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初めて見る戦争

場面は変わり、城壁の上では既に防衛体制が敷かれていた。


さすがは雷火が指揮する兵士なだけあって、精鋭揃いだ。


「将軍、敵の数は恐らく5千程かと! 南より真っ直ぐこちらに向かっています」


副官である朱抗がそう答える。


朱抗も若いながらに実力を買われ、今では雷火の副官の座にまで登り詰めた。



「あぁ。 こちらは狼徳の野郎のせいで大分減って

 3 千。つまり、余裕だな」




狼徳が謀反を起こした時、そこら中で反乱が相次いで起こった。



その波は当然雷火が治める蝶龍城でも起こったのだ。



当初は1万強の兵士を有していたが、狼徳の反乱が始まると夜のうちにこの城を出ていった。


城内で暴れなかっただけマシではあったがここまでの

戦力低下は予想外。


それほど狼徳の人を焚き付ける力が凄かったのだろう。




そう考えながらも敵を見つめる。


「私の兵も存分に使っていいのですよ?」


突如後方から現れる鳯金。

蝶姫と居るはずなのに何故だと、言わんばかりに驚いた顔をしていた。


「何故ここにいる? 蝶姫達はどうした?」


そう訊ねると鳯金は苦笑いをし、その後ろから蝶姫と李凛が顔をひょこっと出す。


「隠れていろと言っただろうが。 これは遊びでは無  い。本物の戦なんだぞ」


特に驚くことも無く、平然と説教する。


「わ、私にも自分がやれる事をしたいの!

 邪魔はしないからお願い!」


それでも引き下がらない蝶姫。

その真剣な眼差しを見て、これ以上言っても引き下がらないだろうと思い、せめて、


「わかった。 だが、矢の届かないところにいろ。

 鳯金、しっかり見ててくれ」


「わかりました。 ですが、私が思うにもう暫くは戦い は起こらないはずです」


雷火は首を傾げるも鳯金に連れられ蝶姫は安全な場所へ連れられる。




眼前には5千の敵兵が既に布陣を完了した。

城攻めは基本3倍の数が必要と言われている。


こちらの兵数は鳯金が連れてきた2千の兵士を合わせて5千。


つまり、1万5千人の兵士がいなくては落とせるはずがない。


なのに相手はこちらと同数の5千だ。




恐らくこのまま攻めてこないで後続の軍を待っているのだろう。


眼前にいる5千は見張り役であろうと雷火も理解した。


だから、先程鳯金は攻めてこないと言っていたのだ。




(敵が増えたら面倒臭いな。ここは眼前の奴らを倒し に行くか)


