその率いる軍は強かった。




その様子を城壁の望楼より眺める二人。



「・・・・・・蝶姫様は、豪覇殿がやって来るのを分かっていたのですか?」



気になっていた鳳金はそう訊ねる。

蝶姫と共に豪覇の元へ訪れた緋水から会談の話は聞いたが、

こんなにも直ぐに動くとは思いもしなかった。



「んーん。直感かな? 豪覇将軍と話していた時に、なんだか私を見定めるような目で見ていたの。 だから、なんとか豪覇将軍のお目にかかれるような存在になれたのかな?

わかんないや! でも、将軍の目は腐ってなんかいなかった! むしろ、飛び立ちたくて仕方がないって感じかな!

だから絶対に来てくれるって信じてたの!」



それを聞いて驚く鳳金。

戦場に置いて不確かな事を信じるなど有り得ない。


負ければ全てが終わりなのだ。

だが、蝶姫は信じていた。

信じていたからこそ、中に避難せず外でずっと見据えていたのだ。


そして、現に豪覇将軍は来てくれた。


いや、これはたまたまではないのかもしれない。

蝶姫が行った時から、結果は決まっていたかもしれない。


彼女の人を惹きつける力。

弱い仔羊の様な彼女を守ってあげたくなる想い。


蝶姫だから、豪覇将軍は来てくれたのだ。



「蝶姫様、貴女は私の範疇を超えた存在です。 私が貴女と軍略勝負をしたら、もしかしたら負けるかもしれませんね」



鳳金の言葉に驚く。



「えぇっ?! それはないよー! だって鳳金はこの国で一番頭が良いんだからさ!---あっ!! 鳳金見て!」



自分の向いている方向の東の方。

そこから緋水率いる騎馬隊と先頭には雷火の姿が。



村の防衛戦を早急に鎮圧し、直ぐに駆けつけてくれたのだ。



「雷火、、、緋水、、、よかった」



二人の姿を見て安堵する蝶姫。






「んー? あれはジジイじゃねーか?! へっ、やっぱり来てんじゃねーか」



緋水は豪覇の姿を目にして思わず頬が緩む。

彼もまた安堵していたのだ。

なんだかんだ、来てくれると信じていたから。



「ちっ、ジジイがいなければこの城は、蝶姫は危なかったかもしれない。 緋水、俺はこの軍を指揮する大将を殺しに行く。

お前達は他の残党共を頼む」



雷火は歯を噛み締める。

豪覇がいなければ今頃は自分の大切なものを全て失っていたかもしれない。


自分の甘さにはウンザリする。

そして、その怒りは手に持つ剣へと伝わり、敵を次々と葬り去る。



「へいへい、ここは譲ってやるよ! んじゃあ100騎は雷火に!

残りは俺と掃討戦だ! 行くぞ!」



緋水の指示の元、兵達は別れ再び戦場を蹂躙し始める。


元々豪覇にも攻められており、更に雷火達の援軍。

つまり、敵は三方向から攻められることとなっていた。



士気は下がり、連携も機能していない。

敵軍は個々で戦い、敗れていく。



こうなっては時間の問題である。



そして、雷火もあっという間に敵の大将をその目で捉えた。


二人は向かい合い、同時に騎馬を駆ける。




周りが静かに見つめる緊迫とした中、勝負は一瞬で終わる。


雷火と敵の大将が交差する瞬間、目にも止まらぬ早業で雷火は

敵の槍を弾き、そのまま首を切り落とした。



あまりにも一瞬の事であり、皆何が起きたのか理解が追いついていない。



その時、緋水の配下の一人がその首を槍で突き刺すと高々とその首を持ち上げ、



「敵、総大将、馬雲将軍の首! 雷火将軍が討ち取ったり!!!」



その勝鬨が、戦争に終止符を打った。

いや、既に決まっていたようなものだ。



敵の残りも逃げるものや武器をその場に落とす物など多数いた。

数ではまだ互角近くはいるが、今更反撃をする力も残っていない。



雷火は念の為、注意の目を光らせていると、そこへ緋水がニヤニヤしながらやってくる。



「あーあー、また美味しいとこを取られちまったな!

今回は譲ったんだから次回は譲れよな!」



「ふん、早い者勝ちだろ。 目の前に入れば俺は殺す。

それよりも早く城に戻るぞ」



「へいへい」



二人は馬を揃えて城へと向かおうとすると、そこへ待ったがかかる。




「久しぶりだな雷火」



聞き覚えのある声に雷火は振り向く。


そこに居たのは巨大な馬に跨った巨躯を誇る豪覇将軍。

雷火も身長は高い方だが、豪覇の身長は頭一つ分か二つ分上をいく。


そして、この強面に巨大な偃月刀である。


こんな化け物が前から来たら誰だって恐怖に陥るし敵に同情してしまう。


そんな師匠である豪覇がコチラを見ていた。



「ジジイ、、、助かった。 ジジイがいなければこの城は、、、

蝶姫は危なかったかもしれない。 ありがとう」



雷火の言葉に目を丸くする豪覇。



「んんッ?! おい緋水! 聞いたか?! あのひねくれ坊主が御礼を言いよったぞ!!! こやつもいつの間にか大人になっておったのだな! ガッハッハッハッ!!!」



「ぷぷっ、た、確かに、、、ぷぷっ」



突如高笑いする豪覇に釣られて笑う緋水。


すると、雷火の頬は少し赤くなり、照れとイライラからその身体を震わす。



「て、てめぇら、、、いい加減にしろッ!!!」



まだ戦争が終わって間もないというのに、緋水を追いかける雷火。

そして、それを笑顔で見守る豪覇。

更には周りの兵士達も皆が笑っていた。



「なんで俺なんだよ?!!! 言ったのはジジイだろうが!!!」



「う、うるせぇ!!! 笑ったら同罪だろうが!!!」




いつまでも追いかけ合う二人を城壁の上から蝶姫も微笑ましく

見つめているのであった。

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