始まり
超時短短期長編ファンタジーです。
相変わらずの設定ガバで仕上げましたので、深く考えず気軽にお読みください。
とある日の帝都にあるお城。
謁見の間にて。
「突然だが、お前は勇者に選ばれた。これからお前にはとある場所にて"伝説の剣"を手に入れてもらい、世界を脅かす魔王を倒してきて欲しい。返事は二択。"はい"か"イエス"だ」
「(ノーがない……)」
「ほうほう。そうかそうか。行ってくれるか。では、旅の支度は衛兵に頼んである故、今すぐに旅立つ事を許可しよう。衛兵、勇者殿を街の外まで送って差し上げて」
「いや、王様。俺まだ何も言ってないんだけど」
「謁見は終わりだ。私はこれから寝る」
そう言って、王様はそそくさと謁見の間を出ていってしまった。
王様に命令された衛兵たちが俺の両腕を持って強引に引きずっていく。言いたい事は山程あったが、王様が眠りに入ってしまったために何も言えない。っていうか、寝るってどういう事だよ! まだ昼間なんだけど!?
「ほら、これが旅の荷物だ。必要なものは全部入ってるから不自由する事はないだろう。その他必要だと感じたものについては現地調達で頼む。では、健闘を祈る」
「いってらっしゃい」
「…………………」
衛兵に街の外まで送られて荷物を渡される。口を開くも、衛兵たちはそのまま踵を返して俺の言葉も聞かずに門をガシャンと閉めた。
……いや、あの、一応俺にも今までやってた仕事とかあるんだけど。まだまだやりかけていた作業が沢山あったんだけど。それ全部無視ですか。あーそうですか。わかりました。
「………うわ、ほんとに全部ある」
荷物を見てみると、衛兵の言っていた通り本当に旅に必要なものは全部入っていた。地図とコンパスと食べ物と武器。もしもの時のためのキャンプ道具も一式揃っている。
……、どうやらこれは本当に旅に出なければいけないようだ。王様も"俺は勇者だ"とか言っていた。伝説の剣を手に入れろ。とも。
「伝説の剣、ねぇ」
どこにあるんだそんなもの。そう思いながらこれからどうしようかと地図を開く。これは世界地図だ。今、俺が居るのは帝国。地図で言うと左下の無駄にデカイ大陸がそうだ。
帝国には丸が付いていて、その丸の途中から右上の方に向かって黒線が伸びている。黒線を目で追っていくと、その先の小さな大陸にまた丸が付いていた。"伝説の剣はここ!"と書かれている。場所わかってんのかい。
「…………はぁ」
仕方がない。いつまでもここに居るわけにもいかないから出発しよう。
地図をしまいながら深く息を吐く。歩き出せば、街の中から法螺貝の音が聞こえてきた。旅の無事を祈ってのものなのかもしれないけれど、マジで辞めて欲しい。
こうして、世界を救う俺の旅が始まった。……わけなのだが、なんだか色々突然すぎて、未だに何がなんだかよくわからない。とりあえず、俺が勇者なんだという事はわかるけれども、……まぁ、有無を言わさず旅に出されたから今さらとやかく言うつもりはない。
とにかく、頑張ろう。うん。