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23.大規模テイム

 騎士団長ロードンさん指揮のもと、騎士たちが森を囲っていく。

 一匹も逃がさないように。

 動物や魔物は気配に敏感な生き物だ。

 距離は離れていても、周囲に何者かが集まっていることに気付いている。

 必然、彼らは固まる。

 群れを成す魔物は群れで固まり、そうでないもので力に自信がないものたちは身を潜める。

 力をもつ強者のみが臨戦態勢をとるが、すぐに戦いを仕掛けてくることはないだろう。


「皆にはあまり接近しすぎないように伝えよ。激しく刺激せず、退路を断つだけでいい」

「はっ!」


 ロードンさんはそう指示していた。

 彼らにもパーソナルエリアというものが存在している。

 群れの縄張りとは別の、個人の不可侵領域。

 そこに踏み込めば魔物を激しく刺激し、問答無用で襲い掛かってくるだろう。

 しかし適切な距離さえ守っていれば、彼らはじっと警戒する状態を保つ。

 魔物の多くは本能で動く。

 まだ距離が遠く、空腹でもない限り距離を保てば襲われない。


「セルビア殿、これでよろしいか?」

「はい。ありがとうございます」

 

 逃げ道さえ塞いでくれたら問題ない。

 あとは私のお仕事だ。

 私は一匹のアルゲンに跨る。

 

「それじゃ行ってきます」

「お気をつけください。あなたに何かあれば、殿下に申し訳が立ちません」

「はい」


 心配してくれるロードンさんにニコリと微笑みかける。

 大丈夫、危険は少ない。

 私はただ、私にできる最善の方法をとるだけだ。

 アルゲンに乗り、飛び立つ。

 目的の場所は上空、騎士たちが囲っている森の中心。

 幸いなことに、この森に生息している魔物はすべて陸上で生活している。

 私が空を飛んでも刺激することはない。

 だからこそ安全に、適切に行動できる。

 私は改めて範囲を目視で確認した。


「広い……けど」


 この広さならギリギリ覆える。

 私の魔力で!


「すぅー……よし!」


 大きく深呼吸をして呼吸を整える。

 決意を胸に、私は両腕を広げ、魔力を膨張させる。


「魔力領域、解放!」


 私自身を中心に、橙色の光が周囲へ拡散される。

 太陽の光が地上を照らすように。

 空っぽのコップが水で満ちていくように。

 私の魔力が森中に広がっていく。


 通常、魔力をそのままの状態で放出することはできない。

 魔力とは形のない力の波。

 それを体外へ放出するためには、魔法や結界などの力に変換する必要がある。

 魔法使いは魔力の扱いに長けている。

 だけど、魔力そのものを使って身体強化や循環はさせられても、魔力だけを外に出すことはできない。

 唯一、調教の適性を持つテイマーだけは例外だった。

 私たちは魔力をそのまま放出することができる。

 つまり、触れることなく、近づくこともなく、私たちは生物に魔力を注ぐことができる。

 

 私の魔力が魔物たちにとって異物だ。

 魔物たちもそれに気づき、それぞれの行動を見せる。

 逃げようとするもの、威嚇するもの。

 どれも私には届かない。

 空にいる私に、彼らは何もできない。

 一方的に調教……テイムを完了させる。


「っ……さすがにちょっと疲れるかな」


 魔力量に自信がある私でも、これだけの範囲に拡散させれば長くはもたない。

 加えて範囲が広い分、魔物に注がれず無駄になった魔力も多くある。

 効率はあまりよくはない。

 さらには対象が多い分、一匹に注げる魔力の量も変わる。

 必然的に弱い魔物だけをテイムし、強い魔物は私の魔力に抗っている。


「半分……よりもう少し多いかな」


 魔力の放出だけでテイムできた魔物たちは大人しくなる。

 残るは三割強。

 このまま魔力の放出を続けても時間の無駄だ。

 彼らを弱らせない限り、テイムが完了することはない。

 その役目は――


「みんなお願い!」


 私の可愛い仲間たちにお願いしよう。

 王都から連れてきた魔物たちが、私の声を聞いて一斉に森へと入る。

 テイム直後の生物は命令待ちの状態になり、臨機応変に動くことはできない。

 本来はテイム後に時間をかけて共に戦えるように訓練する。

 つまり、この場でテイムした魔物たちは戦力にできない。

 半数をテイムしても、数では未だ相手が有利。

 しかし、隣にいた群れの仲間や魔物たちが急に大人しくなり、周囲には異なる魔力が満ちている状況。

 混乱した彼らは、普段通りの動きが出せない。

 そんな状態で、連携の取れている魔物たちの動きに敵うはずもない。

 私の仲間たちが次々に森の魔物を制圧していく。

 その間、私はずっと魔力領域を展開し続けていた。


「……残り十秒」


 私の限界。

 それ以上魔力を放出し続ければ命に関わる。

 テイムが終わるのはギリギリか。

 そう思っていたところで、ロードンさんが叫ぶ。


「包囲を縮める様に前進! 逃げる魔物のみ攻撃を許可する!」


 ロードンさんは自身の判断で私に加勢してくれた。

 本当に助かる。

 これで十秒もかからない。

 

 一、二、三――!


 最後の一匹が倒れ、直後にテイムが完了する。

 テイム直後は私の魔力を消費して、傷ついた身体を癒すことができる。

 ぐっと魔力が減って怠いけど、意識を失うほどじゃない。


「ありがとう。戻るよ」


 アルゲンに命令し、ロードンさんの元へ降り立つ。


「お疲れ様でした。セルビア殿」

「はい。さっきはありがとうございました。おかげで助かりました」

「お役に立てたのならよかった。実に見事な手際、感服いたしました」

「ありがとうございます」


 褒めてもらえて心が和む。

 これで死傷者は出さず、魔物たちも仲間にすることができた。

 リクル君も喜んでくれるはずだ。


「しかしこの数……また飼育の場所が必要になりますね」

「あ……」


 忘れてた。

 場所がなくて困っていたんだっけ。


「……リクル君になんて言おう」


 言い訳は今のうちに考えておこう。

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