わざわざ敵の増援を待つ必要もないだろうと思い雷火は出撃することを決める。


鳯金にも伝える為、3人の待つ場へと向かう。





「敵が来る前に叩く。お前にはこの城の守りを任せた いんだがいいか?」


その言葉を聞き蝶姫が割って入る。


「な、なんで?! ここに居れば安全じゃない。

 何も自分から行かなくても、、、ここに居てよ

 雷火、、、」


不安そうに雷火を見つめる。



だが、


「敵が増えたらそれこそ厄介だ。数の差が無い内に

 叩く。心配するな。俺は死なん」



雷火の言うことも理解している。

理解しているからこそ、強く止めることが出来ないのだ。


蝶姫達が心配している中、鳯金はと言うと何やら笑っていた。



「ふふふっ、大丈夫ですよ。 敵の数は5千。雷火の兵は3千。つまり、策も要らないですね」


呑気にそんな事を言うが、蝶姫は信じられないといった様子だ。


仲間なのに何故そんなにも心配をしないのか。


だが、蝶姫は知らなかった。

鳯金は心配しないんじゃなくてする必要がないと言う。


雷火の絶対の力を知っている為に。


心配などせず、むしろ絶大の信頼がある。




「あぁ。守りは頼んだぞ」



すると雷火は自身の兵達を集め、城門前に集合させた。


その様子を城壁の上から眺める蝶姫達。


鳯金曰く、まだ矢は飛んでこないから大丈夫だろうと。





そして、門が開かれる。


「いつも通り目の前の敵を倒す。最後の一人までだ。 行くぞ」



派手な鼓舞はいらない。

いつも通り静かな殺意と共に兵達に指示を出す。


それも簡潔に。

ただ目の前の敵を殺して殺して殺しまくる。


それが雷火の戦いだ。




城門が開かれる。


敵もまさか出てこないだろうと思っていたようで

混乱状態に陥っている。


掛け声も何も無く、無言で馬を走らせる雷火率いる3千人。


戦争初心者なら恐らく気が昂って声を張り上げてしまうだろう。


だからこの3000の兵達は最後まで雷火に付き従った強者達。


最前線で戦い続けた強兵である。

皆が戦慣れしており冷静沈着。


ただ、静かに敵を殺し続ける。



完全に油断していた敵は備えることも出来ず

敵の突撃を許してしまう。


ましてや、皆が無言でただただ殺してくる。

その姿があまりにも恐ろしく敵は戦意喪失である。




そんな様子を上から見ていた蝶姫と李凛は開いた口が塞がらない。


「な、なにあれ、、、まるで無人の草原を走ってみる たい」


「雷火将軍の武勇は仲間で聞き及んでいましたが、

 ここまで強いとは・・・・・・」


唖然としてその光景を見ている2人を笑いながら鳯金も見ていた。


「ふふふっ、確かに凄いですね。 ですが雷火の力は

 あんなものではありませんよ」



その意味深な言葉に疑問を抱く2人。


だが、それよりも今は雷火の姿が離せない。






「ハッハッハッ!!! 蝶国最強と言われる我が雷火隊に適うはずがなかろう! 雷火将軍の道を切り開け!」



そう言いながらも矛を振り回して、敵を薙ぎ倒しているのは副官である朱抗。


無口な雷火とは真逆の性格であり、戦中でもよく喋る。


だが、雷火も特に気にする事はしない。

むしろ、2人の関係が雷火軍にはちょうどいいのだ。


この2人の関係によりバランスよく兵達をまとめている。



敵国にも響き渡る雷火の名前。

元々仲間だった敵が知らないわけが無い。




『五行将軍が出たら逃げろ』



『雷火が出たらただただ見つからない事を祈れ』



とまで言われているのだ。



足を止めることなく次々と敵を葬っていく雷火隊。



「雷火将軍! あやつが恐らくこの隊の隊長と思われま す!」


その時朱抗が気付いたようで指を指す。


ただでさえ混乱しているのだ。

ここで隊長を倒せば戦況は勝ったも同然となる。


「よし。行くぞ」


方向を変え、一気に敵の隊長を目指す。


「左方に転換! 目指すは敵の大将首だ!」


朱抗の合図に兵士達も続く。


雷火率いる濁流が敵の隊長目指して突っ込んでくる。

防ぎようの無いその大波は、とうとう目前にまで迫っていた。




「ひっひぃーーー!!! あ、あいつを止めろ!

だ、誰でもいいから雷火を止めろォーーー!」


不能な将軍が率いればこうなる。

大将である男があのザマなのだ。


最早、この隊は終わったも同然。


敵大将と対峙する雷火。

その間も周りにいる敵兵は雷火隊が寄せ付けない。


雷火どころか雷火率いる兵士ですら強くて敵わない。



「わ、我々は蝶国正規軍なるぞ! 私に歯向かうという ことは国に歯向かうも同じ! 今すぐ剣を収めれば

 上には私がよく言っておこう! さぁ! け、剣を

 下げよ!」


苦し紛れにそう叱責してくる敵大将。

いや、命乞いのようなものだろう。


見苦しいったりゃありゃしない。



雷火は下馬し、更には剣を鞘にしまい敵大将の元へ歩み寄る。



(ひっひっひっ。流石に反逆者に加担するのは気が引 けるだろうな。 コイツを捉えた功績はデカいぞ。

 私の出世も間違いなしだ)



内心ではほくそ笑んでいた。

名高い五行将軍の一角を制止させたのだから。


それも五行将軍で一番広く名声が轟いている雷火をだ。


有頂天となり調子に乗る将軍。


眼前まで迫ると、将軍はつい調子に乗ってましまった。


「おい雷火。 お前よりも私の方が将軍歴は長いのだ  ぞ。 あまり調子に乗るなよ? とりあえず頭を下げ てもらおうか。 そして、あの無能姫をさっさと連れ て来い」




最後の言葉が不味かった。


蝶姫に忠誠を誓った雷火の前でその言葉は絶対に許されない。


雷火の目が更に鋭くなり、一瞬のうちに鞘から剣を抜き去り、将軍の首目掛けて居合切りをする。




「えっ・・・・・・」




将軍の首が地面へと転がり落ちる。


あまりにも一瞬の出来事であり、敵の兵達は皆唖然としていた。


まるで時が止まったかのように。


そして、死んだ将軍も死んだ事に気付いていないのかもしれない。

それほど、雷火の居合は目で捉えることが出来なかった。



「朱抗、奴の首を掲げろ。 こんな奴でも将軍首だ」


朱抗に指示すると朱抗は槍を手に持ち、将軍の首を刺し頭上高くその首を掲げた。


「敵総大将の首、雷火将軍が討ち取ったぞッ!!!

 勝鬨を上げろ!!!」


兵の数は互角。

だが、この朱抗の一言で戦況は揺るぎないものとなった。


敵の戦意は喪失し、手から武器を落としている。


雷火軍の完全勝利の瞬間であった。

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