二度目の戦争
城内では兵士達が忙しなく動いていた。
来るべき戦いに備えて戦の準備をしているのだ。
蝶姫城は蝶国屈指の防備を持つ城だ。
何せこの城は上に位置する大国を抑える国門の役割を果たしているのだから。
つまり、城の丈夫さは信頼出来る。
だが、如何せん兵力が足りない。
全方位を守り、予備隊も用意するとなると圧倒的に兵力が足りないのだ。
だからこその鳯金の策が今回は刺さる。
それも、普通の者では思いもよらぬ方法で。
「今回の策をなすには皆の力が必要です。 淋木、敵の位置はどのくらいですか?」
城壁に設置されている楼閣にて軍議は行われている。
「早くて3日の距離だね。 遅くても4日後には来るよ」
その言葉に唾を飲み込む蝶姫。
また始まる。
人と人が斬り合い殺し合う、あの戦いが。
震える手を必死に抑える。
すると、
「大丈夫だ。 俺達がいる限りお前の前に敗北は無い。 仲間を信じろ。 いいな」
蝶姫の震える手を握り締めそう話す。
「ヒュー!!! お熱いねー! 俺にも熱い抱擁をしてくれれば頑張れるんだけどなー?」
揶揄うようにそう話す緋水の言葉は、皆の緊張を取り払ってくれる。
「緋水が無事に戻ってきたらね!」
蝶姫も気付けば震えは止まり、笑顔までもがでるようになっていた。
-3日後-
朝日が登り、少し時間が経つと合図は突然始まった。
2回のドラが城内に鳴り響く。
『敵の襲来』を知らせる合図だ。
既に城壁の上には兵が配備されている。
南より北上して来る敵軍。
本来であれば南から来るはずは無い。
何故ならここ蝶龍城は蝶国の一番北に位置する。
来たから敵が来ることはあっても、仲間がいる南から来ることは無いのだから。
南にはより多くの兵士が配備されており、鳯金が直接指揮をする。
西は雷火が、東は緋水が、そして反対である北門は淋木が守る。
そして、蝶姫は李凛と共に真ん中にある城の上層部にて全貌を見守る。
「また戦争が始まるのですね、、、それも前回よりもたくさんの敵が」
李凛はこの戦争の行く末を不安に思っていた。
だが、蝶姫は違う。
以前とは違い震えも無くなっている。
何故ならば皆の力を信じているから。
「大丈夫だよ李凛。 雷火達の、五行将軍の力を信じよう」
蝶姫の瞳に不安はなく、決意を秘めた目で見つめていた。
「敵を登らせてはいけません! 左より敵が多数! 撃ち殺しなさい!」
鳯金の的確な指示の元、南門は好調だ。
そして、同時に東西北でも戦いが始まっていた。
つまり全包囲網である。
東西の城壁は雷火と緋水がいる限り落ちることは無い。
雷火は手に持つ剣で次々に敵を葬り去る。
西門の兵士は一番少ない為、どうしても梯子から敵軍が登ってきてしまう。
その為、矢で倒すのではなく、登らせてから斬り殺すことにしていたのだ。
対して緋水はその槍裁きで次々に敵を城壁より串刺しにしていた。
緋水の兵は槍兵が多い為、敵を登らせることなく奮戦している。
そして、北門も他の所よりも敵の数が少ない為、淋木の力で持つだろう。
淋木も自ら矢を射て戦っていた。
となると、問題は南門である。
兵力は多めに配備しているとはいえ、敵に比べれば微々たるもの。
時間が経てば経つほど、味方の劣勢となるだろう。
そして戦が始まり数刻が経つ。
五行将軍率いる兵士達は、精鋭であり疲れを見せることなく奮闘していた。
敵を寄せ付けることなく迎撃している。
だが、その悲報は突然やって来る。
「雷火様率いる西門が敵の手に落ちたとの事! 至急援軍を!」
その言葉に驚く鳯金の配下たる指揮官達。
確かに雷火の所は兵の数も少なく、早々に城壁上に敵が登っていた。
だが、雷火が居るから心配はしていなかった。
むしろ、一番大丈夫だと思われていた。
「フ、鳯金様! 至急援軍を! 奴らが城門を開けてしまいます!!!」
焦る指揮官を他所に鳯金はというと、なんと、、、
普段と変わらず無表情であった。
むしろ、何やら不敵な笑みを浮かべていたのだ。
「そうですか、、、頃合ですね。 銅刹! アチラは頼みましたよ」
鳯金の副官であり、鳯金軍で唯一の武闘派集団を率いる猛者だ。
身長は高く、大木の如き身体。 鳯金とは正反対である。
そして、知恵の鳯金には無い武力をこの銅刹が補っていた。
「はっ! お任せを」
そう話すとその場を後にした。
指揮官達はなんの事やらサッパリといった様子で困惑している。
だが、それも慣れっこであった。
何故ならば、鳯金は一定の味方でさえ、作戦を話さないのだから。
何よりも情報を重視しており、漏れることを許さない。
「さぁ、後は頼みましたよ。 『御二方』」
鳯金は迫り来る敵がいる南ではなく、反対の北の方向を見据えていた。
現に、敵の軍は今も西の階段を降り、内側より城門を開こうとしている。
だが、ここから鳯金は思いもよらぬ方法で打開するのであった。
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