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蝶姫の一日

「起きてください蝶姫様! もう朝ですよ!」



無理矢理布団をはがされ、無理矢理起こされる。


まだ眠い目をこすりながらも上体を起こすと、目の前にいたのは専属侍女である李凛りりんの姿が。


年齢は18歳と歳も近いことから蝶姫が唯一心を許す相手。




「李凛早すぎるよー。今日は何も無いからまだ寝てたいのにー」



寝ぼけながらもそう話すと李凛から喝が入る。



「ダメですよ蝶姫様!!! 昨日は珍しく早起きしたから見直したのに! それに今日の予定はありますよ!

運動不足の蝶姫様にピッタリの予定がね!」



不敵な笑みで見つめる李凛に冷や汗を流す。




李凛に手伝ってもらいながら服装を着替える。

しかし、いつもの王室衣装ではなく服装は軽装で動きやすさを重視したものであった。



何かを勘付いたのか、駄々をこねる蝶姫を李凛は無理矢理引っ張って連れて行く。

連れて来られた先は練兵所。


そして待ち構えている人間が1人。


「お待ちしておりましたよ姫君!」


「瞬冷! 蝶姫様をよろしくね!」


李凛が瞬冷シュンレイと呼ぶこの男は兵士長を務めており、李凛と同い年であり幼なじみでもある。


若いながらも、剣技の才能を見出され隊長まで登り詰めた男。




「では姫君! まずは外周を走りましょう!

早朝に、それもこんな天気のいい日に走ると、とても気持ちがいいですよ! まずは軽く10周しましょう!」



瞬冷の眩しい笑顔が蝶姫に突き刺さる。

そして、大の運動嫌いでもある為、真逆の表情をしていた。



「えー。10周なんて無理だよ! せめて1周にしよー? それか歩いて行こう?」



なんとしてもサボりたい為、交渉するもそれを許さない存在が後ろで般若の様な顔で睨みをきかせていた。


もちろん蝶姫もその存在を背後から感じる。



「・・・・・・蝶姫様? 国王陛下に貴女を外出禁止にしてもらってもよろしいのですよ?」



国王から蝶姫の世話係を任命された李凛。

そんな彼女が国王に直訴すれば、恐らく国王は許可するだろう。


悪魔の様な顔で、悪魔の囁きをする李凛に口を膨らませ涙目になりながら睨み付ける。


「うぅーーー、、、李凛の鬼ッ! 悪魔ッ!!」


そんな戯言を言うが屁でもないとあしらってくる。



「はいはい。鬼でも悪魔でもいいですよー!

早く走らないと行っちゃいますよ?」




唸り声を上げながらも渋々了承し、瞬冷と共に走る事に。

そして、李凛から少し距離をとると蝶姫は振り返り

不敵な笑みで息を思い切り吸い込み、、、



「李凛のバーーーカ! そんな意地悪だとずっと彼氏が出来ないんだからねーーー!!!」




「ビキビキ」


李凛の眉間にシワがよる。



「蝶姫様ァーーーッ!!!!!」



鬼の形相で怒鳴りつけると、蝶姫はまるで悪ふざけをした後の子供のように瞬冷とその場を逃げ去る。



逃げるようにしてその場を後にする姫を見つめる。

いつしか鬼の形相は優しい母の表情へと変わっていた。



「全く、、、蝶姫様ったらッ・・・・・・ふふっ」



李凛にだけは心を開いてくれる蝶姫がなんだかんだ嬉しかった。

なにせ、彼女は母親が亡くなってから心を閉ざしてしまっていたから。



毎日少しでもいい。

少しでも笑顔が増えてくれたらなと。

そして、兄弟仲が良くなることを願うのであった。






「いいですよ姫君! このペースのまま走りましょう!」



ようやく1周が終わる頃、蝶姫は息切れをしながら、

そして今にも倒れそうになりながら走っていた。



「はぁ、はぁ、はぁ、もう、、無理、、、死ぬっ」



そんな悲痛な言葉を発するも、何故か瞬冷は笑顔のままであった。



「ハハハッ! 走って死ぬ人なんかいませんよ!

さっ! あとはたったの9周です! 頑張りましょう!!!」



全く息切れすること無く、むしろ先程よりも生き生きしている瞬冷に腹を立てながら走る蝶姫。




そして、3周が終わった頃。



「もう無理ーーーっ!!!」



その場に倒れ込む蝶姫。

そして、相も変わらず平然としており笑っている瞬冷。


胸が苦しく頭がフラフラする。

喉がカラカラだ。

そう思っていると、急に目の前に日陰ができる。



「蝶姫様にしてはがんばったんじゃないですか?

はいどうぞ!」



いつの間にか李凛がやって来て水を持ってきてくれた。



「水だーーー!!!」



蝶姫は奪うようにその水を取り、勢いよく一気に飲み干す。


一気に飲んだ為か、むせながらも、



「ゴホッゴホッ! はぁ、はぁ、ありがとう李凛。

は、走ったから、外出禁止は無しだよね?」



恐る恐るといった感じで訊ねる。

しかし、李凛は不敵な笑みではなく何故か純粋に笑顔を向けていた。



「もちろんですよ! 私なんて1周も出来ないと思っていたんですから! よく頑張りましたね!」



「えっ、、、う、うん・・・・・・」



褒められたようで貶されており複雑な感情を持つ。

だが、結果オーライである。


何せこれからも外出出来るのだから。

こうして長い長い朝の一日が終わるのであった。


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