仲間
隣街にやって来た。
そこで出会ったのは、黒髪の兄妹。
兄妹は困っている様子で、話を聞いてみるとどうやら彼らの荷物が盗賊に盗まれてしまったそうだ。それは大変だ。
「頼む! どうか一緒に、あの盗賊どもから荷物を取り返すのを手伝ってくれないか!?」
「ああ、いいぜ」
「本当か!?」
「ああ。……断った所で、どうせなんやかんやあって結局手伝う事になるんだから。そうなるんならさっさとこの場で二つ返事で引き受けておいた方がいい」
「ありがとう! 俺はユーイだ!」
「私はメイ。よろしくね!」
兄妹は笑いながらお礼を言う。荷物を盗んだ盗賊が住処にしているのは街から少し離れた鉱山だという話だ。
手ぶらでは行けないと俺たちは店で武器や防具を買って、早速その鉱山へと足を向けて歩いていった。
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……というわけで、やって来ました。鉱山にある盗賊のアジト。この鉱山では昔、宝石採掘が盛んに行われていたらしく、奥に行くにつれてその名残が至る所に残っていた。
松明の灯りを頼りに歩いて行く。アジトの奥には盗賊のボスが居た。イメージとしては、屈強な傷だらけの大男がそこに居るのだと思っていたが、そこに居たのは女性だった。赤い髪の強そうな女性。女性はその手にキラキラと輝く宝石を持っていた。
「なんだいあんたら? ここはあたしらエスメラ盗賊団のアジトだよ?」
「俺たちの荷物を返せ!」
「あんたらの荷物? ……ああ、部下が持ってきた物かい? 残念だが返すわけにはいかないね。これはもうあたしのものだ」
「は? 冗談言うな! それは俺たちの大事な物だ! 絶対に返してもらう!」
ユーイの言葉を聞いて、女性は立ち上がりながら武器を手に取る。剣の刃の両端がギザギザとした特殊な形の武器。そんなに取り返したいのならあたしを倒してから取り返しな。女性はそう言い、その武器を構えた。
平和的解決なんて出来ないという事はわかっていた。女性のやる気に満ちた構えを見て、俺とユーイとメイも互いに武器を手にする。
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激しい攻防の末。辛うじて俺たちが勝利を納めた。女性は武器を捨てて、傷だらけの身体を支える。
「ぐっ、……な、なかなかやるじゃないか」
「約束だ。荷物は返してもらう」
「……仕方ないね。持っていきな」
「やった! お兄ちゃん!」
「………………」
兄妹は喜ぶ。
荷物を取り返したら、こんな所にはもう用はない。俺たちは傷だらけの女性をそのままにして、アジトを離れて街に戻った。
そして俺は街に戻り、兄妹と別れる。しかし兄妹はそこで"俺の旅についていきたい"と言ってきた。お礼がしたいのだそうだ。
「俺たち絶対に役に立つぜ。それに仲間は居た方がいいだろ?」
「うーん……」
少しだけ考える。確かに、これから先の旅路に仲間が居た方が何かと便利なのかもしれない。俺は、ユーイの申し出に首を縦に振った。
こうして、俺の"魔王を倒す"という旅にユーイとルイという兄妹が加わった。
俺の旅は、まだまだ始まったばかりだ。